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CMに私を殺された気がした


高校生の時、私はポカリスエットのCMが大嫌いだった。


高校生のみんなが歌を歌いながら、校舎で汗を流して踊り狂っているCM。

あのCMは、一度見ただけで強烈なインパクトを与えてきた。


高校生の私はあのCMの何がそんなに嫌だったのだろう。


私は自称進学校とも言われる中高一貫校で、部活と勉強に一生懸命だった。

おまけに女子校で、色恋沙汰なんて無縁。

来る日も来る日も頭の中は

部活での人間関係や自分の成績のことでいっぱい。

そんな目の前のことで精一杯で、自分が描いていた青春とは全く違う。


それなのに、CMというメディアは


高校生=青春!

男女で汗を流して、今という時を楽しむ!!


そんなことを押し付けてきている気がしてたまらなかった。


大人に勝手に決められている気がして、もどかしかった。

私はこんなに毎日悩んでいるのに、

苦しいけど、将来のためにこんなに勉強しているのに、

あのCMのせいで

「高校生の悩みなんてちっぽけなものだよ、それも青春だね」

そういう「青春」という一言で勝手に括られる気がして苦しかった。


あのCMを作っている大人たちが、

世間に対して「高校生は今日も楽しんでいます!」って勝手に

お知らせして、イメージを植え付けているみたいで、

自分というアイデンティティを勝手にあのCMに殺された気がして

悔しくて悔しくてたまらなかった。


このCMを見た色んな世代の人が「今時の高校生はこんな感じなのか」

そう思ったらどうしてくれるの

勝手なこと言わないでよ、無責任なことしないでよ

当時、皮肉にもコピーライターを夢見ていた私には

CMが植え付ける世間へのイメージの重さ、大きさを思い知った。


大学三年生になった今、改めてあのCMをYoutubeで見てみた。

正直何も思わなかった。

でも、あの時の苦しさは鮮明に思い出せる。

青春って何だったんだろう。

あの苦しさはどうすれば助けてあげられたのだろう。


あのCMを作った大人に会いたい。

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