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(7)直販立ち上げのために法人営業のノウハウを学ぶ(アーリー期)

スタートアップ「アーリー期」の3つ目の記事です。
※アーリー期:一般的には「事業立ち上げから、プロダクトマーケットフィットまでの軌道に載るまでの段階」を意味します。

今回の記事は、課題(7)「直販立ち上げのために法人営業のノウハウを学ぶ」です。

課題7直販立ち上げのために法人営業のノウハウを学ぶ

①法人営業未経験の創業メンバー

創業直後に取り組んだキャッシュ稼ぎのためのコンサルティングの案件受託をやめ、自社事業として「企業向け研修サービス」を立ち上げることを決めたのが2004年4月頃のことでした。

株式会社エデュ・ファクトリー(アルーの創業時の社名)の創業メンバーである3名は、全員が戦略コンサルティング会社の新卒出身でした。
コンサルティング会社において営業活動は、パートナーと呼ばれる上位コンサルタントが一般的に担当します。一件あたり数千万円以上のプロジェクトを顧客企業から受注をするには、コンサルタントとしての経験や知見が求められるためです。
ではコンサルティング会社に新卒で入った若手は何をするのか?新卒コンサルタントは「アナリスト」としてプロジェクトにおけるデータ分析や各種のヒアリング・リサーチ等を担当します。
私達3名は法人営業未経験者の集まりだったのです。

2003年10月の創業直後から「起業の報告」をネタとして営業活動には取り組んできました。お会いしていたのは主に知人であり「何かお仕事いただけませんでしょうか?」という極めて原始的なセールス方法しか行っておりませんでした。

しかし自社事業を立ち上げるとなれば、営業相手は企業の人事・人材育成部門、研修企画担当の方となります。人材育成部門の研修企画担当の方は、日々、様々な研修ベンダーから営業を受けている方々になります。
「何かお仕事をください」というだけの営業では到底通用いたしません。


②1スライド1メッセージ?

企業の人材育成担当者の方とのコンタクトを作ることは容易ではありません。現在のアルーでも新規のコンタクトを作るために様々なマーケティング活動の工夫を行っています。

当時の私達は、知り合いの伝手を辿ったり、人事系交流会に参加し名刺交換をした方にアプローチをしたり、会社四季報に掲載されている会社へのコールドコール(テレアポ)を試みたりして、何とかアポイントメントを取ろうとしました。
最終的には、テレアポが最も効率が良い手法でした。私自身はどうしても好きになれませんでしたが・・・。(テレアポについては、別の記事で詳しく解説をいたします)

試行錯誤を積み重ねて、ようやく何件か、人材育成担当者の方に新規のアポイントメントを取ることができてきました。

苦労の末の貴重なアポイントです。「絶対に受注をする!」という思いで、訪問に向けて私達は資料の準備をいたしました。

私が初めて、自社事業の営業活動としてアポイントが取れたのは、横浜にあったシステム会社様でした。
事前のお電話で「会社概要」と「サービス紹介」を聞きたいというお話を聞いておりました。

資料も整っていませんので、訪問に出発するギリギリまで作成し、慌てて印刷をしてオフィスを飛び出しました。

到着をし、先方のご担当者様にご挨拶をさせていただきました。知り合いの方ばかりに営業をしていた時と異なり、「じー」っと品定めをされる雰囲気がありました。プレッシャーを感じながら私は用意してきた「会社概要とサービス紹介の100ページの資料」をお客様にお渡しいたしました。

その分厚さに、お客様は驚かれたかと思います。

では、まず当社について、説明させていただきます」と私。

表紙をめくり、
私達は、株式会社エデュ・ファクトリーと申します」と私。

ページをめくり、
株式会社エデュ・ファクトリーは、教育研修会社です」と私。

さらにページをめくり、
会社の理念は・・・・」と私。

さらにページをめくり、
複数の事業を展開しております」と私。

さらにさらにページをめくり、
一つ目は、ロジカルシンキング研修」と私。

さらにさらにページをめくり、
二つ目は、グループワーク開発」と私。

さらに・・・ページをめくり、
三つ目は、・・・・

というように、1枚の資料に、1つのポイントを整理していった結果、ページ数が非常に多くなってしまったのです。
ちなみにサービス紹介としての「ロジカルシンキング100本ノック」は、50ページ以降に説明されていたかと思います。

最初は、真剣に聞いていただいていたお客様も、途中から「もういいよ」という表情になられていたかと思います・・・。
結局、この訪問はまた機会がありましたら、ご連絡をしますというお言葉をいただいて終了いたしました。

コンサルティング会社時代、資料作成においては「1スライド1メッセージ」という原則がありました。コンサルティングの仕事では、データ分析から示唆を抽出します。示唆を顧客にパワフルに届けるためには、1枚のスライドに複数のメッセージを書くのはご法度でした。しかし、法人営業においてはそれが当てはまらないということに気づきませんでした。


③商談における振る舞いの試行錯誤

試行錯誤をしていたのは私だけではありません。
現在、書籍「無敗営業」が大ヒットをしている当社創業メンバーの高橋浩一さん(2009年末退任)からも以下のようなエピソードを聞きました。

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商談機会を何度得ても受注につながらないという経験をしてきた高橋さんは、ある時、今回の商談では「受注に至るまでのネックは何かを絶対に発見する」ということを試されたそうです。

教育研修サービスの新規初回商談は、一般的には30分~1時間程度です。
その商談で高橋さんは、会社紹介やサービス紹介をし、先方の状況を聞いたりし、そろそろ1時間というところで「粘った」そうです。話を担当者様個人のバックグラウンドに振り、お客様の仕事にかける想いをお聴きすること2時間。ご納得頂くまで更に粘り、トータルで4.5時間。

結果として受注に至りましたが、実はその商談の帰り際、お客様は「これまで、一緒に想いを共有できる会社を探していたが、なかなか見つからなかった」ということをおっしゃったとのことです。
従来「商談では、研修会社としての提案内容をプレゼンする」という発想でいた高橋さんは、「お客様と想いを通い合わせる」ことが重要なのだと実感されたとか。

企業における教育施策(研修・Eラーニング等)は、一般的には年間のゴールがあり、そのためのプランを一年のどこかの時期に設計します。施策の中身が決まっていないものも時にはありますが、大体はプランのタイミングにて中身(どのような研修をどの研修会社に発注するか)も決まっています。当時の私たちは、こうした顧客の意思決定構造やタイミングについて全く知見がありませんでした。

そのような中で、「新規に取引を拓く」ためには、「決定的にお客様の心を動かす何かが必要である」ということを実感した出来事でした。


もう一つの事例もあります。
私達の企業研修の初の受注実績は、私の大学時代の友人が発注してくれたことでした。「関係性」が重要だと考えた高橋さんは、別の企業への営業をした際に、顧客担当者と関係づくりに取り組みました。

具体的には、商談の後、ランチにお誘いするという打ち手に取り組みました。アポイントの時間帯を午前11時~12時にし、「今日はありがとうございました。よろしければこの後、昼食でもご一緒にいかがでしょうか?」とお誘いしたそうです。

商談で初めて会った営業マンから、いきなり会食に誘われても、私でも怪しさを感じます(笑)。

しかし、ある日のランチにて、商談を終えたばかりのお客様は「この後、少しお時間ありますか?」ということで、高橋さんに対して、先ほどの提案書の「ダメ出しフィードバック」を30分かけてしてくださいました。

提案資料のうち、どこが響いていて、どこが的はずれなのかを、1ページ1ページ、教えてくださったのです。
このようなお客様にお会いできるかどうかは「運次第」という考え方もありますが、粘り強く機会を探し続けることで、後につながる大きな発見があったできごとでした。

(上記パートは、高橋浩一さんにご監修いただきました!お忙しい中、ご協力いただきましてありがとうございます)


④経験者から学ぶことで一気に改善が進む

試行錯誤を繰り返しながらも、私達は失敗事例を共有し、少しずつ営業方法を改善していきました。しかし、一向に成果につながりません。

ある時学生時代からの友人であり、当時総合商社にて営業をされていた植野大輔さん(現DX JAPAN代表/アンドパッドの上級執行役員CMO)に相談をする機会がありました。

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「大ちゃん、営業全然上手くいかないんだよね・・・」
「そうなんだ、どんな風に営業しているのか教えてよ」
「今、ちょうどお客様向けの資料があるので、見てもらえるかな?」
私はカバンから100ページの資料を取り出しました。

それを見て植野さんは・・・
え!何でそんなに分厚いの??初回の訪問資料だよね?
「資料作りの基本「1スライド1メッセージ」で作ったらこうなっちゃって・・・」
いやー、そんな分厚い資料、商談では全部聞いてくれないって。説明していても飽きられちゃうでしょ?
おっしゃる通りでした。

植野さんからその日に教えていただいたことの要点は以下の通りでした。
・営業の初回訪問資料は多くても3-5枚程度に収める。
・特にお客様と議論をする「全体像をまとめた1枚の資料」が大切。
・全体像の資料には5つほどの論点を書き、お客様に何について話したいかを選んでもらう。

それを聞いた私は疑問を持ちました。
「1枚の資料に、5つも論点書いていいの?1スライド5メッセージ・・・」

「そっちの方がいいんだって!お客様が話したいことを話すために、お客様から選んでもらうのが重要なんだから。営業はプレゼンじゃないんだよ

この日のアドバイスはとても貴重なものでした。
自分達で試行錯誤を繰り返していましたが、経験者である植野さんからお話を聞いただけで、一気に改善が進みました。

経験者/プロフェッショナルから知見を得ることは極めて重要であるということが、私達のDNAに刻み込まれました。


本記事のまとめ

◆営業活動の試行錯誤自体は重要
◆しかし自分達だけの経験に基づく改善では、成果が出る営業活動につながらない
◆お客様や経験者からフィードバックをしてもらうのが最短ルート


次の記事はこちらです!

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本記事を含む「アーリー期」の全体像を解説した記事はこちらになります。
アーリー期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

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本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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