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バンド 【完結】

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2022年7月の記事一覧

【小説】 ジレンマ。

 アキちゃんのソロライブ。ここが彼女が輝く最高のステージなのかもしれない。私の心には、す…

井川文文
2年前
4

【小説】 「死」という言葉。

 アキちゃんのソロライブは大盛況で幕が閉じた。1時間という短いライブは、観客の気持ちをさ…

井川文文
2年前
6

【小説】 アキちゃんの「ラララ」

 もしかしたらリオンくんは、人よりも音楽の方が好きなのかもしれない。  彼の横顔を見てい…

井川文文
2年前
17

【小説】 アキちゃんのソロライブ。

 座席に着くと同時に客電が落ちていく。一階は全てスタンド席、二階のバルコニー席の一部に座…

井川文文
2年前
2

【小説】 少しだけ、俯瞰する。

「みんな、来てくれてありがとう!」  アキちゃんは、朗らかな顔をしていた。 「緊張してる…

井川文文
2年前
3

【小説】 嫉妬が生む創作。

 身体を動かすと不思議と力が抜けていく。考えたくても、思考できない。ただ音に意識が引っ張…

井川文文
2年前
5

【小説】 心のドラムを鳴らす時。

 烈しい紅葉のような色合いの夕日に、私は確かに恐ろしいモノを感じていた。それはバンドの活動が止まっているという孤独や不安がもたらした、とも言えるが、たぶん、違う。黙々と音楽を作る日々の中で何度も頭に思い浮かんだのは、アキちゃんとリオンくんの顔だった。リオンくんと付き合ってからというもの、暗澹たる感情に襲われることが増えていた。夕暮れから夜にかけて胸がハラハラするのだ。満月に暴れ出す狼男が抱えるような恐怖が、自分の身体の中にあった。  アキちゃんは私たちの関係を知らずに、いま

【小説】 固まる心。

 バンド活動が止まっている間、私は曲を作り続ける日々を送った。一日中家にこもり、食事もそ…

井川文文
2年前
9

【小説】 束の間の休憩。

 マキコちゃんの受験日が迫り、さすがのマネージャーも仕事を詰め込むことはできなかったらし…

井川文文
2年前
2

【小説】 恋愛模様。

———リオンくんはアキちゃんのことが好きなんだと思ってた。  私の言葉に、リオンくんの目…

井川文文
2年前
6

【小説】 見えない糸の、ほつれ。

 身体が緩んでいくリオンくんと違って、私の身体はドンドン硬直していった。カタカタと小さく…

井川文文
2年前
3

【小説】 2度目の告白。

「ヒロナは、ピアノが好き?」  リオンくんの目の中に、自分の不細工な顔が見えた。不安そう…

井川文文
2年前
4

【小説】 目が合った。

 カレー屋さんに入った。別によく行く店でもない。たまたま見つけた看板に「テレビで紹介され…

井川文文
2年前
15

【小説】 雨のラカンパネラ。

 どうしてリオンくんが、私と一緒にいてくれるのかが分からなかった。一度、告白してるのに。私はフラれたはずなのに、何も変わらず接してくれる。二歳も年下のクセに、お兄さんみたいな顔をして、メールをしたり、こうして会ってくれる理由が分からなかった。  リオンくんは私に恋はしていないけど、私のことは好きなんだと思ってた。でも、もしかしたら、私がリオンくんを好きみたいに、彼も少しは好きなのかな。好きって言葉が頭の中をいっぱいにしてる。  黒のロングコートで現れた森口リオンは、やけに大