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バンド 【完結】

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2022年5月の記事一覧

【小説】 開幕が近づく。

 北海道。宮城。東京。愛知。大阪。福岡。各地、1日ずつのライブが始まった。これを音楽の世…

井川文文
2年前
4

【小説】 自分にかける言葉。

「よく変われば、いいこと。自分がいいと思えば、いいこと」  カラッとしたミウの言葉は、私…

井川文文
2年前
7

【小説】 ビギナーズラック

 ビギナーズラック・・・初心者が往々にして得る幸運。  人生というゲームの上でも、ビギナ…

井川文文
2年前
4

【小説】 休憩

 休憩に入った。スタジオの扉が開き、外の空気が流れ込む。生ぬるい風が頬を撫でたが、それで…

井川文文
2年前
6

【小説】 聖域

 ドラムを叩く。  それから曲を作る。歌詞を書いて、メロディを入力する。鼻歌で作って、キ…

井川文文
2年前
12

【小説】 リハーサル

 全国ツアーに向けて本格的なリハーサルが始まった。  最低10曲、主要都市では15〜20曲を披…

井川文文
2年前
6

【小説】 難しいなぁ

 家に帰ると、すぐにドラムセットの前に座った。ラバーに覆われたハイハットをポンと叩く。音はしない。そりゃそうだ。電源も入れてないし、ヘッドホンもしてないんだから。スネアを叩いても、ペダルを踏み込んでも、シンバルを強めに叩いても、ゴムが跳ね返す鈍い音がするだけ。虚しい。  アキちゃんとリオンくんの顔が頭に浮かぶ。コマ撮りアニメみたいにカタカタ動きながらナニカを話してる。二人とも幸せそうに、いくつもの困難を乗り越えたような顔をしている。音楽を奏でる理由を尋ねたら、きっと二人とも

【小説】 恋バナ

 「アキちゃんって、リオンくんのこと好きなの?」と聞くと、アキちゃんは緊張したように耳を…

井川文文
2年前
7

【小説】 恋の匂い

 アキちゃんはリオンくんに恋してる。  それが分かったのは、彼が発表会のお礼にとセッティ…

井川文文
2年前
3

【小説】 確信へ

 アキちゃんとリオンくんは、ずっとスポットライトの中にいた。実際に光が当たっていたわけで…

井川文文
2年前
5

【小説】 恋に気づく瞬間。

 リオンの拍手をスタジオの壁が吸収した。  それでも彼は拍手を続けた。  大人がするみたい…

井川文文
2年前
3

【小説】 聴いてくれるだけで、変わる。

 練習で何度も聴いてるはずなのに、自分が作った曲のはずなのに、リオンくんがキーボードを鳴…

井川文文
2年前
3

【小説】 華やぐスタジオ

 ミウのピアノ指導を理由に、森口リオンをスタジオに召喚した。  召喚という言葉がぴったり…

井川文文
2年前
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【小説】 宇宙の法則

 新曲の初リハーサル。  スタジオには、キーボードが置かれている。  今までのバンドになかった新たな試み。  和気藹々と喋る空気の中に、小骨が喉に刺さっているような緊張感があった。  ミウがキーボードの前に座り、アキちゃんは太い弦が4本しかないベースを構えている。それぞれの立ち位置は変わっていないのに、居心地が悪い。 「じゃあ、合わせる感じで!」  ドラムスティックでカウントを取ると、アキちゃんの歌が始まる。追いかけるようにピアノの和音がリズムを刻むように跳ねる。その後、