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8/6対談シンポジウム「キャリア教育の”終焉”!?」終了! ― キーワード②「真正のキャリア教育(・支援)が未発となっている可能性にとどまっている」→キャリア支援・キャリア教育への正しい理解を阻害する理由?

前編「8/6対談シンポジウム「キャリア教育の”終焉”!?」終了! ― キーワード①「学生を信じる」に引き続き、後編です。タイトルが長すぎてごめんなさい。(追記:あまりにも寝ぼけた文章だったので下方を修正しました💦)

シンポジウムの児美川先生の個別報告で、「真正のキャリア支援・教育が未発となっている可能性にとどまっている」のでは?という指摘がありました。

(大学における)キャリア教育、キャリア支援って、なに?

そもそもキャリア教育やキャリア支援ってなにか… ということ自体をおさえておかないといけないのですが、大学のキャリア支援やキャリア教育に対する多くの方のイメージは、就職支援(企業や団体で就職内定が射程に入っており、それが単位の出る授業(正課))の範囲にとどまっているのではないかと思います。

一方で、「真正のキャリア支援・キャリア教育」というのは、そういう就職支援とは違って、大学で自分がどういうことを学んでいるのか学部のカリキュラム全体を俯瞰するような「ラーニング・ブリッジ」になるようなものを言います。(児美川先生の報告で使用されたスライドを共有できないので、超訳してみました。過不足あるかと思いますが、申し訳ないです…)

一般社団法人 日本キャリアパスポート協会で8/27から開講する「大学キャリア教育講座」だと、大学のキャリア教育授業やキャリア支援にも関わる方々のための講座なのでもっとくわしく学ぶ(根拠となる法律等から始まるいろいろ)のですが、簡単に伝えるとこんな感じになるのではないかと思います。

ちなみに、「真正のキャリア教育」に対する「俗流キャリア教育」については、児美川先生が執筆した①『キャリア教育のウソ』(2013)ちくまプリマーや、②『教育論から変えよう ―5つの論争にみる、教育語りの落とし穴 』(2015)太郎次郎社エディタス が参考になります。教育領域で仕事をされている方は、②をオススメします。キャリア教育がさらにわかりやすくなっているとともに、関連する内容が詰まっているからです。


キャリア支援・キャリア教育への正しい理解を阻害する理由?

一方で、「大学キャリアセンター勤務のキャリアコンサルタントに必須のこととは」という記事にも書きましたが、大学の学部の先生方も、大学で活躍するキャリアコンサルタントも「キャリア教育とはなにか」を正しく理解しておられる方は少ないのが現状です。

大学の先生方の場合は、ご自分の研究領域と近しくなければ、「最近にわかに義務化されたもの。だけど、自分にはあまり関係がないので、専門の方がやるものでしょ」と認識する程度(たしかにその通りなのです。自分の専門領域外であれば、それを専門とする教職員がやる…それが、大学の「専門領域」という考え方です。他者の専門領域には踏み込まず、尊重するのが礼儀と考える先生も多いと感じています。ただし、大学から要請された職務として他の専門領域に入らざるを得ない先生もいらっしゃいます)。

一方、大学領域で働くキャリアコンサルタントの場合は、大学(+短大や専門学校などの高等教育機関)でキャリア関連の仕事というと、多くがキャリアセンターのような就職支援を行うところでの職務が多いこともあり、まずは「就職支援ができるようになること」がひとつの目標となります。

企業就職を目標とする支援の場合、「業界・職種とは?」「学生が書いてきた履歴書・エントリーシートの添削の仕方」「面接選考の指導の仕方」…などを理解して学生に説明し、適切に指導できる力を求められます。でも、こういったことすべて、キャリアコンサルタント養成講座(「標準キャリアコンサルタント」資格取得のための講座)で学ぶものではありませんよね。

さらに、キャリアコンサルタント養成講座で、「大学のキャリア支援・キャリア教育=就職支援」とは習っていないはず…ですが、現場の実感として、職務に一生懸命励んでいる間にいつのまにか正しい認識が変わってしまっているんだろうなと思っています。

真正のキャリア教育(・支援)が未発…というか、そもそも始まっていない?

菊地滋夫先生が個別報告の終盤で語ったのが、小タイトルにもなっている「真正のキャリア教育(・支援)が未発…というか、そもそも始まっていないんじゃないか」ということでした。私も「あ、そうか。たしかにそうかも」と膝を打つ納得感。

当日シンポジウムを視聴していただいた参加者のみなさんにアンケートをとったところ、「シンポジウム内で印象に残った言葉は?」という質問に、「真正のキャリア教育(・支援)が未発となっている可能性にとどまっている」というキーワードを挙げた方が少なからずおられました。

そうだよね… 印象に残る言葉だよね… っていうか衝撃走ったよね…。
たしかに、「真正のキャリア教育やキャリア支援って、きちんと発動する(言い方、変!?)機会があったんだろうか」。

私がこの協会活動を立ち上げたのも、「真正キャリア教育(+キャリア支援)とはなにかを理解したい・伝えたい」から。大学院に進学した理由も、「真正キャリア教育じゃない『いまの状態(俗流キャリア教育)』から抜け出して、学生にとってどういう15コマがいいのか探求したい」からです。でも、冒頭に書いたように、大学の先生方も、キャリアコンサルタントも正しく理解していないというのが実感。

真正のキャリア教育のなかで「ラーニング・ブリッジ」という言葉がありましたが、私が現在非常勤講師として仕事をしている大学では、そこを意識して授業を組み立てています。学部の学びを俯瞰したり、学部の学びを通して社会や自分にどう結び付けるのか、考えてもらうのです。

大学生のうちに、自分が学んでいることを俯瞰する時間や場ってあまりないんですよね。授業では大学キャリア教育講座で学ぶ「社会理解と自己理解の往復」をそのまま実践する形式にしていますが、学生からは「こんなふうに振り返ったことがなかったので、新鮮だった」などの声が毎年あります。たしかに学生の年齢からしても、自分を俯瞰する時間や場はあまりないだろうと思います。

「ラーニング・ブリッジ」を意識した授業は、学部のカリキュラムの中に位置づけられる場合でも、学部横断的なカリキュラムの中の位置づけ(全学共通科目などにあるようなもの)の場合でもできますし、どちらもその特徴を生かした授業設計で学生同士の話し合いも活発になります。大学生活の今後の履修プランニングや、卒業後のキャリア形成にも生きるので、もっとこうしたカリキュラムが増えたらと感じています。

もちろん、実践者の育成も大事。「真正キャリア教育・キャリア支援」について一緒に学び、実践する人がもっと増えてくれることを願って協会活動をしています。


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