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Art Of Noise 名曲ベスト10(私選)

※3500字近い記事です。
 お時間のある時に、
 お付き合いいただけると嬉しいです。

アート・オブ・ノイズといえば、日本ではこの曲がなじみ深いでしょうね。
(若い人は知らないかも)

この曲は、’80~’90年代に「超能力」ブームを巻き起こし、一世を風靡したマジシャン、Mr.マリックの入場曲でもありました。
「ドゥドゥドゥ、ドゥドゥドゥ~ン♪」
一定の年齢以上の方であれば、誰もが一度は口ずさんだことがあるのではないでしょうか。
(歳がばれるね(^^;)

こちらはカバー曲なので、原曲が有名というのもありますが、
(原曲はヘンリー・マンシーニ作曲のテレビ番組テーマ曲)

『ピーター・ガン』も聴いたことがないでしょうか。

このように’80年代のインスト曲は、テレビなどでよく使われていたものもあって、意外と多くの人に耳馴染みの曲が多いものですね。

これらの楽曲を手掛けたアート・オブ・ノイズは、’83年にイギリスで結成されたインストのグループでした。

「バンド」ではなく、「グループ」と書いたのにも意味があります。

彼らは、音楽グループではありますが、当初のメンバーは、ほとんどが楽器の奏者ではありません(キーボード奏者はいた)。

初代のメンバーは、アン・ダッドリー(キーボード)、J.J.ジェクザリック(サンプリング)、ゲイリー・ランガン(ミキシング)、ポール・モーリー(ジャーナリスト)の4人でした。

とはいっても、当初はメンバーが一切明かされず、正体不明の覆面バンドだったのです。
ライブが行なわれた際にも、メンバーは現れず、レコードをかけて、そこでファッションショーのようにモデルが出てくるだけだったという話も聞いたことがあります。

ポール・モーリー以外のメンバーは、音楽スタジオで裏方を務めていたようです。

セックス・ピストルズの仕掛け人として知られる、マルコム・マクラーレンのデビューアルバム『俺がマルコムだ!(邦題)』(’82)の作曲や演奏を手掛けたのが、アン・ダッドリーとゲイリー・ランガンでした。

また、イエスのアルバム『ロンリーハート』(’83)は、J.J.ジェクザリック、ゲイリー・ランガンが、エンジニアリングやキーボード・プログラミングを手掛けています。

この二つのアルバムをプロデュースしたのが、トレヴァー・ホーンです。

’84年に撮影されたトレヴァー・ホーン
(Wikipedia より引用)

トレヴァー・ホーンは、バグルス、イエスといったバンドのボーカリストを経て、プロデューサーに転向した人物でした。

彼の手掛けるサウンドで有名だったのは「オーケストラ・ヒット」でしょう。これはオーケストラの演奏をサンプラーで取り込んで、加工したサウンドです。

先ほど紹介したイエスの『ロンリー・ハート』にも、オーケストラ・ヒットが使われています。「ジャン!」という音です。当時のサンプラーは、音が取り込める秒数が少なかったので、このような斬新な音になりました。

アート・オブ・ノイズも、トレヴァー・ホーンがプロデュースし、世界ではじめて「サンプリング」を本格的に取り入れたグループでもあったのです。1枚目のアルバムから、オーケストラの演奏に限らず、人の声、車のエンジンの音など、あらゆる音を切り張りして、楽曲が作られています。

ドラムの音も独特です。ドラムには、ゲートリヴァーヴという加工が施されており、残響音をバッサリとカットした音になっています。そうすることによって、「ダッ!」という切れ味の鋭い音になるんですよね。

彼らが作った摩訶不思議なサンプリングサウンドは、その後、テクノ、ハウス、ヒップホップといった分野でも応用され、継承されていくことになります。

そんなアート・オブ・ノイズの私のお気に入りの10曲を紹介します。

10.Opus 4(’86)

収録アルバム:『In Visible Silence』
2枚目のアルバム『In Visible Silence』の1曲目。
女性の囁き声をリフレインさせ、それにシンセのリフが重なっていき、重層的な響きを感じさせる。短くても存在感のある楽曲になっている。

9.Island(’89)

収録アルバム:『Below the West』
この時代のアート・オブ・ノイズは、サンプリングだけでなく、本物のオーケストラの生演奏を取り入れるのにも積極的で、本楽曲でもその音が聴ける。
壮大なオーケストラの音と、打ち込みのコラボに違和感がなく、絶妙な調和が感じられる。

8.Instruments of Darkness(’86)

収録アルバム:『In Visible Silence』
人の声(男性の静かな声、叫び声、女性の静かな声)、オーケストラのサンプリング音を主体にした楽曲で、不穏な激しさを感じさせる。
中盤から入ってくるズタズタに切り刻んだドラムの音も聴きどころ。

7.Moments In Love(’84)

収録アルバム:『Who's Afraid of the Art of Noise?』
1枚目のアルバムに収録されたアンビエント調の楽曲。静かな電子音と残響音を強調したオーケストラ・ヒットの組み合わせが絶妙である。
2014年に、アクオスクリスタルの CM 曲にも起用された。

6.Catwalk(’89)

収録アルバム:『Below the West』
冷ややかなピアノの独奏からはじまり、そこにドラムが加わり、シンセ、ギター、サンプリング、ストリングスが続く。
音の足し算、引き算が絶妙で、それぞれのリズムのズレ具合も心地いい。

5.Camilla(’86)

収録アルバム:『In Visible Silence』
曲名の「カミーラ」は女性の名前と思われる。
アフリカっぽいパーカッション、どよんとしたベースライン、人の声を加工したと思われるサンプリング音、そこにストリングス、ハンドベル、フルートが重なる。
神秘的でせつない描写が、言葉で表さずとも、曲の展開から感じられる。
インストの理想形のような楽曲の一つだと思う。

4.A Time for the fear (Who's Afraid)(’84)

収録アルバム:『Who's Afraid of the Art of Noise?』
1枚目のアルバムの1曲目。のっけからゲートリヴァーヴを効かせたドラム音がさく裂しており、発表当時、これを聴いた人は椅子からひっくり返ったのではないかと心配してしまう。
他にもシンセの音(どれもサンプリング音を加工したものと思われる)が独特で、それらの組み合わせ方も絶妙。
切り張りと加工だけで、これだけ完成度の高い楽曲が作れたからこそ、アート・オブ・ノイズは、その後のスタンダードの一つになりえた。

3.Eye of a Needle(’86)

収録アルバム:『In Visible Silence』
人の声を不気味に加工した音を重ねて作られたイントロは、どこかギャグっぽく、間抜けな感じがするが、その後の流れは本格的なジャズサウンド。
ワイングラスを叩いたような音をヴィブラフォンのように響かせており、その音色がものすごくいい。
途中のレジスターをサンプリングした音も地味にいい味を出している。
かっこつけすぎず、どこかに茶目っ気を残すのも、アート・オブ・ノイズならではの持ち味。

2.A Nation Rejects(’90)

収録アルバム:『The Ambient Collection』
この楽曲の初出がわからず、とりあえず、音源としてはじめて発表されたと思われる’90年ということにしておいた。
(現行の『In Visible Silence』のボーナストラックにも収録されているが、それは’00年代以降に発表されたリマスター版から。音の質感から言っても’90年代の作品と思われる)
’80年代のアート・オブ・ノイズの楽曲群とも、音の質感が違い、アンビエントハウスに近いものが感じられる。神秘的な響きが感じられる楽曲になっている。

1.Robinson Crusoe(’89)

収録アルバム:『Below the West』
原曲は’64年にドイツとフランスの合作で作られたドラマ『ロビンソン・クルーソーの冒険』のテーマ曲。
この楽曲でも生のオーケストラが使われており、電子音は、その装飾程度の感じではあるものの、あきらかに電子音のアクセントが、生音の良さを引き立てている。このような組み合わせの妙を作る上手さこそが、アート・オブ・ノイズの真骨頂である。
とにかく、弦楽器、管楽器の演奏が素晴らしい名曲!

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