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「設計事務所」にも種類がある

最近いくつかのプロジェクトを通して、改めて気づかされたことがある。

それは「設計事務所」にもいくつか種類があるということだ。
そしてなぜか、
家のつくり方がまるで違うのに、同じ「設計事務所」と名乗っているのだ。

もちろん、ボンヤリとわかってはいたつもりだけど、一般の人からするとそれらの違いはよく分からない。というか全くわからないみたい。だけど並べて比較すると、「建築家の設計事務所」は依頼する上で最も不安材料が多いように映るようだ。実際どう違って、どんなメリットデメリットがあるのか?

家づくりをする設計事務所には大きく分けて3種類ある。
1、建築家が経営する設計事務所
2、工事がメインの施工会社(工務店)の中にある設計部署
3、ハウスメーカーのような規格住宅の設計部門
(以降この3つを1,設計事務所、2、工務店、3ハウスメーカーとして話を進めていきます。)

1、家の値段(見積)のタイミングの違い

よく聞くのが、「土地を購入する前、設計の契約をする前に予算で建てられるかを確約する見積が欲しい」、という話だ。ハウスメーカーでは契約前にプランと見積が出てきて、「このプランがこの値段でできます」ってでてくる。世の中の大概の買い物は「これがこの値段で買えます」ってシステムだから当然、家もそうだと考えられている。

ところが、設計事務所のうち、
「1、建築家が経営する設計事務所」ではこの見積が出せない。

なぜか?

ハウスメーカーや工務店はあらかじめ基本仕様が決まっており、自社で施工を行うため、一棟毎に詳細な設計図面を描くことなく見積が出せる。しかし設計事務所は、その住宅に合わせたプランやつくり方、特注品やデザインに配慮した材料を使い、高い施工精度を求め、施工を行う工務店に指示するための図面を、ゼロから一棟毎に描かなければならない。そしてその図面ができて初めて施工者さんに見積りを出してもらえる。

だから、そもそも考え方やつくり方がまるで違うし、プランを提案した段階で見積を提示して、この値段でできますなんて話は到底できないのである。

ここまで読んでいただくと、やっぱり建築家の設計事務所は、不確定要素が多いしなんか不安、と思われるだろう。

でもここからがちょっと違う。

上述したハウスメーカーや工務店は、つくり方や仕様が決まっているから、仕上げや設備の選択肢が限定的で、それゆえ費用の微調整がしづらい。
その上、契約の段階では都合よく、目立たないものを「別途工事」にしているのでいざ始まったら、それは追加、オプションなのでコストアップです!となり、進んでいくうちにどんどん工事金額が膨れ上がっていく。
その上担当の設計者は、追加やオプションで工事金額をUPさせると自分にボーナスが入ったりするのでやたらとオプションを進めてきたりするのだ。

その点設計事務所は一つ一つ予算と相談しながら、設備や仕様を決めていくので全体の予算に対しての微調整が容易で、全体のデザインをコントロールしながら進めていくことができる。選択肢は無限にあるので、お金が許せば高いグレードのものを使えるし、こだわりのないところはグレードをぐっと落として節約もできるのだ。

つまり設計事務所は早い段階で仕様や設備の確約ができない分、「これしかできません」と妥協することなく、予算に対して柔軟で、調整もしやすく、思い通りにできる、ということになる。

2、プランに対する姿勢の違い

ハウスメーカーや工務店は、実際進めていく中で、親身になって間取りを考えてくれない。というのをよく聞く。

考えてみれば当たり前だ。ハウスメーカーや工務店は「設計料」を取らず(現実には見積に混ぜて撮っているところもあるかもですが、)工事で設けている。なのでプランや間取りは右から左で、極端な話クライアントの言いなりなんてのも少なくないのです。たまに相談を受けてプランを拝見しますが、中にはなぜこうなっちゃったの?と目をふさぎたくなるようなものも少なくありません。(もちろん全部がそうというわけではありません。)

その点、建築家は、暮らしぶりや、将来のことまでクライアントと一緒に悩み考えて間取をつくっていきます。これでいいや、などと妥協することなく、クライアントにとって何がベストかを突き詰めています。お打合せには時間がかかりますが、模型やCGなども多用して進めるので、イメージしやすく、想像を超えてワクワクするような家をつくることができるのです。

3、設計者と施工者が別

建築家の設計事務所はハウスメーカーや工務店と違い、自社で施工(工事)ができない。クライアントとやり取りして図面を書き、その図面で建物をつくってくれる施工者を探すのだ。

ハウスメーカーや工務店のように、設計者と施工者が同じ会社だと、意地悪な言い方をすると、会社の利益を考えて、変更したほうがもっとよくなるけどコストが上がって儲けが減るからやめとこう、みたいなことがあるかもしれない。

だけど、設計者と施工者が別であれば、設計者は建物良くすることだけに専念できて、施工者が図面通りつくらず、ずるしたり、サボっていたら厳しくチェックできる。どれだけ頑張っても決められた設計料以上の費用はもらえないけれど、出来上がったものが良いものになれば、クライアントに喜んでもらえるし、次の仕事につながるかもしれない。そういう気持ちで、建物に愛をもって取り組んでくれる。もちろん、ハウスメーカーや工務店さんがそうでないとは言わないけれど、間違いなく建築家の熱量の方が大きく、出来上がりを見てみると、その差はことのほか大きいと僕は思います。

実際ご一緒したクライアントの方には、この意味が良くわかると言っていただくのだが、これから家を、建物をつくろうという方にはまだまだ理解いただくのが難しい。

建物が好き、とか、ワクワクするような新しい家に住みたい、とか、予算はそんなにないけどデザインされた家に住みたい、とか、、、
そんな方々が妥協せず、理想の家づくりができるように、そのお手伝いができるように、しっかりと家づくりのパートナー選びができるように、
もっと建築をわかりやすく、身近に感じてもらえるように、日々いそしんでいるわけです。

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