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2020年コロナの旅16日目:ストックホルムの新年、流浪再開

2020/01/01

ストックホルムの元旦は灰色で暗く、寒かった。私の体調を反映して情景は余計うら寂しいものになっていたかもしれないが。

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お正月もリース


とはいえ体調が悪いことと曇天であることはまぎれもない事実である。しかしどうも家でじっとしている気もしない。なんと言っても元日。何か有意義なことをしたいという気持ちに屈し、外出を決意してしまった。お松はまだ部屋で寝ていたが、昨日ずいぶん呑んで遊んだらしいのでしばらくは起きてこないだろう。


お松の家に来てからずっと外出できる時間がかなり遅くからに限られていた。彼女はだいたいいつも昼過ぎに起きるのだが、その時にはすでに真冬のストックホルムでは日が傾き始めているのだ。泊めてもらっている恩義はもちろんあるのだが、お松の生活リズムに合わせていたら折角の旅行なのに何もできないのではないかという焦りもこの決断に加勢した。


とはいえ新年のことで多くの施設が休んでいる。それでもクリスマスほどではなく、いくつか開いている無料の博物館を見つけることができた。その中でも国立歴史博物館が大規模で興味深そうなので行ってみることにした。


この博物館は、建物こそ可愛らしかったもののそこまで面白いものではなかった。

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大部分が入館できないようになっていたし、黄金の展示物がある部屋は完全に電気が消されていた(子供たち向けに、懐中電灯で宝探しをする、というイベントをやっていたらしい。節電の取り組みでもあるのかもしれない)。

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黄金の部屋の手前。もう暗い。


少し拍子抜けして、次の場所に行くことにする。ロヴィサが教えてくれた、Vetekatten「ヴェーテカッテン(小麦粉の猫)」という1928年創業の老舗カフェである。ここのケーキがやたらと旨いらしい。グーグルマップによると正月も営業しているようだ。


ところが実際に行ってみると、やっているのはいいが人が多すぎては入れなかった。正月で他にやっている店が多くないので観光客が殺到したのだろうか。

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あまり風邪気味の人間がこのように混雑したところにいるのもはばかられるし、家族連ればかりだったので気まずい。また出直すとしよう。


外に出ると空が美しい。金属を熱したような赤い紫色の色々な色相が現れて夢のような景色である。

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些か非現実的な風景を眺めていて、同じく非現実な世界観のストックホルム地下鉄、Tbanaのことを思い出した。


どこも開いていなくても、地下鉄は走っているし、一人だからと言って心細い思いをすることもないだろう。


まだまだ見ていない駅はたくさんあるので、少し見て回ることにした。体調も未だすぐれないし、座って楽しめるのも魅力的に思われた。



青の路線を果てまで行き、風邪によるものと思われる易疲労性のためへとへとになったところで家路につく。


帰宅して料理を作る。お松も帰ってくる。お松は話があると言い、平たく言えば明日までに家を出ていくように伝えられた。
「あなたが悪いわけじゃないんだけど、ただ、こんなに長く誰かを家に泊めるのが初めてだから、慣れなくて…」
当然彼女の家に住むつもりだったわけではないし、その日が来ることは想定してはいたのだが、やはり迷惑だったのだと思うと申し訳ないし、恥ずかしさもこみあげてくる。気を遣った言い方をしてくれていることが余計に心苦しい。今朝、彼女を起こさずに勝手に家を出たことが一番よくなかったようだ。これまで、郵便受けに鍵を入れておくのでいつでも帰ってきた良いと言われたことが何度かあったためそれを当然のことと思っていたが、危ないのでそれはできるだけ避けたく、そのため彼女は一日家で私の帰りを待つ羽目になったという。


理屈はあまり理解できないながら、今まで泊めてくれたことに感謝し、迷惑をかけてしまったことについて謝ると、気にすることはないという。しかし、次の宿は早く決めてくれ、と。


その晩、彼女はベッドで寝て、私はソファで寝た。

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次回予告

2019年12月17日に始まった私の世界旅行。1年越しに当時の出来事を、当時の日記をベースに公開していきます。

明日は2020年1月2日。とうとうお松の家を出て、ジャマルが勧めてくれたビルカというホステルに移ります。劣悪な環境、貧弱なキッチン…しかしそこでの出会いには面白いものがありました。次回よりビルカ編です。

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