【小説】 心のドラムを鳴らす時。
烈しい紅葉のような色合いの夕日に、私は確かに恐ろしいモノを感じていた。それはバンドの活動が止まっているという孤独や不安がもたらした、とも言えるが、たぶん、違う。黙々と音楽を作る日々の中で何度も頭に思い浮かんだのは、アキちゃんとリオンくんの顔だった。リオンくんと付き合ってからというもの、暗澹たる感情に襲われることが増えていた。夕暮れから夜にかけて胸がハラハラするのだ。満月に暴れ出す狼男が抱えるような恐怖が、自分の身体の中にあった。
アキちゃんは私たちの関係を知らずに、いま