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(11)パートナーセールスか?直販か?戦略の大きな分かれ道(アーリー期)

スタートアップ「アーリー期」の7つ目の記事です。
※アーリー期:一般的には「事業立ち上げから、プロダクトマーケットフィットまでの軌道に載るまでの段階」を意味します。

今回の記事は、課題(11)「パートナーセールスか?直販か?戦略の大きな分かれ道」です。

課題11パートナーセールスか?直販か?戦略の大きな分かれ道

①「アルー株式会社」への社名変更

2006年4月、当社は「株式会社エデュ・ファクトリー」から「アルー株式会社」への社名変更をいたしました。

エデュケーション(教育)のファクトリー(工房)という名前は、質の良い教育サービスを提供するというミッションを体現した社名でした。
社名変更をした理由は今後発展をする中でより幅広い方々の「可能性を切り拓く」というために、教育分野だけに留まらず、かつ国内だけに留まらない事業展開を志向したいという想いがあってのことでした。
「SONY」のように、シンプルで世界中の方々が覚えやすい名前を志向しました。

当時のマーケティング部門の責任者だったHさん(2005年入社~2008年退職)は、ブランディング戦略のプロフェッショナル。Hさんは私達経営陣のインタビューを行い、複数のプランを提示していただきました。

その中にあったのが「アルー」という名前でした。

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all the possibility for the explorers」:探求者達のために全ての可能性を切り拓く、という言葉をベースにした造語でした。

私達の想いを体現した素敵な社名だと考えています。


②パートナーセールス推進のための合弁会社設立

社名変更はアルー株式会社にとってアーリー期の後半の象徴的な出来事でした。試行錯誤を繰り返しながらも成長への勢いが増していました。
当時の業績を牽引していたのはC社様との提携・パートナーセールス戦略でした。

創業メンバーで取締役の高橋浩一さん(2009年末退任)、中村俊介さん(現アルーエグゼクティブコンサルタント)のお二人がC社様に常駐しながら、様々な超大手企業との取引を拡大していきました。

そうしたパートナーセールス活動が順調に進む中、2006年初頃にC社の経営陣より「合弁会社設立の提案」を受けました。

C社様はマネジメント・選抜研修を得意とし、営業力に強みを持つ会社です。アルーは新人若手向けの研修が得意で、100本ノック研修という特徴のあるプロダクトがありました。
この2社の強みを結集し、C社様が当時積極展開をしていなかった「大企業の新入社員・若手社員研修分野で№1を取ろう」というご提案でした。

議論を重ねた結果、アルーとして取り組んでいこうという結論となり、C社様と更に一歩踏み込んだパートナーセールス戦略を実行に移しました。

こうしてC社様とアルーによる合弁会社「F社」を設立することになりました。創業時の体制としては、C社様から社長としてWさんがアサインされ、アルーからは高橋浩一さんが副社長、私が取締役として参加することになりました。

Wさん、高橋さん、私の3名は、C社様の会議室に集まり、F社設立に関する議論を重ねました。ミッション、事業ドメイン、マーケティング戦略、プロダクトプランニング・・・等。
私自身にとっては2度目の創業でしたので、これまでの経験を生かし良いプランを描くことができたと考えています。

F社とアルーの役割分担については、当社のパートナーセールス戦略をベースにしていますので、基本的な役割としては、
F社:営業
アルー:商品開発・納品
という分担です。

F社は、W社長やIさん(後のF社取締役。アルーから移籍)Kさん(更に後のF社副社長。アルーから移籍)の活躍により、多数の顧客開拓を実現しました。この顧客開拓活動を通じて、アルーの新人若手向けプログラムの開発の機会が数多く生まれました。

この頃F社との協働を通じて開発・ブラッシュアップしたプログラムは

●プロフェッショナルスタンス100本ノック
(元々アルーにあったプログラムでしたが別の名前でした。F社W社長が命名したことで大ヒット商品となりました)

●プロフェッショナルコミュニケーション100本ノック

●プロフェッショナルマナー100本ノック

●プロフェッショナルスタンスシミュレーション

などの「プロフェッショナルシリーズ」というアルーの主力となる新入社員向け研修プログラム群が生まれることになりました。C社様・F社様と協働をすることができ、多くの機会をいただき今でも深く感謝をしております。


③ベンチャーキャピタルからの提案

企業研修市場の中で、新人向け研修は古くからある主要な分野です。
2000年代の日本の景気回復・拡大に伴い大企業の新卒採用人数が大きく増加していました。そのことで新入社員研修マーケットが急速に拡大していました。その領域に対して、100本ノック研修を提案していければ、当社の加速的な成長が見込まれました。

私たちは営業体制・プロダクト(研修プログラム)の両方の拡充をするために、エクイティでの資金調達を行おうとしていました。

2006年秋頃に、創業のタイミングよりお世話になっていたベンチャーキャピタル様(以下VC様)に当社にご出資をいただくことになりました。VC様におけるアルー担当であった執行役員Yさん担当コンサルタントのOさん(後のアルーパートナー講師)のお二人とは、何度も議論を重ねて成長のための戦略を検討をさせていただきました。

F社設立後、プロダクト開発に力を入れていた私達にある日、Yさん・Oさんからご提案をいただきました。お二人から「今後のアルーはパートナーセールス主体か?直販主体か?」という論点の提示でした。

そしてVC様の提案は「直販で行くべき」というものでした。

前提として、パートナーセールス、直販のどちらがよいかということは、事業や扱っているサービス、自社の強み等によってケースバイケースで変わります。何が最適な営業チャネルなのかということに「一つの決まった正解」はありません。

VC様の提案の骨子は、企業向け研修サービスという事業分野において、当社が成長をするためには、直接顧客と繋がり、顧客ニーズやフィードバックを直接受け、それを商品開発・営業活動に生かすことが必要ということでした。

●パートナーセールスのメリット・デメリット
パートナーセールスは短期的に売上の拡大には役立つというメリットがあるものの、少数のパートナーしかいない場合は、アルーの研修プロダクトが売れるほど、パートナーにコントロールされる可能性があるというものでした。
またパートナーセールスは、顧客と直接接することができないため、ポジティブな反応もネガティブな反応も、パートナーを間に挟むことになります。商品開発において顧客の声をダイレクトに反映できないというデメリットがあるということでした。

確かに、パートナーセールスにおける企業への提案書では、必ずしもアルーのプログラムのみを提案しているわけではありませんでした。
営業をしていれば、顧客のニーズに最もマッチするものがアルーのプログラムとは限りません。そのため、A案:アルーの100本ノック、B案とC案は別の講師のプログラムと併記されているケースが多々ありました。
なんとしてもアルーの商品を顧客に勧めるというよりも
A案の100本ノック研修がおすすめですが・・・。あ、B案の方がよいですか。ぜひB案で行きましょう!
という商談の場に私も立ち会ったことがありました。


●直販主体となるとどうなるか?
パートナーセールスのデメリットである、コントロールされるリスクがなくなり自社商品の営業に注力できる顧客と直接つながり顧客の声を受け取ることができるというメリットがあります。

しかし、デメリットとしては、大企業との取引が簡単にはできないということです。
大企業との取引をするには、様々な営業上のノウハウが必要です。パートナーが担ってくれていたそのノウハウを自社で開発・蓄積しなければなりません。それには時間が掛かります
また営業組織を拡大する必要があります。人を採用しただけでは、すぐに売れるようにならないことはこれまでの経験で判明していました。戦力化まで時間がかかる人材を組織として抱えていくことが求められます。その分、事業リスクは高まります。


④直販戦略を選ぶ

VC様のYさん・Oさんと私達経営陣の議論は白熱しました。
最終的に、私達はご提案通りの「直販」の方針を取ることにしました。

結果としては、その後のアルーの研修事業の成長につながりました。この意思決定がなければアルーは当時の事業規模のままだったでしょう。創業後様々な意思決定を重ねてきた私達でしたが、最も大きな意思決定と言ってもいいものでした。

今から振り返っても、この選択肢は私たち経営陣自身で出せたのかはわかりません。
当時、経験の少ない私たちの視点では正しい判断は難しかったと思います。
経験の多いベンチャーキャピタルや顧問などの視点・ご提言をいただくことは、大きな経営方針の検討においてとても有効な手段だと考えています。


本記事のまとめ

◆パートナーセールス、直販のどちらがよいかということは、事業や扱っているサービス、自社の強み等によってケースバイケースで変わる

◆パートナーセールスのメリット・デメリット
・メリット:短期的に売上の拡大には役立つというメリットがある
・デメリット:パートナーにコントロールされる可能性がある。顧客と直接接することができないため顧客の声を事業に反映しづらい

◆直販のメリット・デメリット
・メリット:特に顧客と直接つながり顧客の声を受け取ることができる
・デメリットとしては大企業との取引が簡単にはできない。営業上のノウハウの開発・蓄積には時間が掛かる。

◆経験の多いベンチャーキャピタルや顧問などから視点・ご提言をいただくことは、大きな経営方針の検討において有効な手段

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本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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