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日本初!My助産師による産前からの継続ケアが実現している自治体


 身近なところで見つけた「子育てが孤育てで始まらない世界」をご紹介する企画、今日は日本初、そして唯一、My助産師による公的な産前産後の継続ケアを実現した丹波篠山市で、My助産師さんにお話を伺ってきたのでご紹介します!

My助産師?Bitte て何?と思われた方はこちらの記事へ▼

 ちなみに、丹波篠山市のMy助産師制度は、ニュージーランドの助産師制度をお手本として、出産を除く産前産後の一貫したケアを公的に実現した制度ですが、このニュージーランドの制度、もとはといえば日本の産婆さんがお手本なのです。

My助産師と自分に合った出産・子育てを考える


 まず始めに、丹波篠山市では妊娠すると、My助産師とどのような流れでどういった相談をするのか、資料から抜粋してご紹介します。

【母子手帳交付時の初回相談】
新しい命を迎える心構え、妊娠初期に気を付けること、お産応援119登録など

【妊娠中期の第1回産前ケア】
安産に向けての妊婦さんに合った身体づくり、産後のあかちゃんとの生活を具体的にイメージして家族で準備することを一緒に考える、妊娠中に起こりやすい異常など

【妊娠後期の第2回産前ケア】

女性に秘められた命を生み出す仕組みを知り、安産に向けた工夫を一緒に考える、おっぱいのお手入れ方法、あかちゃんの特徴など

【産後ケア(あかちゃん訪問)】

お母さんの体調、あかちゃんの発育確認、育児相談、授乳指導など

My助産師による産前産後ケアの希望率 平均80%


 2020年8月に導入され運用8ヵ月目の現在、平均80%の妊婦さんがMy助産師のケアを希望している状況だそうです。2人目以降の経産婦さんは希望しないケースも散見されるそうですが、初産婦さんについてはほどんどの方が希望するとのこと。

 制度の運用開始当初は、不安の強い方や希望者のみを対象としていたそうですが、2021年3月現在、丹波篠山市で母子手帳を発行する全ての妊婦さんが制度の対象となり、ご本人がMy助産師による訪問や通所による産前産後ケアを希望しない場合でも、必ず妊娠中期に電話で確認を取り、産後のあかちゃん訪問を行うように変更されているそうです。

 産前産後ケアを必要とされない経産婦さんもいらっしゃるとのお話がありましたが、経産婦さんがケアを受けるメリットは?

「2人目妊娠中から、上の子やパパも一緒にケアすることで、産後のストレス、寂しさ、やきもちが減り、上の子もあかちゃんを受け入れやすくなるんですよ」

その話、もっと早く知りたかったです・・


 平日働いている妊婦さんも多く、土曜日にも月2回ケアができる日を設けている。土曜日の訪問では、父親である男性も一緒にMy助産師の話を聞くケースが増えるそうで、

「自分(女性)の身体のことを、夫にも理解してもらえてよかった」

という経産婦さんの感想も。

 私と別れた後も訪問ケアに向かわれ、ご夫婦と1時間半かけて楽しく妊娠・出産・産後のお話ができたとおっしゃっていました。こんなふうにじっくり助産師さんと産後の話をするなんて、私には経験なかったなぁ。

「必要と感じた時に無理なく相談できる相手がいる」という心強さ


 今回制度のお話を伺い、母子手帳発行時からMy助産師と関係を築けることで、特に初妊婦さんは「何かあったらこの人を頼って相談すればいいんだ」という親近感や心強さが得られるだろうな、と感じました。

 私は産後、相談しようかどうしようか、迷ってやめてしまったことが何度かあります。その程度の悩みと言われればその通りなのでしょうが、一方で勇気が出なかったのは、迷ったその時に自分の気持ちに無理なく相談できる相手がいなかったから。

 きっと、My助産師のような「必要と感じた時に無理なく相談できる相手がいる」という心強さは、疲れた心身をじんわり温めるような安心感があることでしょう。

 この丹波篠山市のMy助産師ステーションは子育て世代包括支援センター内に設置されており、保健師さんや栄養士さんとも連携することで自ずと子育て支援にも繋がる仕組みです。

 既に、この丹波篠山市のMy助産師制度には視察オファーもきているそうですが、パンデミックの影響で実現していないとのことです。


「女性が産み育てる時に大切なことを見失わないように」


 そもそも、丹波篠山市にMy助産師制度が取り入れられた背景として、中核病院の産科閉鎖があります。市外での分娩が増える中、市として産前産後の女性をケアする必要性が高まったのです。

 現在、日本では妊婦の9割以上が医療機関で出産をします。
 出産は七転び八起きが可能な世界ではありません。母子の安全、これに勝る優先事項がないというのは十分理解できます。その一方で、医療機関における出産ではどうしても人ではなく組織が主体となるため、同じ助産師による継続ケアの実現は難しい。だからこそ・・

丹波篠山市に限らず、産科閉鎖や集約により遠方での分娩を余儀なくされるケースが増える中で、My助産師が産前産後の継続ケアをすることに大きな意義がある、と感じました。

 また、このところ色んな助産師さんのお話をじっくり伺う機会が増えている私は「妊娠、出産、産後ってこんなに奥深いものなの!?」と驚くことばかり。同じ妊娠・出産・産後の話なのに、助産師さんが見ている景色と、私が自分の目で見てきた景色があまりに違うことに驚きます。

女性が産み育てる時に大切なことが見失われている今だからこそ、継続ケアが大切だと信じて地道に頑張っています。女性には本来、あかちゃんを産み育てる力が備わっており、あかちゃんには生まれる力が備わっています。その力を発揮し、その人らしいお産と楽しい育児へ繋がっていくよう、助産師として妊娠中からともに歩み、そのお手伝いをしたいのです。」

「大切さに共感してくれる人はまだそう多くないが、継続ケアに手応えも感じている」


 お話を伺った助産師さんは、これまで50名ほどの継続ケアを担当されたそうですが、「制度に心から共感し応援してくれる存在はまだ多くないが、継続ケアによる手応えは感じている」と話します。

 私が「この制度、いいな」と思えるのは、恐らく自身の産後経験があってこそ。想像がつかない状態で必要かどうかは、判断できないとも思います。
ただ、産後はしんどい思いなんてなるべくしない方がいいんです、絶対に。
なので、諸外国のように「産後は誰かを頼るマインドが当たり前」になると良いなと思っています。そのためには、丹波篠山市のような、産前からそのマインドと環境を手に入れるチャンスがあること、が非常に大切だと感じています。

 また、このMy助産師制度は、助産師さんにとって勇気のいるチャレンジでもあります。

「産院で長く勤務しましたが、妊娠から産後まで一貫して寄り添うケアは経験がなかったので、私自身も始めての経験を積み重ねています。継続ケアは反省も多いし悩みも尽きませんが、担当した方の『妊娠中より産後の方が楽です』という言葉が大きな励みになりました。これからもMy助産師文化が広まるよう頑張っていきたい。」

 今後、継続ケアを受けた女性が増え、制度として成熟していけば、丹波篠山市でMy助産師が果たす役割や存在感が、似た悩みを持つ他の自治体にも波及していくのではないか、と私は感じています。

大人も子どもも、心は時間をかけて接してくれる相手に開くもの。
 丹波篠山市のMy助産師制度は、孤育てが始まらない環境を生み出す大きな一歩のように感じました。

丹波新聞さんの特集記事 どうなる?「産む」ー分娩休止問題ー https://tanba.jp/category/feature/sanka-problem/
こちらにMy助産師さんのケアの様子が詳しく紹介されています。
よろしければご覧ください。

「子育てが孤育てで始まらない世界」の実現に向け、私もできることから取り組んでいきます。
どうか今日も素晴らしい一日を。

最後までお読みいただきありがとうございました:)

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