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映画レビュー『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992)アル・パチーノ迫真の演技

口が悪く、気難しい盲目の退役軍人

最初に登場するチャーリー(クリス・オドネル)は、
ボストンの名門校に通う高校生です。

名門校なので、周りのクラスメイトは、
裕福な家の子どもばかり、
一方のチャーリーは、
オレゴンから出てきた苦学生でした。

故郷のオレゴンに
帰郷する時の旅費を稼ぐため、
チャーリーは、アルバイトの募集に応募します。

そのアルバイトとは、
盲目のフランク・スレード(アル・パチーノ)の
世話をする仕事です。

フランクは、姪の一家と住んでいますが、
普段は別棟の離れにいました。

元・軍人のフランクは気性が荒く、
口も悪く、大変、気難しい人物でした。

チャーリーとの初対面の印象も最悪です。

姪の一家は、休暇旅行に出かける予定があり、
留守中におじの世話をしてくれる人を
募集をしていたのですが、
応募してきたのは、
チャーリー、ただ一人だったのです。

とっつきにくい印象のフランクに
難色を示すチャーリーでしたが、
彼の家族に懇願され、
休暇旅行の間、フランクに付き添うことになります。

フランクの旅の目的とは

家族が旅行に出かけると、
待ってましたとばかりに、
フランクは出かける支度をはじめました。

そんな予定など聞いていない
チャーリーは困惑しながらも、
フランクの身支度を手伝います。

どこへ行くのか問い詰めると、
ニューヨークだと言うのです。

既にタクシー、航空券、ホテルまで手配してあり、
チャーリーはうまく断ることもできず、
フランクと一緒にニューヨークへ
旅立つことになります。

最初こそ、フランクは、
チャーリーに厳しい言葉をぶつけ続けます。

チャーリーもそんな態度に、
困惑してばかりで、
どうやってこの状況を抜け出そうか、
必至に考えていました。

そんな二人も一緒に過ごす時間を
重ねるうちに、
徐々に打ち解けていくのだから、
人間というのは不思議なものです。

チャーリーが何度も問い詰めたところ、
フランクいわく、この旅には、
計画があると言います。

果たして、フランクの計画とは、
一体、なんなのでしょうか。

物語が進むうちに、
彼の心の内や境遇がわかっていき、
やがて、その計画が明らかになります。

アル・パチーノ迫真の演技

フランクを演じたアル・パチーノは、
本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

既にベテラン俳優として、
実力・名声を得ていたアル・パチーノが、
本作で見せた演技力は本物です。

盲目という難しい設定ながら、
どんな場面の演技においても、
目線をまっすぐに向けたまま、
フランクを演じ切りました。

中でも、本作でもっとも、
驚かされたのは、
フランクが若い女性と
タンゴを踊るシーンです。

目が見えない設定であれば、
サングラスをかけるなどして、
ごまかすこともできたはずのシーンですが、
ここではサングラスを外しています。
(というか、全編を通して、
サングラスをかけているシーンはわずか)

目線もそのままに、
女性とのダンスを優雅に魅せてくれます。

また、本作の大きな特徴でもあるのは、
1シーンがかなり長めになっていることです。

一般的なエンタメ作品では、
1シーンを短めにして、
どんどん展開を変えていくのが、
定石だと思います。

映像がどんどん変わっていく方が、
観客が退屈しにくいからです。

この手法ができるのは編集をともなう、
映像作品の利点でもあります。

しかし、本作は長めのシーンであっても、
まったくダレた印象を受けません。

演技そのものに迫力があって、
何げないシーンにも、
緊張感があるのです。

そして、その緊張感は、
後半から終盤にかけて、
一気に爆発します。

どのようにして、
二人の心が近づいていくのか、
心が近づいた結果、
二人の関係はどうなっていくのか、
最後まで目が離せません。


【作品情報】
1992年公開(日本公開1993年)
監督:マーティン・ブレスト
脚本:ボー・ゴールドマン
原作:ジョヴァンニ・アルピーノ『闇と蜂蜜』
出演:アル・パチーノ
   クリス・オドネル
   ジェームズ・レブホーン
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
   UIP
上映時間:157分

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