第11話 思い出してよ
終電はもうない。
秋の心地よい風が、夜の12時半を回った六本木を通り抜ける。
なんの根拠もないけど応援されている気がした。
今日はきっと、あの人に会える気がする。
ショーウィンドウに飾られたブランドバックを眺め、あの人はいつかこんな素敵なバッグをプレゼントしてくれるだろうか、と妄想だけが早足で進んで行く。
酔った勢いで「好き」と言ってしまって、逃げるように別れてからもう一ヶ月以上経った。
あれから何回か連絡をしてみたけど、忙しいのか断りのスタンプが送られてくるだけ。
バカ