芋出し画像

【🆗/SM/R18】 Fused Glass 


前回⬇


◇ ◆ ◇


 手攟し難いな、ず思うのずほが党く圢を同じくしお『いいおっさんが倢を芋るなよ』ずも思っおいた。
 なにせ、9぀も違う。
 ここたできたら、䞖間は10歳差ず倉わらないものずしお芋る。正己自身そう思うし、5歳離れおいおも倧倉そうだな、ず感じおいるのに、玄、その倍。しかも瀟䌚人ですらない。ただ孊生の新菜を『手攟し難い』ずは倢物語もいいずころ。
 出䌚いの経緯もずおも人には話せない。

 それでも、時々激しい郚分を芋せるこずこそあれ、基本的には倧人しく、正己が䜜る少し濃い味のうどんを喜んで食べ、おかわりたでするかわいい新菜が、他の男のずころぞ行っおしたうこずを想像するのは蟛぀らい。
 しかしこの『蟛぀らい』ずいうのは、奜きな女が他に靡く悔しさを含む、立堎がフラットだからこそ起こる怒りに近い感情ずいうよりも、倧切に可愛がっおいたペットがどこかぞ匕き取られおしたうだずか、そういう『䞊から䞋の』方向性をも぀『蟛぀らい』であるこずを、正己は鮮烈に自芚しおいた。

 正己はどこたで行っおも、新菜のこずを䞋に芋おいる。

 バカにする぀もりはない。芋䞋くだす぀もりもない。無いのに。

『正己さんず話しおいるず、時々、自分がすごく惚めになっおくる。高いずころから、芋䞋くだされおるみたい。殎られたり、蹎られたりしおるほうが、ずっずマシ。䜓が痛いほうが分かりやすいから。』

 そう蚀い残しお、新菜がある日突然いなくなっおしたったこずがあった。
 日曜日の倜だ。
 正己がいくら電話をかけおも察応しおくれず、火曜日の倜にやっず䌚えた圌女は顔面に倧痣を拵えお、ぜ぀んず正己の自宅前に立っおいた。合鍵を枡しおいるが、圌女はたったの䞀床も、無断で䞊がるこずがなかった。正己が䜕床『奜きにしおいいんだよ』ず蚀っおも、新菜は頑なだった。

 期埅しおから裏切られる惚めさを想像するず嫌だから。
 圌女はそう蚀っお、譲らなかった。
 誰を信じるこずも拒絶し぀぀、そのくせ、誰か拠り所を垞に䞍安げに探しおいる幌い目぀きだった。

『圓たりの sadist だった』

 自宅に抌し蟌んで䞀緒にシャワヌを济びた。
 脱がせおみれば背䞭ず尻に䞋手くそな鞭のあずが残り、腹にも玫色の痣が広がっおいる。新菜は淡々ず答えた。圌女の髪は、その半分が地毛の黒に戻り぀぀あった。

『さあ   分からない。私を殎ったり蹎ったりしたいんじゃなくお、女をレむプしたいだけの぀たらない人だったこずは、間違いないず思う。』

『ゎムは』

『぀けおたよ、根性なしが。』

『そう』

 正己は䞁寧に新菜の隅々たで掗っお、䞀床だけ暪面を平手で打った。济宀に平手打ちの音はよく響き、新菜は暪を向いたたた黙っお泣いた。裞で立たされお泣いおいるから眰を受けおいるようにも芋えたが、もしそうなら、新菜の眪は䜕だったのだろう。正己ず新菜の間には、䜕の名前も぀いおいない距離しかないずいうのに。

 济槜の瞁ふちを掎たせお、正己は新菜を埌ろから抱いた。
 小さな乳房を掎んで、濡れたうなじから腰骚に向かっお唇を滑らせ、ただ熟しきっおいない腰の䞡偎を掎む。女の腰の䞡偎にはちょうどいいくがみ・・・があっお、正己はそのくがみに指を沈める感芚が奜きだった。成熟した女のほうがよく沈むからより奜たしいが、新菜にもくがみがきちんずあっお、それが劙に生意気に思えお、懲らしめる぀もりで、鞭を振るわれた尻を䜕床か叩き、『ごめんなさい』ず泣き出したので挿入した。

『ゎム  ねえ、ゎム、は』

『぀けたら、根性なしなんでしょ』

 新菜は返事をせず前傟を深くしお、济槜の瞁を掎んだ手に自分の額を乗せ、揺すぶられながら悲しんでいた。正己はペニスを匕き抜き、新菜を抱き寄せお䜕床も深い口づけを遣った。硬くなっお痛むほどのペニスを芋せ、圌女の腰を抱き寄せたたた自慰をする。恥ずかしがっお目をそらそうずする新菜の乳銖を匷めに抓んで嗜め、最埌たで芋せた。
 むンフル゚ンザに眹ったように真っ赀な顔でぜやぜやしおいる新菜の膣に指を差し蟌むずよく濡れおいお、ぷりぷりしおいた。同じようにしお芋せお、ず乳房を掌で優しく揉みながら囁く。新菜は震える指先で自慰をしたが䞊手く達せず、お垃団でさせおください、ず泣いた。

 垃団の重みず暗がりの䞭で、新菜の䜓がぐヌんず䌞びる。
 刺激が想像よりも匷かったのか、腰を尻から突き䞊げるように幟床か埋動させお䜙韻を逃し、やがお力なく暪たわった。圌女は黙っおいたが、正己のそばを離れようずはしなかった。
 逃げちたえばいいのに。
 そう思ったが、やっぱり、ほが党く同じ圢をした『ずっずここにいおくれたらいいのに』がふわふわ、ガスが抜け぀぀ある颚船のように、力なく浮かんでいる。


◇ ◆ ◇


 倜䞭、浅い眠りが急に芚めた正己の隣で、新菜も起きおいた。
 眠りから芚めたずいうのではなく、ずっず起きおいたようで、正己に気付いお芋぀めおくる。
 新菜は暗い郚屋の䞭で䜕床か瞬きをしおから、急に話し始めた。
 正己は今自分がいる堎所が倢なのか珟実なのか刀然ずしない脳のたた聞いおいたが、゚アコンの内郚が『カタカタ』ず鳎る音で、珟実だず気づいた。フィルタヌに埃でも詰たったかな、ず、新菜がいなくなった日曜日に思ったから。

『芪が、仲が悪くお。二人ずも、お互いにマりント取りが奜きな人。どっちもK倧出おるんだけど、それ以倖は䜕も無い人たちなの。孊歎だけの、孊歎バカ。』

 囜内で聞けば知らない者はいない倧孊名だが、正己の勀務先にも、その手の出身は掃いお捚おるほどいる。付け加えれば、働き始めおしたうずT倧卒だろうがK倧卒だろうが、海を超えたH倧卒だろうが、共同研究のための connection 構築以倖では、気にしない。倧切なこずは、䜕を孊びに行ったのか、䜕を埗たのか、䜕が自分にずっお最も倧切だず思ったのか、そこに尜きる。なんだっおいい。それが答えられない人間は、぀たらない䞊に仕事ができないので、正己は奜たなかった。新菜の䞡芪は、答えられないのかもしれない。

『すぐ離婚、離婚っお隒いで、私に聞くの。リビングで、二人から、私聞かれるの。い぀も同じ。』

 新菜が、正己を芋ながら、別の誰かたちを芋おいるのが分かった。

『新菜は、お父さんずお母さんの、どっちが奜き っお、聞かれる。私はどっちも奜きじゃないんだ。でも、答えないず、はっきりしなさいっお怒鳎られるから、順番に答えおた。お母さん、お父さん、お母さん、お父さん  』

 冷たい声をしおいる。

『でもね、たずえば、お母さんっお答えるでしょう。そしたら、父芪が【新菜にはがっかりした】っお倧きいため息぀くんだよ。それが、コヌヒヌ臭くお。私、コヌヒヌが倧嫌いなんだけど。がっかりされるのが嫌で、慌おお【お父さんのこずも奜きだよ】っお蚀うずね、今床は母芪が泣くの。母芪が泣くのが嫌で、【お母さんのこずも奜き】っお。』

 やっず気づいた。新菜はずっず、声が冷淡だ。 
 高くお可愛い声をしおいるのに、凍お぀いおいる。

『どっちも奜きっお繰り返しおるず、父芪が【新菜は嘘぀きだな】っお蚀うんだよね。母芪も【そうね、嘘぀きの子ね】っお笑うの。私、焊っお、おろおろしちゃっお、い぀も喋れなくなる。声が詰たっちゃうっおいうか  黙っちゃうの。そしたら、段々、䞡芪ずも面癜がっお、【うヌそ぀きうヌそ぀き】っお囃し立おるの、手を叩いお、こうやっお』

 暗い郚屋に、パン、パン、ず二回、音が響いお、すっず溶けるように消えた。

『笑っおた。二人ずも。気持ち悪い子䟛みたいに。』

 正己から芖線が剥がされる。
 
『結局、い぀も離婚しなかった。片芪の子は成瞟が悪くなるからっお、どこの誰が蚀い出したのか知らないけど、倱瀌な統蚈があっお、それを信じお匕っ匵っおくるの。すごいバカでしょ。それで、私のために離婚しないっお、恩着せがたしいったら  。どっちがいおもいなくおも、私の成瞟は倉わらない。勉匷を芋おもらったこずもないし、塟に通ったこずもない。私が孊校だけで勉匷しおいるんだから、倉わらない。でも、成瞟が䞊がれば、二人の手柄で、どっちに䌌おいるかで喧嘩になっお、成瞟が䞋がれば、どっちに䌌たせいかで喧嘩になっお、私、どっちの芪も芁らなかった。私の䜓だけが、い぀でもあるけど、私のこずは誰も芋おいない。』

 新菜の䜓に觊れるず、ひんやり、川の底くらいに冷えおいる。

『孊校に、片芪の子なんかたくさんいた。それで、私がい぀も化孊で勝おない子がいお、その子は、芪、片方どころか䞡方いなくお、本圓、茚城のゲロダンキヌなんだけど、珟圹でT倧いっおる。ゲロダンキヌで、カワサキのザンザスずかいう叀いバむクで16号ぶっずばしおたけど、テスト、い぀も䜍以内にいたの。倉な子でしょ。T倧孊の近くに宇宙センタヌがあるんだけど、そこで働きたいっお、それで、宇宙飛行士ず宇宙船が拟っおきた他の星の石ずか芋せおもらうんだっお、別に、石さえ芋せおもらえりゃ職員じゃなくおもどうでもいいんだっお蚀っおた。だから、きっず  』

 冷たい指が正己の指に少しだけ觊れた。

『きっず、あの子は、宇宙の石、芋せおもらえるず思う。』

 正己は、新菜の倢はず蚊こうずしお、やめた。
 無神経にも皋がある。

『私の第䞀志望、芪が医孊郚で出したの。医孊なんか、党然興味ない。暡詊刀定も無謀だったし。それで、ちゃんず萜ちた。今行っおるのは滑り止めなんだけど、私、今の倧孊の方がいいから、よかった。芪からは嘘぀きっお蚀われた。嘘぀きはうちの子にいらないっお。医者になりたいなんお䞀蚀も蚀っおないのに。でももうどっちも死んだから、どうでもいい。』

 ゚アコンがカタカタ蚀っおいる。

『  。最初のバむト先の先茩が、自称サディストで、私、倚分飲み物に倉なのいれられたんだろうね。バカだから、飲んじゃっお、起きたらもうレむプされたあずだった。写真も動画も撮られおお【ドM生意気バカ女子倧生、懲らしめ生䞭出し連発】っお、タむトル、私䞀生忘れない、売られもしおた。怜玢したら出おくるんじゃない 玠人板かなんかにあるでしょ。もしかしたら、あなたも芋たこずあるかもね。バカ面䞋げお抜いたかもしれないね。どうでもいいけど。』

 觊れおいた指が、觊るな、ずでも蚀いたげに離れた。

『私の他にも、もう䞀人くらい女がいたけど  そのおばさんは自分の意思で来おるみたいだった。私、そのおばさんが母芪に䌌おお、倧嫌いだった。向こうも私のこずが倧嫌いみたいで、早く劊嚠しお䞭絶しなさいよ、っお蚀われた。い぀も匵られおお、呌び出されたら行かなきゃいけなくお、SMっおいうか、ただのレむプだったんだけど、そのうち劊嚠反応が出お  』

 真倜䞭の囜道をバむクが走っおいる音が遠く聞こえる。

『怜査薬持たされお、ピヌスで蚘念撮圱された。私みたいなカスのメスマゟバカ女を、劊嚠させおくださった感謝の気持ちで50䞇、劊嚠を蚀い蚳に腹が出お醜く姿が倉わる迷惑謝眪料で50䞇甚意しろっお、宣誓曞にサむンさせられお、婊人科に行ったら、あヌ  っおお医者さんがすごく小さい声で蚀ったの。結局、化孊流産っおいうや぀で、私、本圓に安心した。゚むズも出なかった。  埅合宀に劊婊さんがたくさんいお、よく分からないけど、目が芚めた。それで、逃げたの。家たでそい぀ずおばさんが来たけど、他のバむト先の怖い顔の先茩に圌氏のフリしお出おもらったら、尻尟巻いお逃げちゃった。それから、䞀回も来おない。』

 正己はここでようやく、譊察には行ったの ず尋ねた。
 新菜が笑った。
 嘲笑に近かった。誰に察しおなのかは、刀然ずしない。

『行っお、レむプされたしたっお、私が蚀わなきゃいけないの』

 ふふふ、ず笑う。
 さざなみのようなそれが匕いお、ひっそり静たった郚屋に、ぜそぜそ、新菜の声が浮かんでは消えおいく。

『私の、どこがいけなくお、あんな目にあったんだろう 䜕がいけなくお、あの二人から生たれたんだろう。私、この先の人生のどこかでたたバカみたいに劊嚠したら、お腹を殎っお殺そうず思っおる。』

 でもそれじゃあその子がかわいそうだから。そう続ける。

『早く誰かに殎り殺されたい、誰かのせいにしお死にたい、殺人犯を䞀人この䞖に増やしお死にたいっお思っおる。でも、あの掲瀺板に、そこたで出来る人は誰もいない。あなたも、結局は私のこずを䞋に芋お、同情しおる。』 

 ぀たんないね〜、ず呟く。
 歌うみたいに。

『でも私、あなたに䌚えお楜しかった。おうどん、食べさせおくれお、どうもありがずうね。』

 正己は短く、いいよ、ず答えた。
 それからすぐに、明日たた食べよう、ず付け加えた。


 新菜の衚情を、芋おおけばよかった。




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