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(12)営業組織の組成には、資金調達が不可欠(アーリー期)

スタートアップ「アーリー期」の8つ目の記事です。
※アーリー期:一般的には「事業立ち上げから、プロダクトマーケットフィットまでの軌道に載るまでの段階」を意味します。

今回の記事は、課題(12)「営業組織の組成には、資金調達が不可欠」です。これでアーリー期の記事は最後になります。

課題12営業組織の組成には資金調達が不可欠


①事業拡大の「アクセル」を踏む

2006年10月に、アルー株式会社は創業前から数えて6つ目となる渋谷オフィスに移転しました。
※神楽坂→本郷→湯島→銀座→西新橋→渋谷です。

渋谷駅から歩道橋で246通りを渡り、桜が丘の坂を上っていくと「インフォスタワー」という有名な大きなビルがあります。その向かいのビルの7階。
1フロアで100坪を借りました。

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直前まで入居していた西新橋のビルは広さ40坪程度。また渋谷という好立地になったため家賃の坪単価も高く、私達にとって大きな投資でした。

オフィス移転は、業容・組織体制の拡大に伴うものでした。企業研修ビジネスを直販で立ち上げるという戦略を選択した私達は、営業体制・開発体制の増強を図りました。

西新橋オフィスに移転した2005年4月当初は7名だった私達は、渋谷に移転した2006年10月時点で30名を超えていました
今から見れば商品も少なく、業務プロセスの整備も不十分であり、当時のメンバーは皆、夜遅くまで残業をするハードな環境でした。
幸いながら、2005年、2006年は会社として結果を残すことができ、業績もよく順調な成長を続けていました。

日本経済の景気回復に伴い、顧客である大企業は新卒採用人数を増加させており、新入社員研修のニーズが高まっていました。当社のサービスである「100本ノック研修」は、新入社員・若手社員向けの研修に強みがあることもわかってきました。

このまま一気に投資をして、大きく成長する
私達はエクイティでの資金調達を経てアクセルを踏み続けました。


②新卒第1期生の入社

渋谷オフィス移転から時を前後しますが、西新橋時代の2005年後半から、当社は2007年4月入社予定の新卒採用活動を開始しました。

エデュ・ファクトリー(アルーの創業時の社名)のミッションは「高品質な教育サービスを通じてパイオニア人材を育成する」でした。人材育成というものは一朝一夕には成し得ません。私達は、長く継続する会社を作りたいと願い、会社の文化を創り・継承していくための重要な打ち手として、新卒採用を行うことをいたしました。
(新卒採用は現在に至るまで毎年継続しています)

2006年4月に新卒0期生として三宅雪絵さんがご入社されました。
当時エデュ・ファクトリーが行っていた様々な試行錯誤の一つ「就活のトモ!」というSNS事業がありました。就職活動学生の方のためのSNSを開発していたのです。この「就活のトモ!」自体は上手くいかずに早々に撤退をすることになったのですが、このユーザーとしてご利用をいただいていたのが三宅さんでした。(画像は「就活のトモ!」)

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このご縁で御入社をされた新卒0期生の三宅さんは、その後営業、カスタマイズ、マーケティングと様々なご活躍をされて2013年夏頃にご退職されました。

三宅さんのお名前はアルーの歴史に刻まれています
当社の「100本ノック研修」シリーズは、演習の前にちょっとしたストーリーが挿入されます。その主人公の名前が「三宅くん」。三宅さんは現在、年間20万人程にご受講いただいているアルーの100本ノック研修の主人公のモデルになられました。
(下記は「プロフェッショナルスタンス100本ノック」の初期版より)

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さて、三宅さんは、当社サービスのユーザーだったという特殊な出会い方でしたが、2007年4月入社の新卒1期生の方の採用活動は、いわゆる本格的な新卒採用活動を会社として取り組みました。

新卒採用活動のノウハウがないものでしたので、パートナー企業であった採用支援ベンダーのA社様から色々とアドバイスを受け、A社様の運営するナビサイトにも求人広告を出稿しました。また、学生時代からお世話になっていた「ジョブウェブ社」様は、ベンチャー企業に関心のある学生さんが集まるサービスを行っていましたので、そちらにも求人広告を展開させていただきました。

ナビサイトに求人広告を出し、数多くの就活サポートセミナーを通じた母集団形成を行い、当社にとって初の新卒採用活動でしたが、1000名近い方からエントリーをいただくことができました。

当時の就活サポートセミナー兼会社説明会で、評判がとてもよかったのは「アルーゲーム」という当社のビジネスモデルをデフォルメして体験できるビジネスゲームでした。A社様との協業を通じて様々な企業様にビジネスゲームを開発していましたので、自社向けにもビジネスゲームを作ってみました。(画像はアルーゲームの説明資料)

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こうして初の新卒採用活動を通じて、2007年4月に、7名の方に新卒第1期生として御入社をいただきました。

●K・Aさん
営業として長らく活躍。2回の産休・育休を経て2021年ご退職。現在は海外にご在住
●須藤賢太郎さん(現職)
営業、開発、講師等オールマイティにご活躍。現在商品開発部グループマネジャー
●高橋玄太郎さん(アルーパートナー講師)
営業から講師へ。2010年頃ご退職。現アルーパートナー講師としてトビタテ!留学JAPAN研修でも長らくご一緒させていただいております。
●N・Aさん
営業として長らくご活躍。商品開発部に異動後「共感的コミュニケーション」等、感情と願いを大切にした研修を開発されました。2016年頃ご退職
●H・Tさん
ITサービス部門に配属後、営業としてご活躍。現在はご実家の事業の経営をされています。
●平岡紗耶香さん(現職)
営業としてご活躍後、講師採用育成を経て、現在は広報マーケティング部門にてご活躍
●M・Nさん
商品開発・カスタマイズ部門でご活躍後、営業としてご活躍。2013年頃ご退職。退職後も新規事業開発などのご協力をいただきました。
(50音順)
※玄太郎さんはご退職済みなのですが、長らくパートナーとしてお仕事をご一緒しているのでお名前書かせていただきました!

新卒1期生の方々の正式な入社時点では綺麗な渋谷オフィスになっていましたが、最終面接は西新橋オフィスが入った雑居ビルで行いました。
あの西新橋オフィスで、よく御入社を意思決定していただけたと今でも思います。


③HRコンサルティング部の立ち上げ

新卒1期生に加え、中途で御入社される社員の方々を含めて、2007年4月には社員数が50名を超えました。渋谷オフィスは一気に活気づきました。

こうした社員採用、組織拡大の目的は、企業研修サービスの事業確立でした。直販営業を担当する「HRコンサルティング部」という部署を再編成・立ち上げをすることになりました。

もともと西新橋オフィス時代より、創業メンバーで取締役の高橋浩一さんが責任者として、4名ほどの営業メンバーの方々がいました。この時代は「HRプランニング部」という名前の部署でした。お客様の人材育成企画を「プランニング」する役割だったからです。
それを「コンサルティング」するという一歩踏み込んだ名前に変更し、新規メンバーを含めたチームを組成しました。

責任者として、高橋浩一さんHさん(アルーという社名を考案したマーケティングのプロ)、そして私も所属することになりました。
この3名のマネジャーを含め、総勢20名ほどの営業部が発足しました。

※2007年10月には、田中英範さん(後の執行役員・教育研修事業部長。2019年退任)もマネジャーとして加わり、4部25名程の体制になります。

この時点でHRコンサルティング部は、大きな問題を抱えていました。
20名のうち半数以上の方が営業の未経験者でした。新卒1期生の方々も含みます。配属された方々も不安でしたでしょうし、マネジャーであった私達も不安でした。

本当にこんなにたくさんの未経験者と一緒に、成果を出していくことができるのだろうか?高橋さん、Hさん、そして私は新部署を軌道に乗せるために日々議論を重ねていきました。


④夏の日の2007

20名体制の営業部が発足し、バタバタと日々は過ぎていきました。
当初懸念した通り、当然のごとく営業成果はでません。
高橋浩一さんや西新橋時代からの「ベテラン営業メンバー」の方々がなんとか受注を積み上げていただきましたが、新規メンバーにとっては成果の出ない辛い日々が続いていたかと思います。

2007年の夏を思い出すと、本当に暑かった記憶があります。
オンライン・リモートワークで営業をする2021年と異なり、当時はスーツを着て、クールビズも浸透していない中、お客様企業を訪問する日々でした。

2006年末に中途で御入社された中田春奈さん(現在はカスタマイズ部門グループマネジャー)と一緒に私は、夏の暑い日に大手IT企業様の本社ビルをよく訪問していました。

東京湾岸の埋立地に近いエリアの地下鉄の駅から出ると、道のはるか先に大手IT企業様の本社ビルが見えます。駅からは徒歩10分強の距離のはずですが、夏の暑い日に歩いても歩いても近づかないお客様本社ビルは蜃気楼のように思えました。

この大手IT企業様は、2008年4月入社予定新入社員研修をゼロベースで見直されようとされていました。大きな営業チャンスに、私と中田さん、そして高橋浩一さんにも協力をしてもらいました。夜を徹して、中田さんと二人で分厚い提案資料を作り上げてプレゼンをし、結果として大きな受注を取ることができました(本編は10ページ程度に収めました。この時は参考資料が多くなったのです)。

中田さんは、前職で人材系の営業経験があり、アルー転職後もすぐにご活躍されました。
しかし新卒1期生の方々にとっては本当に大変だったかと思います。会社の営業の仕組みは整っていない無名のベンチャーであり、マネジャーであった私達も経験不足。ご負担をおかけしたことは本当に申し訳なく思っています・・・。


夏の終わりの日、高橋さん・Hさん・私の3名で、秋葉原のカフェに集まり、営業部の運営についての議論を交わしました。3名とも疲れ果てており、とても暗いトーンでの打ち合わせだったことを記憶しています。

前述のIT企業様のような大きな新規受注は幾つかはあったものの、営業部新体制立ち上げから半年を経て年間の営業部目標との乖離はあまりにも大きく、リカバリーは絶望的な状況でした。

当時私は経験不足でした。
人を採用してもすぐに成果はでないことは分かりつつも、もう少し早く成果が出るのではないかと甘い見立てをしていました。

高橋浩一さんの「勝ちの算段シート」を使っても、成果が出ない。

メンバーが悪いのではありません。
成果を出せる環境を整えられない、マネジメント側の責任です
しかしながら、どうすれば未経験メンバーが短期で活躍できるかについてはなかなか検討がつきませんでした。

今から考えれば、ビジネスパーソンの成長には一定の期間は当然必要となります。新卒社員であれば、独り立ちと言えるレベルになるまでには、2~3年掛かって普通です。社会人経験のある中途社員の方でも、早い方で半年、多くの方は1~1.5年程度の時間が掛かってしかるべきです。
もちろん会社として早期に活躍できる環境を整えて、その期間をなるべく短くする取組は必須です。

こうした成果を出せるまでの時間軸の見立ての誤りが、当時の私達を苦しめました。


⑤創業以来初の大赤字と回収までの期間

2007年12月末の締め会は、お通夜のようなムードでした。
資金調達をして、営業・開発体制を大幅に拡充して、一気に事業拡大を図った2007年でしたが、結果的には2006年とほぼ変わらない売上でした。
営業目標対比で50%を切っていました

一方で、組織は20~25人という増員がありました。マーケティング活動等にも投資をしました。渋谷新オフィスの費用負担もあります。

創業以来、私達は黒字を保ち続けてきましたが、2007年度は初の赤字となりました。しかもその赤字は約1億円という非常に大きなものでした。

組織の状態も良くありませんでした。暑い夏を耐え、秋を経て、冬になっても営業成果は実感できません。「できないこと」と向き合い続けることは、精神的に簡単なことではありません。ギスギスした雰囲気がありました。営業が成果を出しやすい環境作りもなかなか進んでいませんでした。

アルーは、まもなくミドル期に移行しようとしていました。
組織的に業績を上げることに取り組む必要がありました。


さて、上述のように2007年は約1億円という赤字でした。これを乗り越えることができたのは、前年に実施したエクイティでの資金調達のおかげでした。
当事者としては辛い状況でしたが、俯瞰して見れば、2007年の「足踏み」は成長のために必要であり、そのための資金調達です。

その後について記載をしますと、2008年度はそれまでの活動の成果が一気に出て、売上は170%近い成長を遂げ、利益も出る水準になりました。そして2009年度はさらに売上は伸長し、1億円以上の利益も出すことができました。

2007年、2008年、2009年の3年間で見れば、投資を回収できました。そして、その後の成長につながる組織、商品、顧客群を構築することができたのです。

成長のためには、投資が不可欠です。
重要な点としては、投資からどのくらいで回収できるかという見立てを正確にすることです。往々にして経営者が想定するよりもその期間は長くなりがちです。


本記事のまとめ

◆市場機会を掴むために「一気に投資をして、大きく成長する」ための投資をする
◆ビジネスパーソンの成長には一定の期間は当然必要となる
◆会社として早期に活躍できる環境を整えてその期間をなるべく短くする取組は必須
◆成長のためには、投資が不可欠。投資からどのくらいで回収できるかという見立てを正確にする。往々にして経営者が想定するよりもその期間は長くなりがちである


次の記事は・・・・

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