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金沢星稜大学で経営学科/観光情報論のゲストスピーカーを体験。

金沢星稜大学の経営学科/観光情報論の石川美澄准教授にお声がけ頂いてゲストスピーカーを。まさか自分の人生で学生の皆さんに何かしらを話すとは。Webの役割とか働くことについてお喋りしました。

なぜ教員は稲田さんにオファーしたのか?
・私と稲田さんのつながりは、10年前に長野のゲストハウスで一言、二言お話しただけ(そのときは何の仕事をされていたのかも知らず「近所の人」)
・稲田さんのFbとTwitterをたまに眺める ≒ 10年
・ウェブを介したコミュニケーション、BtoB、働くことについて話を伺いたくなってオファー

石川さんとは10年前に長野市のゲストハウス『1166バックパッカーズ』で出会って以来の再会。何がどう繋がるか分からない。

10年前につながった人と、ちらほらお声がけいただくことが増えました。「何がどう繋がるか分からない」40代以降の楽しみ方はそれなのかもしれません。新しい発見。

以下、授業の様子や学生の皆さんから寄せられたコメントを紹介します。

自己紹介

自分の興味関心を軸にする(公私混同)

自己紹介で「自分の興味関心を源泉にしている」ことを話しました。

例をあげるとぼくは仕事(BtoB企業のWeb活用)に関するnoteを年間200本くらい書いています。仕事でもないし、誰かに命令されたわけでもありません。書きたいから書いているし、必要だと思っているから書いています。でも、自分の成長においてめちゃくちゃ役に立っています。言語化すると思考がまとまるし、思考のステップとしてストックできるので。副産物として仕事面でも役に立っています。そういう意味で公私混同です。
でも、源泉は自分の興味関心です。日々の仕事で起こることを理解したいという個人的な欲求です。ぼくは漫画や小説や映画がとても好きな人間ですが、たぶんそれと同レベルで仕事で起こる諸々のことに興味を持っています。
仕事とプライベートをきっちり分けるのもいいですが、ぼくの場合はどちらであれ原動力が自分の興味関心ですので、不可分な領域としてやっています。


Webサイトで生まれるシーン(場/状況)に興味がある

Webサイトというプロダクト(制作物ではなく)
Webサイトで生まれるシーン(場/状況)に興味がある

自己紹介の「個人的な特徴」で上記のように書きました。

制作会社の多くの方はWebそのものを語る傾向にあると思いますが、ぼくは「Webサイトで起こること」に興味があります。プロダクトによって起こる「シーン」を理解したい。その個人的な興味関心が原動力になっています。


学生さんからの質問例

質問01

「自分は人間関係などでいつまでもクヨクヨ考えてしまうのだけど、社会人になると切り替えが早くなったりしますか」

もちろん社会人もクヨクヨ考えます。ぼくは未だに蒲団の中で後悔したりします。切り替えが早い人もいますが、たぶん元からです。一緒にクヨクヨしましょう。

質問02

「部活をやり切った虚脱感で就活できる気がしません」

ぼくはやり切った実感をまだ持てたことがないから純粋に羨ましい。自分のすごく大切なことが終わったんだからそれは虚脱しても仕方ないんじゃないでしょうか。それくらい大切だったんだから。経験がないから分からないのですが、「やり切った」という実感を持てるのはたぶん人生において2つか3つくらいのことだと思います。Aさんはそれを持てているだけで充分財産だと思います。なにせぼくはまだ持っていないんだから。それだけでアドバンテージです。すごいと思います。と全然役に立たないお返事。

質問03

「Webコンテンツの役割は何ででしょうか。書くときに気をつけることはありますか」

Webの本質はコンテンツです。そして、Webの特性はマッチングです。マッチングとはA(提供側)とB(需要側)の結びつきを最適化することです。そして、コンテンツはAとBの橋になる。だから重要だと思っています。書くときに気をつけることはAのプロダクトやサービスはひとつでも、B(需要側)のニーズやインサイトは複数存在するということです。それを把握・理解して、それぞれに対応したコンテンツを作る必要があります。それを無視したコンテンツは成果を生みません。


ダメ人間でも誰かの役に立つ可能性

学生の皆さんからいろいろ質問をもらって、汗をかきながらお返事していたんですけど、その度にくりかえし言っていたのが、「皆さん、確認しておきますが、ぼくは基本的にろくでなしな人生を送ってきたダメ人間ですからね」ということ。大人や社会人になったからって立派な人間になれる訳ではない。そもそも大学時代は碌に学校も行かなかった。友人もほとんどできなかった。勉強だって碌にしていない。

ただ、ダメ人間でも顧客の役に立つWebサイトを作れたりする。それはぼくのような人間には救いでもある。「やりたいこと」と「できること」が違っていても全然いい。自分の興味関心が誰かの役に立ったり、市場のバリューと繋がっていれば尚いい。それが人間とか組織とか社会とかの面白いところなのかもなあ…と授業が終わってから改めて思ったのでした。社会と学校の違うところかもしれません。個人的に有意義な発見でした。

石川さん、金沢星稜大学の経営学科/観光情報論の皆さん、ありがとうございました。貴重な体験でした。


なぜかお薦めの漫画やファンタジー小説を紹介

Webの役割や働くことについて一生懸命おしゃべりしましたが、なぜかお薦めの漫画やファンタジー小説を学生さんから質問される場面も。急に聞かれると焦りますね。何とか即答したのがこちらになります。

おすすめのファンタジー小説

『ゲド戦記』アーシュラ・K. ル=グウィン


おすすめの少女漫画

『君に届け』椎名軽穂


おすすめの少年漫画

『皇国の守護者』伊藤悠
(佐藤大輔による原作小説も死ぬほど面白いです)

おすすめの少年漫画

『プラネテス』幸村誠


学生さんへの返答は口頭だったので、授業終了後に各作品のリンクを准教授にお送りしました。何の授業なのか。笑
どさくさに紛れて、自分のnote『本や映画や音楽について』のURLも送りました。たとえ一冊や一本でも、「出会えてよかった」という作品があったら嬉しいです。


これから社会人になる人へのアドバイス

これから社会人になる人に自分ができるアドバイスがあるとしたら、「何でもテキスト化する習慣をつけておくと何かと役に立つよ」ということ。たぶんそれだけで成長速度は全然ちがいます。

どんな業種業態であれ、例え望まない職場であっても、目の前の仕事を成長の糧にできば転職やスキルアップに役立つ。そして、「テキストの習慣化」は自身の成長の土台になってくれます。日々の仕事での発見や知見を流すのではなく(フロー)、積み重ねてくれるからです(ストック)。

勘違いされやすいのですが、テキスト化に必要なのは文章力じゃなくて構成力なんですよね。必要に応じて情報を構成する能力です。美文とかいらない。あってもいいけど汎用性がない。

そして、構成力に必要なのは観察と分解です。テキスト化を習慣にできれば観察力と分解力が自然と身に付きます。40代になって気づきましたが、意外と観察力と分解力を持っている人は少ないです。潜在的に持っているかもしれないけれど、日々の仕事で意識的に使っている人は少ない。だから、自分の意志で使えると強いです。希少性があるから。

構成力(観察と分解)は職種を問わず汎用的に役立ちます。なおかつレアなスキルなのでお薦めです。それを育んてくれるのがテキストの習慣化です。実体験からのアドバイスでした。


授業レポート|学生の方の声

授業レポートが金沢星稜大学のWebサイトに掲載されました。コメントを寄せてくださった皆さん、本当にありがとうございます。とっても嬉しいのと同時に背筋が伸びました。本当に。

以下、寄せられたコメントを引用します。大学のWebサイトには載っていませんが、お一人ずつにお返事を書きましたのでそれも併せて。


経済学部経済学科 3年次 T・Kさん

今回の講義を聞いて特に印象に残ったのは、稲田さんはWebサイトというプロダクトではなくWebサイトに生まれるシーンに興味があるということです。自分自身も、たしかに今まではWebサイトという一つのものを深掘りしたことはなく、表面上の制作物しか見たことがありませんでした。なので「Webサイトを見て読んで終わり」でしたが、今回の講義を聞いてWebサイトが生まれるシーンや何のために作られているのか、他にもどのように役に立っているかというのは少し気になりました。今回の例のように気になったことや興味を持ったことは、自分自身で深掘りすることで様々な面からそれを見つめることができると思いました。

https://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/2022/1108_2.html

「Webサイトのシーン」に目をつけていただいてありがとうございます。たぶん業界内でこれを言っているのはぼくだけだと思うのですごく嬉しいです。笑
「気になったことや興味を持ったことは、自分自身で深掘りすることで様々な面からそれを見つめることができると思った」
そうそう。その通りなんですよね。ぼくがそれに気づいたのは40代になってからなので、20代でそれを発見したTKさんがめっちゃ羨ましいです。ご自身の興味関心や好奇心を大切にしてあげてくださいー。


経済学部経営学科 3年次 T・Mさん

稲田さんのお話の中で最も印象的だったのは「ユーザー・企業・社会の三方良し」という言葉です。提供されているコンテンツに対してユーザーは課題を解決でき、企業は自分たちのビジネスがどういう風に働いているのかを把握できるというプラスの効果をそれぞれ得ていると聞き、企業側の取り組みを知れたことは普段コンテンツを利用する立場として貴重な機会でした。このように皆が平等に得をする環境が「続いていくビジネス」だと将来性を感じました。

https://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/2022/1108_2.html

ありがとうございます。嬉しいです。三方良しって元々は江戸時代から明治にかけて活躍していた近江商人の経営思想「売り手よし。買い手よし。世間よし」なんですよね。伊藤忠商事の経営理念としても有名です。(伊藤忠の創業者・伊藤忠兵衛も近江商人でした)
ぼくは昔からこの言葉が好きで、頭の片隅にずーっとあったのですが、Web制作の会社に務めてから「まてよ、Webも三方良しじゃないか」って気づいて。だったら自分もそうなれるように目指してみようと思って使っています。Web業界ではあまり使っている人はいませんが(笑)。ぼくにとって大切な言葉ですので、TMさんが発見してくれてとても嬉しいです。
TMさんも自身の「大切な言葉」を大事にしているといつか何かと繋がるかもしれません。iPhoneを開発したスティーブ・ジョブズはそれを「コネクティング ザ ドッツ(Connecting the dots)」と言い表しましたが、それはまた別の話ですね。こちらもリンクを貼っておくので興味があったら読んでみてください。面白いですよ。


経済学部経営学科 3年次 T・Sさん

稲田さんのお話を聞いて最も印象的だったのは、公私混同で仕事をしているというという言葉です。その言葉だけ聞いた時は、私情を仕事に持ち込むのは良くないのでは?と思いましたが、稲田さんのおっしゃる「公私混同」は私の想像と少し違っていました。興味のあることに夢中になる、やりたいことを一貫してやり続けるということをプライベートでも仕事でも行なっているということなのかなと思いました。また、私自身言語化するのが苦手なので「言語化が大事」という話を聞けてよかったです。「言語化の最大のコツは言語化すること」という言葉を聞いて、これからはきれいな文章になっていなくてもいいので、スマホのメモアプリなどを使って言語化していきたいと思いました。

https://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/2022/1108_2.html

「興味のあることに夢中になる、やりたいことを一貫してやり続けるということをプラベートでも仕事でも行なっているということなのかなと思った」
仰る通りです。興味があることをやるのは仕事であっても全然苦ではないんですよね。ぼくは基本的にだらしがなくてすぐサボりたがる人間ですが、興味があることには誰が何も言わなくても勝手にやります。これは怠け者のエンジンとしてめちゃくちゃ優れているなあと知ってから、日々の仕事に応用しています。
意外と人は「自分は何に興味があるのか」を把握していなかったりするので、まずは自分の興味関心や好奇心に耳を傾けてみることをお薦めします。自分の興味が分かってきて大切に育ててあげたら、すっごく頼りになる相棒になりますので。自分の興味関心や好奇心を他人が鼻で笑っても全然気にする必要はありません。大切にしてあげてください。

「言語化の最大のコツは言語化すること」
これは40年生きてきておそらく真理だと思うのでぜひご活用ください。「これからはきれいな文章になっていなくてもいいから、スマホのメモアプリなどを使って言語化していきたいと思った」←正にそれがめっちゃ大事だと思います。まず言語化すること。きれいな文章はその後についてきます。量の経験が質を向上してくれるんですよね。分かっていてもできない大人が山のようにいるので、TSさんのこの発見は今後の財産になると思います。一年続けたら続けた分だけ成長していて自分でもびっくりしますよ。本当に。


経済学部経営学科 2年次 T・Kさん

他の人は時間がかかるけど、自分はあまり時間をかけずに出来ることや、他の人は嫌そうだけど、自分は苦に感じないことといった、自分に向いていることを仕事にするという考え方もあるという稲田さんのお話に、将来の夢や将来やりたいことを探さなければいけないとばかり考えていた私は衝撃を受けました。自分が将来やりたいことを探すために金沢星稜大学に入学したにもかかわらず、2年生の後期の今なお、やりたいことが見つからず焦っていましたが、就職に向けて、まずは自分の強みや他の人にはない自分だけの武器を探すことが大切だと感じました。自分に向いていることや好きなことを細かく分析して、就職活動に活かしたいと思います。

https://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/2022/1108_2.html

「他の人は時間がかかるけど、自分はあまり時間をかけずに出来ることや、他の人は嫌そうだけど、自分は苦に感じないことといった、自分に向いていることを仕事にするという考え方もある」
そう!本当にそう!ぼくがこれに気づいたのは40代になってからでした。もっと早く知りたかった!「夢をかなえる」とか「やりたいことを仕事に」でも全然いいのだけど、全員がそんな風に生きるわけでもないんですよね。やりたいことが明確にあるわけでもないし。ぼくの肌感覚では80〜90%の人が「別にやりたいことはない…」と悩んでいると思っています。もちろんぼくもその一人です。それが長らくコンプレッックスだったのですが、「あれ?やりたいことがなくても自分ができることで誰かの役に立てるなら充分じゃない?」と気づきました。この発見はけっこう衝撃で。学校では教えてくれなかったので、「教えてくれよー!」と40代で思いました。笑

「やりたいことを仕事に」という人じゃなかったとしても、「できることを仕事に活かす」で充分誰かの役に立つし。誰かの役に立てたらやっぱり嬉しいんですよね。「できること」をやり続けていたら、段々と「やりたいこと」とか「好きなこと」になってくるし。学校で教えてほしかった。笑

ぼくの好きな言葉に「好きだからやるんじゃない。やるから好きになるんだ」があります。漫画『のうぎょうカレッジ』での一コマです。大人になってから出会った言葉ですが、ぼくにとってとても大切な考え方になっています。そして、意外とみんな知らないけれど、これ、けっこう本当なんですよね。やるから好きになる。ぼくはいくつも体験しました。これからのTKさんもそういう出会いや発見があるといいなと思っています。

漫画『のうぎょうカレッジ』


学生の皆さんへメッセージ

授業のレポートが金沢星稜大学のWebサイトに掲載されるのは知っていたのですが、どうせだったら学生の皆さんの声だけでなく、自分のテキストも載せていただいて双方向なコンテンツにしたいと思いました。前例はないみたいですが、一応Web制作会社なのでコンテンツにはこだわりたい。笑

ぼくの勝手な提案に石川美澄准教授にご尽力いただき、金沢星稜大学の広報様にご協力いただいてメッセージを掲載していただきました。石川さん、広報部の皆様、ありがとうございます。こちらに引用いたします。

授業に出てくださった金沢星稜大学 経営学科/観光情報論の皆さんへ

授業中に学生の皆さんからいただいた質問や、授業後のコメントを読んで背筋が伸びました。今回は本当にありがとうございました。とっても貴重な経験で勉強になりました。本当に。

学生の皆さんはまだご存知ではないと思いますが、社会人になっても様々なことから学びを得ます。仕事はもちろんですが、それ以外の色々なことからも。散歩からだったりスーパーでの買物だったり旧態依然な組織からのカチンとくる対応だったり。どんなことからも。

たとえ同じ体験をしていたとしても、そこから何を見て、何を発見して、何を学びとするかでそれはまるで別物になります。つまり、この世界に全く同じ体験はないし、その意味で平等ではありません。その代わり、その体験を糧にするかどうかは自分に決定権がある。大変ではありますが自身の創造性と大きく関わる領域です。クリエイティブとは何かを作り出すことに限らないとぼくは思っています。目の前の世界をどう見るか。どう面白がるか。何を学びにするか。この世界をどう定義してどう捉えるか。それは全てあなたに決定権があります。

一人ぼっちで世界と向き合うときに頼れる相棒になってくれるのがあなたの興味関心であり、あなたの好奇心です。耳を傾けてあげてください。あなたの好奇心を他者が鼻で笑っても気にせず大切にしてあげてください。どんな仕事であれ、どんな業務であれ、どんな状況であれ、世界を面白がれるかどうかはあなたに決定権があります。そして、それは等しくぼくも同じです。

これまで考えていたことでしたが、今回の授業で改めて自分でも発見することができました。ありがとうございました。皆さんのこれからの世界が面白がれるものでありますように。

稲田エイジ

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