見出し画像

映画レビュー『フリー・ガイ』(2021)モブキャラだって生きている!

モブキャラだって生きている!

「モブキャラ」
マンガ、アニメ、ゲームなどで、
名前もなく、背景のように
登場するキャラクターのこと

みなさん、自分のこと、
「モブキャラ」だって、
思ったりしませんか。

私は時々思うことがあります。

「ワシ、村人Aやないか!」って(笑)

たぶん、そんな風に思う方が
他にもいるんじゃないでしょうか。

でも、安心してください。

モブキャラがなんぼのもんじゃい!

モブキャラだって、生きている!

モブキャラだって、人間なんだ!

そんな風に思わせてくれる、

まさに、私たちモブキャラに
勇気を与えてくれるのが本作です。

本作を観たら、
きっと、あなたも自分が、
モブキャラであることを
誇りに思えることでしょう。

(さすがに言い過ぎか)

意志を持ったモブキャラの誕生

本作の主人公・ガイは、
(ライアン・レイノルズ)
銀行員でした。

毎日、同じことを話し、
毎日、銀行強盗に遭い、
毎日、同じことの繰り返しでした。

しかし、彼はそんな日々に
とても満足しています。

なぜならば、彼は、
ゲームの世界の中に
プログラムされたキャラクター
でしかなかったからです。

やがて、そんな彼を
変えてしまう人物が登場します。

それがモロトフ・ガール、
というミステリアスな女性でした。
(ジョディ・カマー)

モロトフ・ガールは、
スポーツカーを乗り回し、
銃を自在に操ります。

この世界の中では、
「サングラス族」と言われる
自由気ままな連中が、
好き放題なことをやっていました。

「サングラス族」というのは、
つまり、プレイヤーが操作している
キャラクターなんですね。

みんなサングラスを
かけているので、
「サングラス族」と呼ばれています。

モロトフ・ガールも
もちろん、サングラス族でした。

ガイは、モロトフ・ガールに
一目惚れし、
サングラス族がかけている
グラスを入手します。

そのサングラスをかけて、
この世界を見ると、
そこにはアイテムやスコアが
表示されました。

こうしてガイは、
単なるモブキャラではなく、
自分の意志で動くキャラクター
となったのです。

「我思うゆえに我あり」の境地

ガイのいるゲームの世界は
「フリー・シティ」
というゲームの中にあります。

この「フリー・シティ」は、
アメリカで大ヒットしている
オンラインゲームでした。

このゲームは、
「スナミ・スタジオ」という
会社が運営しているのですが、

この会社に訴訟を起こしている
女性がいました。

ミリー・ラスクです。

彼女は、「フリー・シティ」では、
「モロトフ・ガール」として、
存在しています。

つまり、ミリーは、
モロトフ・ガールのプレイヤー
でもあるのです。

彼女がスナミ・スタジオに対して、
訴訟を起こしているのは、
盗作についてです。

「フリー・シティ」の元になった
プログラムは、彼女がパートナーと
一緒に作ったゲームを
転用したものである

というのが、彼女の訴えでした。

そこで、彼女はゲーム内で
その証拠を探っているうちに、
ガイと出会うことになったんですね。

その後、ガイは謎のプレイヤーとして、
現実の世界でも有名になり、
プレイヤーからの人気を集めます。

みんな、彼の純朴な
プレイスタイルに惹かれていくのです。
(モブキャラなので、
 悪いことを一切しない)

ところが、スナミ・スタジオは、
「フリー・シティ」の続編の
リリースを予定しており、

近々、「フリー・シティ」の1作目は
抹消されることになっています。

そうなると、ミリーが探している
盗作の証拠は葬られ、
ガイを含むたくさんのモブキャラたちも
消えてしまいます。

どのようにして、
その危機を乗り越えるのかが、
本作の見どころですね。

基本的に本作は、
明るくて軽いタッチの
コメディーアクション
といった感じの作品です。

しかし、意外と深いテーマもあり、
なかなか深みのある作品に
感じられました。

ガイが自分のことを
「モブキャラ」だと知った時、

当然、彼は、その事実に落胆します。

それはそうです。

今まで自分の意志で生きてきた
と思っていたのが、
すべては誰かが
プログラムしたものだとしたら、

誰もが落ち込むことでしょう。

そこで、ガイは銀行の警備員を務める
親友のバディに相談しました。

この世界は全部作り物の世界で、
自分たちのやっていることは、

すべてプログラムされたものに
過ぎないということを
すべて、バディに話すのです。

しかし、ここでのバディの
反応が意外でした。

彼は非常に落ち着いた様子で、
穏やかに

「でも、僕が今、君のことを
 心配して話を聴いているのは、
 事実だ」

と言ってのけるのです。

こんな哲学的なフレーズが、
本作に出てくるとは、
思いもしませんでした。

つまり、仮想現実だと思えば、
なんでも仮想現実になるし、
現実だと信じれば、
なんでも現実になるんですよね。

「我思う故に我あり」の境地ですね。

明るくてバカバカしい
作品ではありますが、

そんな哲学的なテーマも感じられたり、

人間によって
プログラムされた AI は、
果たして「人格」として
認められるのか、

といった、かなり深いテーマも
感じられる作品になっていました。


【作品情報】
2021年公開
監督:ショーン・レヴィ
脚本:マット・リーバーマン
   ザック・ペン
出演:ライアン・レイノルズ
   ジョディ・カマー
   リル・レル・ハウリー
配給:20世紀スタジオ
   ウォルト・ディズニー・ジャパン
上映時間:115分

【同じ監督の作品】

【ゲームの世界を描いた作品】


この記事が参加している募集

#映画感想文

66,918件

サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。