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【PM&デザイナー目線】とあるリーガルテックの創業2年目

大学時代の友人たちとリーガルテック・カンパニーであるMNTSQ(モンテスキュー)を創業してから、早いものでもう2年ちょっとが経過した。元々は友人なので、何かについて真面目に議論するだとか単純に会話をするといったこと自体、大学を卒業してからは年に1~2回程度だったのに、気付けば毎日顔を合わせ、毎日状況をsyncしあい、小さい問題からどうしようもないような大きな問題まで4人で立ち向かい続ける日々が日常になっていることは、振り返ってみれば感慨深いものがある。

.. 感慨深い、と言ったはいいものの、実はまだ2年ちょっとなのだということに驚いている自分がいるのも確かである。

1年目は、大手法律事務所に向けて法務デューディリジェンスを支援するプロダクト(現「MNTSQ for M&A」)を立ち上げ、オフィスを構え、社員を雇い、中長期的な我々のポジショニングや競合優位性を強固にする戦略として、法務とテクノロジーの両トッププレイヤーとの資本業務提携をやりきった。

2年目の2020年は、資本業務提携を足がかりに、MNTSQ社のメイン事業として大企業向けのプロダクト(現「MNTSQ for Enterprise」)を立ち上げることに全てを費やした。

今日は、我々MNTSQ社が創業2年目の2020年をどのように過ごしてプロダクトを立ち上げていったか、その中で我々が考えていたことも一緒に紹介しながら、記録に残していきたいと思う。
(PM&Designer視点を中心に書くため、経営やアルゴリズム開発や組織の話にはあまり字数を割かないことを予め断っておく。)

*  *  *

【1月】

我々は、プロダクトの構想をスライドに落とし、数々の大企業に向けて事業構想の紹介と実証実験の提案をして回った。大企業で、しっかり協力が得られそうなところと3社だけ実証実験をしようと決めていた。

大企業にこだわったのは「とにかく上からいく。みんな下から行って後半伸び悩んで苦労している。」という創業当初からの考えだった。
3社にしたのは、「あくまで検証が目的だから社数と売上を積むことに意味はないが、1社だと汎用性の判断ができない」という考えだった。

事業計画や提案活動はなかなかに難問が多かった。Enterprise SaaSという言葉を我々はよく使うが、実はあまり先例が無かったからだった。「SMB向けのビジネスとしてSaaSプロダクトをスタート/グロースさせた後に」Enterpriseにも入っていこうという流れの会社はたくさんあったが、我々のように1番最初からEnterpriseだけを狙ってSaaSプロダクトで突撃する会社はあまり無いように思う。

当然ながら、大企業に決裁を通すのもとても大変だ。ましてや、いわゆる「AI」みたいな新しいジャンルで、受託開発ではなくSaaS形態で、本導入ではなく実証実験で、安くない金額を取るのだから、決裁の先例がないことが多く苦労した。それでも、王道の戦略を貫くために粘ることを選び、逃げなかったことは正しかったと今でも思う。

【2月】

実証実験をどの会社とやるかほぼ絞り込みが終わってきて、クロージングに向けて提案活動が本格化していた。

提案先の企業がどんな事を言っていて何に関心があるのか細かくログに残して共有し、どういう提案をするか、何は握って何は握るべきでないかなど、とにかくすべてを役員4人で合意しながら進んだ。

ROI的な視点もあるが、それよりも「ちゃんとバリューが出るものを作れそうか?」という視点をとにかく重視した。現場の解像度を高めるために、ヒアリングだけではなく実務や法律の勉強もしたうえで、「まだ全くデザインしてない状態だけど、良いものが作れそうか判断する」という仕事は、なかなか楽しかった。


提案活動の結果、プロダクトのPriorityや仕様決定権は我々が持つし、仕様書は作らないし、不完全な状態のものを触ってfeedbackを出してもらうという、企業側からすれば不慣れなプロセスにも乗ってもらうことができた。しっかりと本質を見極めて我々の提案に乗ってくださった実証実験企業様たちにとても感謝しているのと同時に、我々としてもプロダクト作りと提案活動が密接に連携できている状態を作り出せていたことは非常に良かったと思う(これは現在も続く、MNTSQ社の強みの1つだ)。


【3~4月】

実証実験の受注が正式に決まり、初期的なヒアリングや業務調査を行っていた時期だ。まだ開発は進めず、ヒアリングとデザインベースのフィードバックで情報収集に集中していた。

この頃、初のソフトウェア・エンジニア社員と検索エンジニアが入社したことで、ようやくプロダクト開発のフェーズが少し変わったタイミングでもあった。

我々は新メンバーの入社ペースを絞っている。新メンバーがMNTSQの働き方やカルチャーに適応するまでのオンボーディング対応は、しっかりやれる人数に限界があるからだ。そういった事情で、ゆっくりではあるが確実に、今までMNTSQ社になかった専門性を持つメンバーが増えていった。


【5~6月】

プロダクトの価値仮説や技術に関する様々なディスカッションをする中で、私は「検索」の持つ奥深さやインパクトを全然知らないのではないかという感覚を持ち始めた。その感覚は確信に変わり、他の業務を放っておいて私は集中的なインプットと設計を始め、構想を作り直した。ギリギリだったが、気付けてよかったと思う。

5月中旬に初期デザインができあがって、6月中旬には触れてちゃんと動くものができあがっていた。MNTSQ社の開発は手が速いと思う。しかも設計は割とキレイだ。

MNTSQ社は、全社員がユーザの現場を理解し、プロダクトを良くするための破壊的なフィードバックを出すことが推奨される。特にPMF前のフェーズにある我々は、学びの最大化こそが重要であると何度も認識を確認しあう。
そういったカルチャーのおかげで、非常に効率よく社内での改善活動を回していくことができた。PM & Designerとしては、これほど心強いことはない。

【7~8月】

「検索の評価はとても難しい」ということに起因する問題を認識した。サンプルコンテンツを使っても「良さ」をユーザが体感することは難しいのである。実証実験の進め方としてフィードバックベースで改善していこうという握りをしたのがまさか裏目に出てしまった。

せっかくなので、我々のプロダクトの良さを演出する方法をしっかり考え、工数を割いて練り上げることにした。
もちろん、嘘は付かないし、できないことをできるように見せかけたりはしない。ドキュメントで細部までシナリオやトークスクリプトを擦り合わせながら作り込んでいった。これはMNTSQ社が創業時からこだわっているポイントで、誇りに思う姿勢の1つだ。

こういった取り組みと、フィードバックサイクルの中で思いついたアイディアに由来するいくつかのKiller Functionsの開発を経て、初見の相手でもMNTSQの良さを存分に知っていただけるプロダクトデモが完成した。このデモは今でもセールスの現場で活用されていて評判が良い。

プロダクト(デザイン)でビジネスを切り拓いていくスタイルは、MNTSQ社の特徴の1つだと思う。


【9~10月】

実際に出来上がったプロダクトを使って、実証実験先の企業で成果測定を行った。問題を用意して、MNTSQを使った場合と使わない(現行と同じ)場合でタイムを測ったり、内容の質的な評価をしたり、使用感や期待についてのアンケートを取った。

結果は上々で、タスクによっては所要時間が1/10になったり、ベテランに新人が勝ったりしており、定量面だけでも契約業務の40%程度を削減できるという成果が出た。アンケートでも、「早く実務で使いたい」という声や期待のほか、説明書がなくても使いやすいデザインや動作の軽快さなどについてもお褒めいただき、社内はとても盛り上がっていた。

また、金融業界に特化した業務アプリケーションの構築もこの頃に大詰めを迎えており、何とか間に合わせて非常に良い評価を得ることが出来た。リーガル, アルゴリズム, ソフトウェアに専門性を持つ各メンバーが業務知識をしっかり持つことで高いレベルの協働を生み出すというMNTSQのWorkStyleがハマっていた例だったように思う。


【11月】

実証実験の成果を持って提案活動を再開した。あらゆる商談のログを取って共有していく中で、MNTSQは「ただのログ」と「学び(Take awayと呼んだりする)」を区別するのが標準化したように思う。提案活動の中で生まれたTake awayについて毎回議論したり新しいアイディアを出したりすることで、提案できるメニューを増やしていった。

また、この頃に実証実験ではなく本導入の契約も決まり始め、導入支援PJが走り始めた。大企業はいろいろな業務や利用システムがあるため、業務フローや使い方をトータルで提案していく必要があり、ここにしっかりデザイナーが入るようにしているのも特徴の1つかもしれない。

ここでも、全員が気付きやフィードバックをシェアするカルチャーが強さを発揮していた。実データや実利用を目の前にするとたくさんの課題やアイディアが浮かんでくる。それらを確実かつ高速にプロダクト改善に繋げていった。


【12月】

初の導入支援PJの山場が終わりかけると、すぐ次の導入支援PJが始まる予定であったため、急いで振り返りを行った。初めてのことをやると色々なことが分かる。その反省を活かして2回目は絶対もっと上手くやろうということだ。
実際、2回目の時点で、既にある程度の型化ができてきており、特に指示がなくてもスムーズにPJが進行しているのを見て、「良いチームができてるなぁ」と感心したのを覚えている。

この頃、初のセールス社員が入社したことで、我々のセールス活動や事業計画を叩き直す良い機会となった。
まだ発表できていないがとても大きな受注成果も出ており、来年も動き出しについても決まったので良い感じで年末を迎えられたと思う。


*  *  *

実は我々MNTSQ社は、つい先日、創業から2年と20日ほど経ったタイミングで、こちらのプレスリリースを発表した。日本の大企業が持つ契約関連課題の本丸をストレートに解きに行くプロダクト「MNTSQ for Enterprise」の正式リリースである。

こちらのリリースには間に合わなかったものも、ロゴ掲載の承認が取れた会社は順次こちらに追加されていっている。本当に大企業の課題にアタックするんだという気持ちが伝わると思うので、良かったら覗いてみてほしい。


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こんな感じで、創業2年目となる2020年を振り返ってみた。
プロダクトの中身や設計、技術や機能面の頑張りポイントなどまでは踏み込まなかったが、私としては↓の3つを感じ取ってもらえたら、とても嬉しい。

1. 事業立ち上げの初手から大企業に向かっていくEnterprise SaaSチャレンジの面白さ
2. 「しっかり考えてちゃんと連携して全体最適を模索し続けよう」という企業姿勢
3. 大企業の持つ様々な課題にチャレンジする仲間を本気で募集している


最後の点だけは今から書く。

MNTSQ社は、2021年1月2日時点で、役員4名 + 社員17名 + 業務委託チーム数名規模のスタートアップだ。大量採用をするわけではないし採用ハードルが低いわけでもないが、常に我々と共に事業挑戦をする優秀な人材を募集している。

ハードルが高く感じてしまったかも知れないが、神のようなスキルを持った人材を探しているという話ではない。
「しっかり考えて、いろんな専門性を持った人とコミュニケーションして、全体最適を追求し続けられる」かつ「Enterprise SaaSのチャレンジを楽しそうだと思う」人材であれば、MNTSQとのフィットが見つけられると思う。


会社・仕事・現メンバーについての情報をまとめたページはこちらにあるので是非見てほしい。採用スライドも刷新した。こちらからカジュアル面談をリクエストできるようになっている。


もし、私に近い職種領域の方(PjM等)は、こちらのnoteを読んでいただけると私の考え方がよく分かるように思う。合うなと思っていただけたら(あるいは、否定したいと思っていただけたら)、是非カジュアル面談をリクエストしてほしい。


MNTSQ社では、良いプロダクトを提供し続けるための思想を、プロダクト開発だけではなく、組織作り / セールス / デリバリーの全てにおいて浸透させたいと思っている。(今回はほとんど触れなかったMNTSQの組織やカルチャーについての話も、近いうちにしっかり発信する予定だ。)

そのため、特に私の職能に近い領域でチャレンジしていきたいと思っている方には、とても面白い職場なのではないかと思う。現に、私はとても楽しい。そろそろ忙しすぎてきついので本当に仲間がほしいが..


大変長文になってしまったが、以上で2020年の記録を終わろうと思う。



We’re Hiring.


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 またタイミング見て記事を書くので良かったら見にきてください。