30歳、久しぶりにたくさん叱られる(in ドイツ)
You're doing it completely wrong!
(やり方が全然違う!)
ドイツでのインターンが始まって1週間。
お世話になっている醸造所で、何度かしっかり目に叱られました。
日本では「人から叱られる」という状況からしばらく遠ざかっていたので、久しぶりの体験に(しっかり反省しつつ)不思議とポジティブな感情にも包まれた7日間でした。
こんにちは。髙羽 開(たかば かい)です。
この「いきつけいなか」では、高知県日高村の地域おこし協力隊が行く、欧州ビール研修の様子を週1回のペースで書いています。
9月14日の木曜日、ベルギーからドイツのミュンスターへやってきました。
これから約2ヶ月間お世話になる醸造所からほど近い、ドイツ北西部にある都市です。
少しだけミュンスターの街をご紹介すると…
ドイツ有数のマンモス大学『ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学』(通称「ミュンスター大学」)が街の中心にあり、およそ30万の人口のうち4万5,000もの人がミュンスター大学に通う「学生都市」です。
また、カトリックの教会が街のいたるところにあったり、建物の多くがレンガ造りだったりと、人生初ヨーロッパの日本人にとっては「これぞヨーロッパ!」という興奮しっぱなしの街並みが広がっています。
ちなみに、アジア人はほぼ見かけません。男性はもちろん、僕(176cm)より背の高い女性もたくさんいます。住んでいる環境で自分が圧倒的マイノリティになる、というのもとても久しぶりの体験。
また、ほとんどの飲食店やスーパー、公共交通機関に、英語の表記はありません。
食事や買い物、移動にも毎回ひと苦労ではありますが、知らない街への愛着が少しずつ増えていく過程は、きっとこの上なく楽しいに違いない。
ちなみに今のところのお気に入りは、週に2回、街の中心にある大聖堂前で開かれる大きなファーマーズ・マーケットと、宿泊先から歩いて行ける“The James(ザ・ジェームス)”というビアパブです。
これから2ヶ月の間で、少しずつミュンスターの街を開拓していければと思います。
“Kemker Kultuur”での研修が始まりました
そんなミュンスターのダウンタウンから車で20分ほどの小さな村に位置するのが、今回研修でお世話になる “Kemker Kultuur”(ケムカー・クルトゥーア)。
(以下、「ケムカー」と書きます)
Nicole(ニコール)とJan(ヤン)という2人のパートナーが営む、小規模醸造所です。
インスタグラムのプロフィール欄に綴られているブランド説明は、"Natural beer, cider and beyond"。
野生酵母を活用したナチュラルビールから、地元産・有機栽培の果物を使ったシードル(りんごの醸造酒)やフルーツワインなどさまざまなお酒をつくっています。
過去に地域内でつくられていた、今では忘れ去られたビアスタイル(ビールの種類)を復活させたりと、実験的なお酒づくりにも積極的に取り組んでいる醸造所です。また、自然環境にもできる限りの配慮をしながら醸造をおこなっているのも特徴のひとつ。
そんなケムカーでの研修がいよいよ始まりました。
今週はりんごの収穫から始まり、週末に出店するイベントの準備、ビールとワインの瓶詰め、木樽で熟成中のシードルのテイスティング(試飲)とブレンディング(どの樽の原酒をどれくらいの比率で混ぜて瓶詰めするかを決める作業)などを行いました。
ケムカーは、銀行からの融資を受けない範囲で少しずつ製造量を増やしたり醸造機器を買ったりしているため、日本ではあまり見かけない手動の瓶詰め器を現在も使っていたり、発酵・熟成にはステンレス製の樽に加えて「IBCコンテナ」という容器を再利用して使っていたりもしています。
これまで日本で見てきた多くの醸造所とは異なるお酒づくりを目の当たりにして、新しい情報の多さについていくのがやっとな1週間でした。というか、たぶんついていけてませんでした。
コンフォートゾーンから抜け出して
学ばせてもらっているのはこちらなのに、ニコールとヤンの2人はとても温かく歓迎してくれました。
初日の夜はビール片手に歩いて街を案内してくれたり、調味料一式を小分けにして譲ってくれたり。ふたりのお家に招いてもらって夜ご飯もご馳走になりました。
日々の会話からも、ミュンスターでの暮らしをとても気にかけてくれていて、本当にありがたいです。
ですが(「ですが」でもないですが)、醸造所や農園での仕事となれば話は別。
You're doing it completely wrong!
(やり方が全然違う!)
"Kai, you need to think more!"
(かい、もっと考えて!)
ふたりが美しいと思う方法で納得のいくクオリティのお酒をつくるためであれば、しっかり注意もされますし、お叱りを受けることもあります。職場でのコミュニケーションの当たり前は日本と違って当然ですし、お互いが第2言語である英語で話しているのでミスコミュニケーションが起きることもしばしば。
国や職業に関わらず、働くことはそれなりの負荷があるものですが、やっぱり、日本で働くのと比べてその負荷は大きく感じられます。
ただ、そういった負荷を感じるときは同時に、「いま自分がいるのは、コンフォートゾーン(※)に戻るのが物理的に不可能な、成長にもってこいの場所じゃないか…!」というポジティブで高揚した気持ちも生まれます。
適度な負荷を感じることはきっと、自分がいま恵まれた環境にいる証拠でもあると思います。そう考えると、大きな負荷も前向きに捉えることができそう。
まだまだ始まったばかりですが、悔いの無い研修にするために、負荷を愛でて、ラーニングゾーンでしっかりあがいて、たくさん学んで日本に帰ります。
そのあがきや学びの過程を、この連載でも少しずつご紹介していければと思います。
ひとまず、ミュンスターでの研修を無事1週間終えることができました。
週刊「欧州ビール通信」
今回も記事の最後に、今週出会ったヨーロッパのビール文化をひとつご紹介して終わりにしたいと思います。
上の写真はケムカーの“EXPORT”(エクスポート)というビール。
「EXPORT」はドイツ発祥のビアスタイルのひとつでもあり、文字通り「エクスポート=輸出」を考えてつくられたビールがその起源と言われています。
冷蔵設備がまだ無かった時代に他の国や地域に輸出する際に気を付けなければいけないのは、輸送中にビールの品質が悪くなってしまわないこと。そのため輸出用のビールは他のものと比べて、日持ちするようにアルコール度数を強く、また、防腐効果のあるホップの量を多めにして醸造されました。
そんな歴史的背景が現在はひとつのビアスタイルを確立させ、ドイツのビール文化を形づくる1つのピースとなっています。
ちなみにケムカーのお酒は、こちらのサイトから日本でもお買い求めできます。
今週もここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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このヨーロッパ研修記では、海外で研修をおこなう地域おこし協力隊の取り組みや学び、現地の暮らしや文化、そしておいしいビールについて記していきます。
また来週もぜひ、ご覧ください。
Cheers!(乾杯!)
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