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アーリー期全体像

アルー株式会社の起業・経営の経験に基づく「スタートアップ営業組織作りの教科書」の記事を連載しています。

本連載は、企業向け研修サービスを提供する当社の創業から東証マザーズ上場までの15年間を事業ステージ毎に「シード期」「アーリー期」「ミドル期」「レーター期」「プレIPO期」と5つに分け、それぞれの段階で起きた当社の出来事と、課題、それに対する対応策や私自身の学びを紹介していきます。

各事業ステージ毎の構成は、最初に「期」の全体像を解説し、次の記事から各期で起きた出来事や課題を具体的にご説明していきます。

本記事は、事業の方向性が固まった段階の「アーリー期」の全体像をご紹介します。

<「スタートアップ営業組織づくり」まとめて読まれる際はこちら↓>

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①株式会社エデュ・ファクトリーのアーリー期

私が考える株式会社エデュ・ファクトリー(アルーの創業時の社名)のアーリー期は、2004年後半~2006年末頃までの2年強程度です。
創業前の2003年頭頃から事業活動を開始し、1~1.5年程の時間を掛けて最初のシード期を抜けました。

当社にとってのアーリー期を一言で説明すれば「事業の方向性が固まり、拡大再生産の準備が整ってくる」までの期間でした。

◆業績面
2004年度売上0.9億円(2005年3月期決算)
2005年度売上2.2億円(2006年3月期決算)
2006年度売上4.4億円(2007年3月期決算)
だったかと記憶しています。

★社員数
シード期後半の2004年初時点で創業メンバー含め3名。
アーリー期2004年後半に初の社員採用を行い、2005年初時点で6名体制。
そこから急速に組織拡大をし2006年初時点では10名ほどのチームとなっていました。
2006年後半には20名ほどの会社となりました。

新卒採用活動に取り組み始めたのもこの時期です。この活動を通じて2007年4月に新卒1期生が入社しました。
また、従業員の中で初の退職者が出たのは2006年後半でした。

★オフィス
2003年10月創業時は、代表の落合さんの本郷の自宅の一室を本社としていましたが、すぐに近所の湯島にあるマンションの一室に転居しました。シード期のオフィスは、どちらも所謂マンションオフィスでした。

アーリー期になる2004年中頃から、銀座にあるコワーキングスペースに移転をしました。部屋の広さ自体は湯島オフィスより狭いものでしたが、セミナースペースを自由に活用することができ、研修事業を営む当社にとっては使いやすいオフィスでした。

2005年3月末に、西新橋のビルの40坪ワンフロアを借りました。
新橋駅から徒歩15分弱掛かるあまり利便性の良くないところでしたが、初のワンフロアを賃借するということで、社内が多いに盛り上がったことを記憶しています。この西新橋のオフィス時代までが当社のアーリー期でした。
(その後ミドル期に移行したと言える2007年初に渋谷で100坪のオフィスに移転しました)

◆財務面のトピックス
この時期に初の外部資金調達を行いました。
一つは銀行借り入れ。2005年後半に実施をしました。
そしてもう一つがベンチャーキャピタルからの資金調達。事業拡大に向けてシリーズAの資金調達を2006年後半に行いました。

こうして全体像を整理すると、アーリー期の初期と後期では大きく状況が異なっていますね。

売上グラフ期別


②アーリー期の全体像について

スタートアップ関連の用語として「アーリー期」「アーリーステージ」という表現は良く使われます。一般的には「事業立ち上げから、プロダクトマーケットフィットまでの軌道に載るまでの段階」と言われます。

多くのスタートアップ企業では、このステージは赤字であり、運転資金や設備投資のための資金が必要となってきます。

株式会社エデュ・ファクトリー(アルー)においては、プロダクト開発に多額の資金が必要となるような事業を行っておらず、赤字経営ではありませんでした。

しかし立ち上げたばかりの研修事業・サービスを、顧客のニーズにフィットさせるために磨き続けた期間であり、一般的な定義通りと言えます。


以下に、アーリー期の全体像の概略図を示します。

画像2

図の上段左側は、アーリー期開始時(2004年後半)の当社の状態を示しています。
図の上段右側は、アーリー期が終わるころに到達した状態(2006年末頃)を示しています。


③アーリー期の初期段階

アーリー期の初期段階にあったものは、
(1)ミッション・ビジョン(理念・目指すべき姿)
(2)事業ドメインの確定と基本知識
(3)プロダクトの初期版
(4)プロダクトの受注・納品実績

シード期の試行錯誤を通じて、上記の4点がある状態がアーリー期のスタート地点でした。しかしながら、この時点では「どれも解像度の低いボンヤリとした状態」です。

ミッション・ビジョンは、その性質上抽象性が高いことは必ずしも悪い事ではありません。
一方で事業ドメインについては、具体化をすればするほど、勝てる事業作りに繋がります。

当社のケースでは、この段階で「法人向け教育研修事業」を行うと考えていました。
しかし「法人」とは何を指すのか?
大企業なのか、中小企業なのか?
民間企業なのか?行政自治体なのか?
特定の業種を顧客とするのか?・・・等、明確ではありませんでした。
「教育研修事業」とは何を指すのか?についても、同様に、自社の提供価値を言葉にすることが出来ていませんでした。

プロダクトについては「ロジカルシンキング100本ノック」という、研修プログラムが一つあっただけです。その他にも顧客のオーダーに基づき手作りで研修プログラムを作って納品したことはありましたが、自社商品とは呼べないものです。
また「ロジカルシンキング100本ノック」自体、極めてプロダクトアウトに近い商品開発に基づいたものです。顧客企業の抱える人材育成課題に具体的にどう応えられるのか、明確ではありませんでした。

プロダクトの受注・納品実績はこの時点では1社のみでした。私の学生時代の友人が「発注することを決めてから」私に連絡をくれて実績を作らせていただいた「棚ぼた受注」でした。自社で営業活動を行ったわけではないため、営業上生じる問題点もつかめておりませんでした。
一方で、1社でも大手企業様に受注・納品実績があったことは、その後の営業展開にとても大きなインパクトをもたらしました。


④アーリー期の活動プロセス

図の上段中央が、アーリー期における主たる活動内容・プロセスです。

アーリー期では、何よりも「受注・納品実績を増やすこと」が命題でした。
そのために自社プロダクトの営業活動に集中して取り組みました。

自社プロダクト営業を行うために、シード期に取り組んだドメイン外のキャッシュ稼ぎや、下請け案件からの撤退を行っていきました。

自社プロダクトの営業については、簡単に成果は出ないものの粘り強く取り組むことで、一つずつ実績が積み重なっていきます。

顧客が増えることで、様々なニーズをお聞きすることができるようになり、対応した商品サービス開発に取り組む必要が出てきました。
結果的にプロダクト・実績が積まれていき、顧客の課題にマッチしたサービスに磨かれていきました(正しくはサービスを磨くことに優先して取り組まないと受注が取れなくなる)。

アーリー期当初、創業メンバー(役員)のみで仕事をしていましたが、業務拡大に伴い採用活動に取り組むようになります。
特に営業面では、創業メンバーしか売ることができなかった状態から、新規採用した営業メンバー(数名)が売れるように育成することへの取組みが必要でした。

しかし、このアーリー期の2年程度の間では、創業メンバー以外が売れるようになるという状態は実現しませんでした。この育成問題を解決するには非常に時間が掛かります。その後数年に渡って、営業メンバー戦力化の取組をしていくことになります。


⑤アーリー期を通じて到達する状態

一般的にアーリー期の到達地点は「プロダクトマーケットフィット」と言われております。
私の考えでは、この段階で真の意味での「プロダクトマーケットフィット」に辿り着くわけではなく、「戦略が明確に定まり、プロダクトが顧客の課題を解決できるレベルに磨き上げられている」という状態がアーリー期の到達地点と考えています。

複数の顧客での受注・納品実績を得たことで、自社が勝てる顧客ターゲットが明確になり、自社プロダクトが顧客から一定レベルで認められている状態に辿り着いています。

当社の場合は、自社の得意分野が「大企業の新入社員研修」であり、その分野で強みを持った自社プロダクト群(具体的にはプロフェッショナルスタンス100本ノックを代表とする「プロフェッショナルシリーズ」)を持てたことです。

この時点でも解消しなかった大きな問題は、営業メンバーの戦力化です。
採用をした新メンバーが一人で成果を出すことが難しく、会社の売上の9割を一人のスーパー営業マンが稼いでいた状態でした。この問題は、ミドル期以降に引き続き七転八倒しながら解決に取り組みました。

最後に、当社の場合は「直販戦略」か?「パートナー販売戦略」か?
2つの方向がありえた大きな営業戦略について「直販戦略」を選択するという決断をいたしました。こうした大きな営業方針が固まると、事業成果の拡大再生産に向けた投資を行うことができるようになります。


⑥アーリー期の課題と具体的な取組み

次の記事以降、アーリー期において直面した具体的な課題とその対応について紹介していきます。

(5)初期のキャッシュ稼ぎ案件から撤退し自社プロダクトの立ち上げに集中する(アーリー期)

(6)パートナーセールスで実績を積む(アーリー期)

(7)直販立ち上げのために法人営業のノウハウについて学ぶ(アーリー期)

(8)直販テレアポは、継続すれば成果は出る(アーリー期)

(9)超絶能力を持つ営業責任者のノウハウを、営業メンバーに共有する(アーリー期)

(10)サービスクオリティの改善を優先しないと新規営業活動がストップする(アーリー期)

(11)パートナーセールスか?直販か?戦略の大きな分かれ道(アーリー期)

(12)営業組織の組成には、資金調達が不可欠

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本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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すごい開発バイブル


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