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イベントレポート:ドメーヌ タカヒコ飲み語り

2022年7月23日(土)、新設のイベントスペースIMADEYA TERRACE清澄白河にて開催した「ドメーヌ タカヒコ 5ヴィンテージ飲み語り」のレポートをお届けします。

「ドメーヌ タカヒコ」とは、曽我貴彦(そが たかひこ)さんが代表を務め、北海道余市を代表するワイナリーのひとつ。貴彦さんの手がけるワインの奥深さは、全国の日本ワインファンを魅了し続けています。

今回はそんな「ドメーヌ タカヒコ」のワインが、どのような場所でどんな想いで造られているのか、その背景にあるものを皆様に知っていただくために飲み語り形式のイベントを開催いたしました。曽我貴彦さんもリモートで現地から登場しています。


本イベントは一般のお客様をお招きして開催。参加申込み多数のため、
心苦しくも抽選を行い、当選された11名のお客様をお迎えいたしました。
飲み語りで提供したのはワイナリーを代表するキュヴェ「ドメーヌ タカヒコ ナナツモリ
ピノ・ノワール」の5つのヴィンテージ(2016・2017・2018・2019・2020)。
ウェルカムドリンクには、ドメーヌタカヒコで2年間研修を積んだ山中敦生さんが立ち上げた
ワイナリー「ドメーヌモン」のシードルをご用意しました。

・ドメーヌ タカヒコとIMADEYAの出逢い

貴彦さんはもともと、栃木県「ココファーム・ワイナリー」のブドウ買付担当で取引先のブドウ農家を訪問、コミニュケーションをとる仕事をされていました。

北海道のブドウも当時から購入していた為、徐々にブドウ農家の方たちと信頼関係を築き、余市でワイナリーをスタート。当時は今のように、新規就農もいなければワイナリー事業を新たにはじめる人もほとんどいない状態で、余市町登地区で自社畑のナナツモリの植樹をしたのが2010年です。

IMADEYAは、貴彦さんの実兄であり最もお付き合いの古い長野県「小布施ワイナリー」の曽我彰彦(そが あきひこ)さんの紹介で余市を訪問。当時はまだワイナリー建設前であり、貴彦さんに周辺のブドウ農家を丁寧にご案内して頂いた時からのご縁となっております。

こちらは10年以上前の写真。貴彦さんとIMADEYAメンバー。

IMADEYAが日本ワインを扱い始めたのは、1990年代中頃のことで、それから25年以上日本ワインに取り組んできました。当時は私たちの力不足もあり、一般のお客様や飲食店様にも買っていただくことができず、もがき苦しんでいたことを覚えています。

貴彦さんをはじめとする素晴らしい造り手の登場・日々の弛まぬ努力、伝え手の試行錯誤が実を結び、今ようやく日の目を浴び始めた日本ワイン。
そんなときに、今回のイベントを開催できることに感無量の思いです。

・貴彦さんが語る余市でのワイン造り

会のスタートと共に、貴彦さんもリモートで登場。スクリーンに余市の清々しい青空とブドウ畑が映し出されました。

お客様にぜひワイナリーのブドウ畑を見てほしいという貴彦さんのお心遣いで、
ブドウ畑から飲み語りが始まります。

なぜ北海道余市でワイン造りを行うのか?
雨や草、土壌が生み出す優しいワイン

ブドウ畑を案内していただきながら、余市の環境・ブドウ農家の歴史を語る貴彦さん。よく質問されるという『なぜ余市でワイン造りを行うのか?』についてもお話いただきました。

大きな理由としては2つ。

1つ目は余市の冷涼な気候。

北海道の中では寒すぎず比較的温暖という、「程よく冷涼な気候」であるから。積算温度(ブドウの生育期間で1日の平均気温を足したもの)でいうと、フランスのブルゴーニュ・シャンパーニュと近く、現在の余市は積算温度は1,200~1,300程。そんな環境の中で、ピノ・ノワールを栽培したいという想いもあってのことでした。

2つ目は雨や草が生み出す土壌の旨み。

貴彦さんは歳を重ねるごとに濃厚なワインではなく、優しいワインが好きになっていき、自分の心が躍る優しいワインの要素を考えていく中で、「雨が生み出す土壌」そこから生まれるワインの旨みがあったそうです。

「雨が降って草が生えれば、微生物が湧き、自然と良い土ができる。そうした良い循環が、ワインに出汁のような旨みを与えることがおもしろい。」

ブドウ栽培について、特別なことはしておらず、誰でも真似できることをしているという貴彦さんですが、その言葉の節々に造り手としてのこだわりを感じました。

・余市をワイナリー100軒の街へ
地域文化を映した農家によるワイン

ワイナリーの中を見せていただきながら、会も終盤に差し掛かり、ガレージでの小規模なワイン造り、低予算にこだわっているという貴彦さんの想いが明かされます。

次世代につなげていくこと

今でこそワイン産地として注目されている余市ですが、貴彦さんが来たときには、ワイナリーが1軒しかなく、ドメーヌタカヒコで2軒目だったそうです。そんな中、貴彦さんが想うのは、ワインというのは誰かの一世代で終わるものではなく、農地を持ったからには次世代につなげることを考えなければならないということ。

「若い世代、未来の子ども達のためにも、ブドウ園だけでなく、ワイナリーが沢山あった方が街が潤うし、おもしろい。」そう語る貴彦さんの最大の目標は余市に100軒の農家のワイナリーをつくることでした。

ただし、大手のワイナリーのような設備投資は、当然農家にはできない。だからこそ、低予算でも参入しやすく、ストイックになりすぎない、農家ならではのワイン造りを考えていく必要があると言います。

ワインはテロワールである
それは人の営みまで映した言葉だと思う。

「農家のワイン造りとは、日本文化の中で例えると味噌やお漬物みたいなもの。日本全国、その土地ごとの農家のやり方で造られている。自家消費用で、ちょっと不安定だけど、地域特性や個人の趣味思考が反映されて、誰にも真似できない個性的な美味しさになっている。」

貴彦さんは、そんな風に1つの正解を目指すのではなく、それぞれの地域で農家の味わいを楽しみながら、「日本でしかできない日本ワインの味」をみんなでつくりあげていきたい、余市はそんな街になることを信じている、と最後に締め括りました。


ご参加いただいた皆様より

「旨み・出汁感というのがしみじみ感じられて美味しかったです!」
「貴彦さんの優しいお人柄が感じられる味わいでした。」
「どのヴィンテージも美味しくて、本当に感動しました!」

質疑応答も盛り上がる中、あっという間に宴もたけなわとなり、盛況のうちに閉会とさせていただきました。

最後に

本イベントをはじめ、IMADEYA各店で行っている日本ワインのイベントを楽しみにしてくださるお客様も多く、心から嬉しく思うと同時に、日本ワインはまだまだ知られていないことを日々痛感しています。

貴彦さんが若い世代にバトンをつなげていくように、私たちも次の世代に「お酒っておもしろい」、「日本ワインっておもしろい」と伝えていけるように精進してまいります。

※ドメーヌ タカヒコのワインは通常の販売を行っておりません。
入荷の際には、お一人でも多くの方に味わっていただくために各店の角打ち(飲食)での提供、もしくは抽選方式での販売をIMADEYA公式アプリ(スマートフォン向け)にてご案内しております。


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