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KEYTALKファン歴三年目にして気づいた、ロックバンドのワンマンライブに行くべき理由〜ZeppTokyoでサシ飲みしよう〜

■フェスはビュッフェ、ワンマンは専門店

日本全国津々浦々、ひっそりと健全に勤労に励みながらも、心は既にムロフェスの出演バンドの発表に囚われている邦ロック勢の皆さん、こんばんは。

突然ですが、皆さんは行ってますか?ワンマンライブ。


先に述べたようなムロフェスやロッキンなど、ここ数年で音楽業界での存在感を示し始めた、いわゆる“音楽フェス”。

バックドロップシンデレラも「ニッポンのライブ集客はさぁ 何年か前から増えてるんだって/けどライブハウスじゃない フェスで増えてるだけ」と歌う程のフェス全盛時代、流石の引きこもり系邦ロックオタの僕でも、そろそろ何処かのフェスに行きたいなあと目論んでいる程だが、そこでひとつ問題が浮上している。

「音楽ファンのワンマンライブ離れ」だ。

フェスには色々なバンドやミュージシャンが出演する。たとえ目当てのバンドが数組しか出演していなかったとしても、今まで聴いた事がなかった、家でCDやサブスクやYouTubeで音楽を楽しんでいるだけでは見つけられなかった、新しい音楽を知るきっかけになるのがフェスだ。目当てのバンドが出演していない時間帯に何となく覗いたステージで運命の出会いを果たすかもしれない。それは僕にも理解出来る。とても素敵な現象だと思う。

しかし、フェスを愛好する音楽ファンの中には、「同じバンドのワンマンライブに何回も行くとかwww何が楽しいのwww」「なんも変わることなんてないじゃん、つまんないでしょwww」と言うような態度をとってくる輩もいるのが事実だ。
別に僕は音楽フェスやその愛好者に親を殺されたとかバンドマンのカレシを殺されたとか一生イヤホンのLとRを間違え続ける呪いをかけられたとかではないのだが、そのような輩の心無い言葉に悲しい思いをした事がある邦ロック勢が多かれ少なかれ存在している、と言う事実が許せないので今回筆を執った次第である。

新しいバンドを知りたい。生でその演奏を観たい。その気持ちは非常にわかる。「音もだち」とグッズのフェイスタオル掲げて記念撮影したり、フェス飯食ってウェイウェイしたい気持ちも百歩譲って理解しよう。大事だもんね、思い出作り。

だけれど、それだけでは満足できない、ワンマンライブに行くひとにも言い分はあるのだ。


例えるなら、フェスは“ビュッフェ形式”、そしてワンマンライブは“専門店”なのである。

色々なバンドが出演してチケットさえ確保出来ればどのバンドのどのパフォーマンスを幾ら観ても自由なフェスは、少量を少しずつつまみ食いするには向いているがそこで楽しめるのはそのバンドやミュージシャンの真の醍醐味ではない。彼等の真の姿を最大限に堪能出来るのは、1メニュー真剣勝負の“専門店”だ。

フェス=“ブュッフェ”で好みのメニューを見つけたら、“専門店”たるワンマンライブに是非足を運んで頂きたい。それも、一度行ってしまったなら一度だけでは済まないのが専門店だ。何故なら、定期的に新しいメニューの追加や味の改良が行われるからだ。

好きなラーメン屋に新メニューが追加されたり、好きなドーナツ屋に季節限定メニューが出たりしたら一度はチェックするもんだろう。行ったら行ったでついついいつもと同じ味の醤油とんこつラーメンもやし追加を注文してしまったり、いつもと同じ味のオリジナルグレーズドをテイクアウトしてしまったりしたとしても、そこに後悔するヤツなんかいなかろう。

僕達のような、ワンマンライブを愛する邦ロックオタは、そのような心持ちでいつもワンマンライブに足しげく通っているのだ。

■「お決まり」の安心感と、それを手ずからぶっ壊された時の衝撃にハマる

日頃よりこのnoteなどで僕の文章を読んでくださっている読者諸兄諸姉はご存知の事と思うが、僕はロックバンド・KEYTALK(キートーク)のビッグファンである。

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多分僕みたいな底辺邦ロックオタライターの文章を読んでくださるような方々なら、フェスで大人気歌って踊って泣ける実力派男性ツインボーカルロックバンドKEYTALKの事はよくご存知だろうと思うので、ここでは紹介は割愛させて頂く。

ともあれ、僕はファン歴としては三年目ぐらいになる。リスナーとしては四年以上になるが、ライブに通い始めるぐらいの追っかけ野郎になってからはそれぐらい、と言う感じだ。

この三年の間に途方もない回数KEYTALKのライブに行ったと思う。根が引きこもりなのでバリバリ遠征してツアー全通!!!とかでは決してないが、人生で一番ライブに行っている自信がある中田裕二氏とプラスティックトゥリーに次いで多いバンドが、KEYTALKである。少なくとも年に二回、ツアーの度に一公演は行っている。ツアーやイベントなどが多ければそれだけ参戦回数も多くなるわけで、一昨年だかは四回行った。ワンシーズンに一回KEYTALKのライブに行っている。春夏秋冬KEYTALK、文字通りゆりかごから墓場までKEYTALKの勢いだ。


流石にこれだけ通うと、彼等ならではのお決まりのパターンが見えてくる。

例えば、アンコールで演奏される、いわゆる“定番曲”。邦ロック好きならご存知の方も少なくないであろう、圧倒的キラーチューン『MONSTER DANCE』だ。


KEYTALKのファンはこの曲のイントロのギターのデーンデーンデデーンデーンデデー♪まで聴かないうちに無意識のうちに上下に揺れ始めるし、サビに差し掛かると一斉に両手を上げて振り付けを踊り出す習性がある。
気になる振り付けはこのMVを観て頂ければよくお分かりかと思うが、実際のライブでのオーディエンスは突然ブレイクダンス始めるようなヤツもいないし、リフト始める輩もいないし、なんなら僕がファンになってからはモッシュピットがライブハウスに爆誕した瞬間すら拝んだ事ない程なので界隈でも群を抜いて安全・安心なライブと言って過言じゃないだろう。ただめっちゃ踊る。狂ったように踊る。それがKEYTALK勢の世界のセオリーだ。

更に、MCでのお決まりのコールアンドレスポンス。

ギター小野武正a.k.aたけまさ氏がツイッターなどでもよく口にする謎の呪文「ぺーい」や、ドラム八木ちゃんこと八木優樹氏が写真撮影などの際にオーディエンスに求める「アス」など、キャッチー且つ意味不明なフレーズが非常に多い。
「アス」に関してはご本人から「持ちネタ」とのアナウンスがある程なのでそういう扱いなんだと思うが、反論覚悟で言うと正直ネタと言う程面白くはない。

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(※「アス」の図。可愛い)

アスなんか完全に界隈でも指折りの甘いマスクの持ち主である八木氏のチャームだけで成り立っているネタである。大して面白くないどころか我々がワンマンライブ行く度にこの応酬を求められる意味すらちょっとよくわからないのだが、だからこそのおかしみみたいなものが回を重ねるごとに湧き上がってくるから不思議だ。
「青信号は渡る」「赤信号は止まる」「『ぺーい』と言われたら『ぺーい』と返す」、みたいな。

また、僕の目にはKEYTALKのライブは戯画的な側面が強く見えるように思え、その点も良い意味での「お決まり感」に拍車をかけているように思える。

メンバー全員のキャラ立ちが良く、更に全員が作詞作曲者として活動している点から「四人全員がフロントマン」「漫画のキャラクターみたい」と言われる事が少なくない彼等だが、その中でも「主人公っぽい」と言われるのがギターボーカル・寺中“巨匠”友将氏である。

僕が個人的に一番“主人公感”を覚えるのは、ライブのキラーチューン『太陽系リフレイン』を披露する度に高確率で繰り出される“バスドラジャンプ”を目撃する瞬間だ。
(パズドラじゃないよ!!!バスドラムの上に上り、飛び降りるアレである)

2015年の武道館でのバスドラジャンプなんか、飛んだ瞬間にワイヤーで吊り上げられて天井からぶらーんってぶら下がったものね。アレを「宙を舞った」と言い表して良いものか正直未だに迷うが、正直めちゃめちゃカッコよかった。

それと、昨年十月に開催された、NHKホールでの初めてのホールライブの一幕。演奏も中盤で徐にマイクをひっ掴み、
「もうホールとか関係ない、ここをちっちゃい、ちっちゃいライブハウスに変えてやる!!!ロック魂、見せつけてやりますから!!!」
と叫び始めた時は流石の僕も思わず天を仰ぎ両手を合わせたね。伊達に“巨匠”なんてキャッチーで豪勢な渾名つけられてないぜ、この漢(オトコ)。

さて、しかしながら実は僕が一番楽しみにしているのは、彼の相方であるベースボーカル首藤義勝さんである。

女子ファンの間では異常な人気を集め、メインコンポーザーでありながら物静かで一見目立たないタイプの量産型赤髪マッシュの彼。

ぱっと見正直「よくいるバンドマン」なのだけれど、だまされたと思って一度ライブでその目に焼き付けてほしい。決して大柄ではなくスタイルも良いとは言えないひとだが、顔が小さくすらっとしたその佇まいは、ライブハウスの舞台の上で目にすると絶世の美男子通り越してフェアリーじゃないかって勢いで美しく見えるのだ。

僕はあの義勝さんの佇まいの美しさを表現する言葉を未だに見つけられないままで、もしかしたら音楽物書きとしての一生の課題かもしれない、と思う程である。

彼の美しさ、そして女子ファンから何故根強い支持を集めているのかは、やはりライブで、特にワンマンライブで拝まない限りわからないものだろうと思う。


(どうだい、僕のお薦めはこの、シモテ三列目ぐらいまで拝める左斜め下から舐めるようなアングルだ。美しかろう美しかろう、“マーチンのローファーで踏まれたいベースボーカルNo.1”の称号を与えたい立ち姿。)

そんな、「少年漫画の主人公とそのクールな相棒(且つライバル)」といった感じの好対照なツインボーカルが見せる戯画的な佇まいは、誤解を恐れずに言うとある種記号的であり、キャラクターとして誇張されているようにも見える。

そこに“お決まり”のパターンが相まみえると、なんだか不思議と安心感があるように思えてくるのだ。安心して観ていられる、ジャンプ系マンガ原作のアニメ映画みたいな。うん、何言ってんのかよくわかんないな。


ともあれ、当然ながら彼等は生きている生身の人間であり、バンドマンである。勿論良い意味で、我々ファンのイメージや期待をぶち壊してくる時だってある。

僕だって、マンネリを起こす程お決まりパターンが見えてくるバンドのワンマンライブに通い続けているのは、何も安心感だけを求めているわけではない。

寧ろ、それが“ぶち壊される瞬間”を求めて足しげく通っている、と言う側面の方が大きいかもしれない。

KEYTALKの場合、昨年初めて開催された幕張メッセでの公演で、本編でもアンコールでも『MONSTER DANCE』が一切披露されなかった時の衝撃が一番大きかったかもしれない。

カーテンコールまで終わり舞台は暗転してすっかり終演ムード、今回はもしかして『MONSTER~』はやらないのか……?とオーディエンスの誰もが思ったであろう次の瞬間、なんと最後の一曲としてサプライズ的に披露されたのだ。

舞台の上部に配置された大スクリーンに大映しにされた義勝さんが、今まで見た事ない程の勇ましい笑顔を浮かべて啖呵を切った。

「この曲やんなきゃ終われねえ!!!」

それと同時に舞台の上に再びライトが当たり、勢いよくあのイントロが始まったのだった。

この時の義勝さんの啖呵は、今までなら多分“主人公”であるところの巨匠が担っていたであろう役割だった。もしかしたら熱烈な“義勝勢”たる僕ぐらいしかそれ程の衝撃を受けていなかった可能性すらあるけれど、個人的には今まで見てきたKEYTALKのライブ演出で一番の衝撃だったと言っても過言ではなかった。一体彼等にどんな心境の変化があったんだ……。

ともあれ、“お決まりの安心感”とそれを“ぶち壊される瞬間”が入り混じる特異な感覚が、僕にとってはワンマンライブの最大の魅力だったりする。いつものヤツで甘やかされていたところに、突然予測不可能な要素をぶち込まれるアレだ。飴と鞭ってヤツだ。これ、つくづく巧みな人心掌握演出テクニックだと思う。中毒性が高く、本当にニクイ。殆どDVカレシのやつじゃないかこれ。好き(完全にキマッた顔)。

■ワンマンライブはロックバンドと言う“心の友”とサシ飲み出来る場所

音楽ファンとして決してフェアなスタンスとは言えないが、ここまで読んでくださった方ならなんとなく察して頂けるかもしれない。僕が、ただただ単純に“音楽だけ”を愛せるタイプのオタクではない事を。

音楽だけを純粋に愛好する気持ちは勿論あるが、あまりに良い音楽に出会ってしまうと、一体こんな曲を作っているひと達とはどんなひと達なのだろうと、その人となりにとても興味が湧いてしまう。

普段どんな事を考えて生きているのか、どんな音楽を好んできたのか、メンバー同士の関係性はどんな感じなのか。

音楽雑誌やWebメディアのインタビューでも勿論いいけれど、ある種権威のある存在に聞き出され引き出されたそのひとの姿だけじゃ、物足りなくて頭を抱えてしまう。

もっと滅菌されていない、ありのままそのままのお前等の事が知りたいんだよおれは!!!!!!

フェスではやっぱり一見さんもたくさん来るから、どうしてもよそ行きと言うか、猫をかぶったり誇張したり、どうしてもそのひと達のそのままの個性は発揮しきれていないもんじゃないかと思う。一見さんでも楽しめるように、バンド自体も攻め方を変えるものだろう、なんてったってプロのエンターテイナーなのだから。

初めて一緒に飲みに行く上司や取引先のひとのいる飲み会で、そうそう無礼講にはなれないのと同じだ。

でも、ワンマンライブは違う。一見さんもそりゃいるだろうが、そもそもが「そのバンドにしかまず興味がない」奴等が集まっている前提の空間だからだ。ロックバンド側からしても、“魅せ方”がフェスとは違ってくると思う。たとえMCなどで言葉を使って伝えようとしなかったとしても、よりパーソナルな面を見せてくれようとするんじゃないかと思う。

いわばワンマンライブは「ロックバンドとサシ飲み出来る」場所なのだ。

フェスは勿論、インタビューやSNSでも見えてこない表情を、これでもかと見せてくれるのが、ワンマンライブなのである。

■結局好きなのは「ロック」よりも「ロックバンド」なのかもしれない

KEYTALKのみならず、ロックバンドには知られざる“お決まり”がある。

Plastic Treeの知る人ぞ知るキラーチューン『メランコリック』でのヘドバン大会、GOOD ON THE REELのあの狂おしく薄暗い作風からは想像もつかない、ボーカル千野隆尋氏の熱血MC、LACCO TOWERのボーカル松川ケイスケ氏が大体舞台に裸足で現れるアレや、「サンキュー!」周辺の応酬……。

成程、こうやって書いてみると意味が伝わらん。完全に細かすぎて伝わらない邦ロック24時という感じのやつなので気になるものがあったらお近くの知ってそうな邦ロックオタかイガラシまでお知らせください。

ともあれ、そんな感じの“お決まり”に出会い、それを楽しめた瞬間、自分は本当にこのバンドの構築した“世界”の住人になれたのだ、と思うし、更にそれをぶち壊される瞬間に遭遇する度にエンドルフィンが脳髄をたまらなく迸る。その感覚を求めて、僕はロックバンドのワンマンライブに通っているのだろうと思う。

よりそのバンドのパーソナルな面をナマで観たいと言う欲求もあり、そこに立脚するといわゆる“お決まり”をぶち壊そうと思ったその時の心情の変化を想像するのも楽しいな、と思う。何故今回のライブはこのセトリにしたのだろう?いつもこの曲はアンコール専門なのに、なんで中盤に持ってきたんだろう?だとか、ね。

どれもこれも全て、結局僕が「ロック音楽」だけでなく、「ロックバンド」そのものに憧れ、愛好してしまうタイプのオタクだからなのだろう。

ロックバンドの音楽だけを愛しているのでは飽き足らず、この素敵な音楽を作っているひと達の事をもっと、もっと知りたい!!!と思ってしまう。

音楽だけを純粋に愛しているひとからしたら「音楽ライターを名乗る者のくせにけしからん!!!邪道だ!!!そこに直れ!!!!!!」とお叱りを受けるかもだが、上等である。笑いたい奴には笑わせておけばいい、いばらのみち上等である。椿屋四重奏である。


もしもこの広い邦ロック沼の、僕の棲む同じ沼底に、この文章に共感してくれるひとがいたなら。そして、もしもフェスでしか目にした事がないけれど素敵だと思うバンドがいたなら。その時には、是非ワンマンライブに行ってみてほしいと思う。

ロックバンドと言う心の友と差し向いに向き合い、歓声と音色と言う盃を交わし合って、一度じっくりと語り合ってみようじゃないか。


あー!!!ライブ行きたくなってきたーーー!!!!!!


イガラシ


※11月某日追記

現在LINE MUSIC公式様で募集中の「 #いまから推しのアーティスト語らせて 」企画に参加するために、タグなど少々手を加えました!スキの数なども選考に影響してくるらしいので皆さん是非広めてください~!!!(サークルモッシュ土下座)

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