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音楽レビュー『Decksandrumsandrockandroll』Propellerheads(1998)ヒップホップ寄りのビッグ・ビート

ビッグ・ビートとは

ビッグ・ビートは、’90年代の初期に
イギリスのクラブシーンで生まれた
テクノのサブジャンルです。

ギターやドラムの音を
サンプリングして細かく刻んで作った
ブレイクビーツを特徴とし、
「デジタルロック」
と言われることもありました。

ビッグ・ビートといえば、
ケミカル・ブラザーズ、
ザ・プロディジー、
ファットボーイ・スリム
といったアーティストが有名です。

今回、ご紹介するプロペラヘッズも
彼らと同じくイギリスでデビューした
二人組のユニットでした。

ヒップホップ寄りのビート感

先ほど挙げた三組に比べると、
プロペラヘッズのサウンドは
ヒップホップやファンクに近い気がします。

もともと、ビッグ・ビート自体が、
ヒップホップに近いジャンルではあるのですが、
プロペラヘッズのサウンドは、
よりヒップホップに近い印象です。

例えば、③『Velvet Pants』は、
さまざまな人の声のサンプリングを
素材にしたブレイクビーツですが、
主流のビッグ・ビートにおいては、
見られない作りですね。

④、⑤、⑦、⑪音の素材のあしらい方、
ビートの外し方が
非常にヒップホップ的です。

そういえば、本作の CD の
ボーナストラックが収録された
2枚目の方には、
ジャングル・ブラザーズ、
デ・ラ・ソウルといった、
ニュースクールヒップホップの
アーティストが参加していました。

幅広いジャンルを横断

他のビッグ・ビートのアーティストに対して、
網羅しているジャンルの幅広さも
プロペラヘッズの特徴です。

例えば、⑥『History Repeating』では、
イギリスで’50年代から活躍していた
国民的歌手、シャーリー・バッシーを
フィーチャーし、
見事なソングライティングを披露しています。

⑧『Bang On!』は、
王道のビッグ・ビートという感じで、
ロックなサウンドがオススメです。

⑩『On Her Majesty's Secret Service』は、
映画『女王陛下の007』テーマ曲のリメイクで、
壮大なオーケストラとダンスビートが
絶妙にマッチしています。

⑬『Spybreak!』は、
映画『マトリックス』にも使用された
有名な楽曲で、
『燃えよドラゴン』のラロ・シフリン的な
シンセリフとドラムビートが絡み合う
クールなナンバーになっています。

その他にも、プロペラヘッズの二人は、
演奏者としての技量も幅広く、
一部のドラムが打ち込みではなく、
生のドラムです。

ボイスパーカッションもお手の物で、
奇想天外なパフォーマンスで
楽しませてくれます。


【作品情報】
リリース:1998年
アーティスト:Propellerheads
レーベル:ウォール・オブ・サウンド

【アーティストについて】
イギリスのビッグ・ビート・ユニット。
活動期間’95~’03年。

【同時期に発表されたビッグ・ビート】

【参加アーティスト&元ネタ】


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