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連載(31):人類の夜明|理性政治

この記事は『かとうはかる(著)「人類の夜明」』を連載しています。

理性政治

「今日の政治は政党政治によって行われていますが、奉仕国家も同じ方法で行われるのでしょうか?。」

「ある特定の主義主張、あるいは原則において意見を共にする議員が結合した団体を政党と名づけているようですが、本当にそのような団体が必要でしょうか?。」

「必要だと思います。人の意見は百人百様です。もし意見調整の場がなかったら、国会はたちまち空転してしまうでしょう。」

「しかし、その弊害も忘れては困ります。結成当時の意気込みは純粋で活力に満ちたものですが、時間の経過と共に初心が忘れられ、ついには権力闘争の修羅場に変わってしまいます。そのよい例が醜い派閥争いです。彼らは権力を勝ち取るために金権を利用しますが、その不純な金が足枷となって、正しい判断を鈍らせてしまいます。そんな連中に正義の政治が可能でしょうか?。

また一旦政党に名を連ねると、反対意見をもっていても政党の意に沿わねばならなくなり、不本意な一票を投じなくてはならなくなる。その一票が国を動かすのですから、誠に恐ろしいといわねばなりません。

奉仕世界の創成に当たって、すでに思想的合意ができあがっていますから、その政治において基本的意見の対立することはありますまい。だから、今日に見るような政党は必要ないのです。」

「でも、進むべき道は同じでも方法論は違うでしょうから、やはり意見調整の場は必要ではないでしょうか?。」

「たしかに、細かい案件をまとめるには意見調整の場は必要でしょう。だから奉仕議会ではまず『意見調整委員会』という補助機関を設け、そこに奉仕議員の意見なり主張なりを文章にて提出させ、似通った意見をもつ者同士を集めてその案件限りの談議団を結成させるのです。

もちろん類似の政策であっても、すべてに渡って一致するとは限りませんから、意見が煮詰められるまで大いに論争が交わされるのはいうまでもありませんが、今日のように立場や利権が障害となって正義が踏みにじられることがありませんから、案外スンナリと理性的結論が導きだされるのです。

こうしてまとめられた意見は、談議団の代表が議会に持参し一つの政策として反映させるのです。もちろん最終決定は多数決によってなされますが、ここで肝心なのは、他の談義団から出された政策が自分のところより上位と見たら、談議団の違いに関係なく、また面子にこだわることなく賛同する大きな心が表せることです。

今日の政治家は、面子を重んじ立場を守ろうとするなど、理性を無視する傾向がありますが、奉仕世界では何よりも理性を重んじ、誠心を尊んだ政治がなされるのです。」

「それでは、案件ごとにそのような談義団が結成されるのでしょうか?。」

「そうです、だから審議内容ごとに談義団の顔触れが違ってくるわけです。今日の政治においても、本来このような形が取られるべきですが、権力集中のために、利権獲得のために、寄らば大樹の陰ということで政党政治が幅を利かすようになるのです。」

「それで議会はスムーズに運ぶでしょうか?。」

人は迷いが多いだけに、万事が万事すんなり行くとは思えないが?・・・。

「彼らの意識の底には、人類の平和と使命達成という大目標があるだけで、私的な損得感情は一切ありません。もしあったとしても、それを形として手に入れることができないから、(金儲けができない・地位や名誉が得られない)そのエネルギーは良い面に向かうしかなくなるのです。

したがってもし意見対立があったとしても、それは真に人類を思ってのことですから、そこに不和や憎しみの生まれる余地はなく、むしろその意見の練り込みが最善の道を選択させることになるのです。

たしかに政治は難しいものです。人はどうしても日常の小事に目がいき、遠くの大事に目が行かないものです。だから卓越した意見は庶民には人気がないのです。

これも本物の政治家を育てない理由になっているわけですが、良くよく考えて見ると、これもすべて利害がらみの経済に由来しているのです。

その点奉仕世界は、損得勘定(感情)の生まれる余地はありませんから、思いっきり遠くを見据えた政治ができるのです。

ですから、そこから良い芽が吹き、良い花が咲き、良い実を結んでいくのです。」

(つづく)

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