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映画レビュー『奈緒子』(2008)一人じゃないから頑張れる

今日、7月18日は、
三浦春馬の命日です。

その日にちなみ、
今日は過去に私がブログで
書いた映画のレビューをアップします。

※この記事は、
 2020年7月24日に書いた記事に
 加筆修正をしたものです。


奈緒子と雄介の複雑な関係

原作は『ビッグコミックスピリッツ』で、
1994~2003年に連載されていたマンガです。

私自身は読んだことがありませんが、
全33巻と長期に渡る連載だったことからも
(続編の6巻を合わせると39巻)
人気作であったことが伺えます。

競技をするのは、タイトルにもなっている
奈緒子(上野樹里)ではなく、
雄介(三浦春馬)という男の子であり、
原作では奈緒子の出番も少ないようです。

奈緒子は幼い頃に海で溺れかけ、
雄介の父が助けました。

その直後に雄介の父は
荒波に飲まれて帰らぬ人となります。

幼い雄介は奈緒子を助けるために、
父が亡くなったことに対して、
奈緒子を恨んでいました。

そこから数年の時が経ち、
離れ離れだった二人は、
高校生として再会します。

雄介は陸上部のエースで、
未来を嘱望される
天才ランナーへと成長していました。

「もう気にしていない」と言いながらも
奈緒子に対して、
どこかぎこちない雄介でした。

ひょんなことから、
奈緒子は駅伝大会の給水係を
務めることになりました。

ところが、給水所で
奈緒子が渡そうとした水を
雄介が拒否し、
雄介のチームは敗退してしまいます。

この出来事がきっかけで、
それまで、二人の間に
ぼんやりと見えていた溝は
決定的なものとなったのです。

雄介の父と陸上部で
ともに汗を流した仲間でもあった

陸上部顧問の
西浦コーチ(笑福亭鶴瓶)は、
雄介の父親代わりでもありました。

雄介と奈緒子の過去の事情をよく知っている
西浦コーチは、二人の不和を見かねて、
奈緒子を陸上部の合宿に誘います。

西浦コーチは、
雄介の父が亡くなった日から、
止まったままになっていた二人の時間を
なんとかして動かしたかったのです。

一人じゃないから頑張れる

仏のように優しかった西浦コーチが
合宿に入ってからは、
人が変わったように
「鬼のコーチ」へと変身します。

すべては教え子たちのことを
「もっと速く走れる」
「勝てる」と信じているからです。

地獄の特訓の日々の始まりでした。

この辺の流れは、
ベタなスポ根ものですが、
なぜか最後は無性に
感動してしまいました。

私はスポーツ音痴で、
現実のスポーツを観ても
感動しない方なのですが、
なぜか泣けてしまったんです。

もしかしたら、
鶴瓶師匠の泣き顔に
つられただけかもしれませんが(^^;

本作で見られる
「一人だとつらいことも
 みんなで頑張るのならできる」
という感覚はとても共感できました。

手に汗握るデッドヒート

本作の一番のみどころは、
雄介とライバル・
黒田晋(綾野剛)のデッドヒートです。

二人の必死の走りと
巧みなカメラワークが相乗効果をなし、
本物の競技にも勝るとも劣らない
臨場感があります。

デッドヒートのシーンは、
オーケストラを駆使した迫力のある
音楽も素晴らしかったですね。

以前、マラソンの競技をやっている方が
テレビで話していたのを
聞いた記憶があるのですが、

マラソン選手は外の景色の中を走るから、
頑張れるというのがあるらしいです。

つまり、同じ長距離でも、
グラウンドや体育館の中を
ぐるぐる回って走るよりも、

変わっていく景色の中を
走る方が気持ちよく、
幾分、気持ちが安らぐ
ということでしょうか。

そういった点で、
本作は長崎県壱岐市を
舞台にしていますが、
(劇中では架空の町名になっていたはず)

風光明媚な背景が大変素晴らしく、
走るのも気持ちよさそうです。
(もちろん、競技で走るのは
 きついでしょうけど)

本作に限らず、
日本の映画を観ていると、
美しいロケ地が次々に出てくるので、
それだけで
「日本はいい国だなぁ」と思えます。


【作品情報】
2008年公開
監督:古厩智之
脚本:林民夫
   古厩智之
原作:坂田信弘
   中原裕
出演:上野樹里
   三浦春馬
   笑福亭鶴瓶
配給:日活
上映時間:120分

【原作】


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