「ふるさと」は、思い出の数で決まる。
忙しい日が続くと、しばらく職場近くのホテルに泊まることがあります。
その街で数日間過ごしていると、体に異変が起こります。
なんか、休まらない。
少しでも長く休むために、近くに宿をとっているのにもかかわらず、心は落ち着きません。
どれだけ寝ても、疲れが肩にのしかかっている気がして、身体は重く感じます。
睡眠時間は十分でも、どうやら心の疲れはとれないようです。
なぜ、疲れがとれないのだろうかと考えながら、数日ぶりに自宅に向かいます。
電車に乗っている最中は、疲れを引きずっていましたが、最寄り駅の改札を出た瞬間、不思議と心が穏やかになりました。
自宅に入ったわけでもないのに、最寄駅からの帰り道を歩くだけで、安心感に包まれます。
同じ東京なのに、なぜこうも違うのか。
その理由は、おそらく、思い出の数が違うからです。
自宅付近を歩いていると、休みの日に行った場所や、友達と過ごした場所、行きつけのお店などがあるので、歩いているだけで、たくさんの思い出が蘇ってきます。
しかし、都心界隈にいると、どうしても仕事の記憶ばかりが思い出され、なかなか気持ちを入れ替えることができません。
仕事のオンオフが余計に曖昧になり、自分の心の居場所がなくなってしまいます。
特に、ビジネスホテルを借りて宿泊すると、自分の行動の自由度が低くなるため、仕事をする以外にやることがなくなります。
そのため、寝る時間ギリギリまで仕事をしてしまい、常に頭をフル回転してしまいます。
外に出てみても、あまり慣れていない街なので、どこに行っても気分転換にならず、やりきれない孤独感を感じてしまいます。
きっとそれは、街が悪いのではなく、単純に自分の思い出の数が少ないだけです。
仕事で良い思い出をたくさん作れば、もっと都心の街も好きになれるかもしれませんが、なかなかそれは難しいです。
どうしても、反省があり、悔しさがあり、大変さが付きまとうものです。
なので僕は、自分が住んでいる街を、もっと愛そうと思いました。
たくさんの良い思い出を作って、もっともっと好きになれば、どんなに仕事で辛いことがあっても、安心して帰ることができます。
「いい街」は、思い出を作りやすい環境が整っているかどうかで、決まるのかもしれません。
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