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NPOが見ておくべき遺贈寄付の今~遺贈寄付に関する実態調査2022から~

遺贈寄付の定点観測をしている調査結果概況が公開されました

遺贈寄付に関するレポートが一般社団法人日本承継寄付協会から発表されました。毎年実施されている寄付者の意識調査で毎回参考にしています。

今回は、このプレスリースで説明されている【2022年概況】の中から、遺贈寄付を集めようとしているNPOが関連するところをピックアップしたものをお知らせします。

NPOが見ておくべき遺贈寄付の今

◆10万円以下の遺贈寄付をお願いすると実践してもらえる可能性が高まる

<ポイント2>遺贈寄付意向と意向がある人の寄付金額

遺贈寄付を具体的に理解している層の方が100万円以上の遺贈寄付をする傾向があります。ポイントで記載されている、

少額での寄付金額を提示すると遺贈寄付認知層においては半数以上の方が実践意向を示すことから、少額でも遺贈寄付できることを知ってもらうことが非常に重要であることがわかります

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000063820.html
遺贈寄付に関する実態調査2022プレスリースから抜粋

ここから、遺贈寄付の具体的な理解を促すことの大切さがわかります。そして、少額の遺贈寄付が可能であることをお伝えすることが重要なことがわかります。ここでいう少額は1万円未満、1万円~5万円未満、5万円~10万円未満を指します。

◆やっぱり寄付の使途を明確にするのは大事なのでしっかりと向き合う

<ポイント4>遺贈寄付を断念した理由や準備をしていない理由

昨年同様、「寄付したお金がどのように使われるか不明瞭」35.5%が最たる理由として挙がっています。次いで、「遺贈寄付のやり方がわからない」31.4%、「誰に・どこに相談したら良いか分からない」31.2%が続きます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000063820.html遺贈寄付に関する実態調査2022プレスリースから抜粋

この結果は毎年大きな変化がないので、遺贈寄付者が抱える根源的な思いであることがわかります。寄付の使途を明確に伝えること(大切に使わせてもらいますといったふんわりした表現ではダメ)、遺贈寄付の相談先や進め方を明確に示しておくことが情報提供において重要です。

寄付の使途を明確に打ち出すことはできますか?とNPOの方に伝えると、「いやー、そんな細かく分けていないので無理です」と回答されることが多いです。

大きな助成金を受けた時には、使途を限定しなければいけないので、やろうと思ったらできるはずなのですが・・・反射的にそういうのは無理と思い込みがちなのかもしれません。

助成金ではできるのに、寄付ではできない深層心理は、自分たちで能動的にこの分野を絞って重点的に寄付を集めたことがない表れですので、一度クラウドファンディングとか基金とかをつくって寄付集めしてみるといいと思います。

◆使途通り寄付金をつかっているか積極的に報告・公開することが信頼感につながる

<ポイント5>遺贈寄付時の相談先重視点

「支援機関の信頼性」55.7%が突出しており、重視点として過半数を超える結果となっています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000063820.html遺贈寄付に関する実態調査2022
プレスリースから抜粋

私が特に大事だなと思ったのは、2番手35.4%の「寄付された財産がどのように使われたかを監督してくれること」です。これは先程の寄付の使途を明確にすると関連するのですが、自分が寄付したお金が、きちんと使途通りに使われたかを知りたい意識の表れです。

金額が大きい助成金では、監査として使途通り助成金が使われているのか帳簿と突き合わせて確認することがあります。交通費精算の領収書などいちまい一枚確認する詳細なもので、監査うける団体としてはかなり緊張するものではありますが・・・

使途を指定された高額寄付や基金など独自に設けている場合は、同様な監査を実施して、報告・公開するといった姿勢があるとよいと思います。また、少額であっても使途指定の寄付について、しっかりと報告・公開していくことで、「この団体はしっかりしている!」と思ってもらえます。

◆社会的な関心の偏りは現実としてあるので冷静に受け入れる

<ポイント6>遺贈寄付の希望団体

日本の子供の支援43.1%、被災地支援27.9%、環境保護25.8%、生活困窮者支援21%、動物愛護17.8%、大学・科学技術・医療(難病)等の研究費14.1%、発展途上国支援10.8%、文化・芸術・スポーツへの支援10.5%、地元への寄付(名所・公園・公民館・自治体)9.6%、母校への寄付4.7%、寺社仏閣4.0%、国や地方公共団体3.4%、若手起業家等への支援2.1%

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000063820.html遺贈寄付に関する実態調査2022
プレスリースから抜粋

社会問題は平等に注目されるわけではありません。大きな災害や痛ましい事故あればそこに関心が高まります。

今年は○○があったので、そこに寄付がいってしまったので、我が団体の寄付が減りましたと言われる団体さんがありますが、本当にそうかな?と私は思っています。今回のアンケートのような関心の偏りは必ずありますから、それを冷静に受け入れて、関心を持ってくださる人に届く情報提供をしていくことが重要だと思います。

例えば、50代女性は動物愛護に関心を持つのが37.7%と突出しています。そうした性別や年齢に特徴がある場合は、そこを対象とした取組みが効果が出るかもしれません。

◆寄付から遺贈寄付にいたるステップアップの道を用意する

<ポイント9>日本の社会課題に対する寄付への経験

遺贈寄付の意向層は、社会課題に対する寄付の経験率が高く約8割に上ります。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000063820.html遺贈寄付に関する実態調査2022
プレスリースから抜粋

いきなり遺贈寄付するケースはまれで、生前なにかしら社会課題への関心があって、それに関連する団体などに寄付をして、その先に遺贈寄付が検討されます。

NPOにおける遺贈寄付対応の方向性は大きく2つに分かれています。①いきなり連絡がきた時にきちんと対応できるように準備を整えておく方向と、②時間をかけて遺贈寄付にまでステップアップしてもらう方向です。

これまでは、前者①のいきなり連絡が来たときのために遺贈寄付のパンフレットや士業や金融機関と平時から連携して準備しておこうねという方向が重視されてきましたが、後者②のステップアップしてもらう方向も考えておかないと、せっかく準備しても実際に遺贈寄付の申し出は増えないよということを表していると思います。

まとめ

アンケート結果から、NPOができる対応として以下があるのではないかと見えてきました。

・10万円以下の遺贈寄付をお願いすると実践してもらえる可能性が高まる
・やっぱり寄付の使途を明確にするのは大事なのでしっかりと向き合う
・使途通り寄付金をつかっているか積極的に報告・公開することが信頼感につながる
・社会的な関心の偏りは現実としてあるので冷静に受け入れる
・寄付から遺贈寄付にいたるステップアップの道を用意する

これらをみて既存寄付者にどんなはたらきかけができそうでしょうか。遺贈寄付をうけることを検討している団体さんは是非いちど考えてみてください。

遺贈寄付の最新動向を1/17のイベントでチェック!

1/17 18:00-20:00で今回のアンケートの解説をする日本承継寄付協会主催のイベントがあります。今回発表のものは抜粋版の概況になります。イベントに参加してアンケートに回答するとイベント内で公開した全データを共有してもらえるそうです。

オンラインで無料で参加できるので、詳細を知りたい方は是非ご参加ください。もちろん私も参加します。



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