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これからの 大人のこもりうた

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こもりうたを [赤ちゃんを寝かしつける時に愛情たっぷりに歌われてきた癒しの歌] だと思ってきた1児の母が、現実の寝かしつけを知り「世界の寝かしつけがそんなに穏やかなはずがない」と…
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記事一覧

#8 こもりうたは人類のぶっちゃけ音楽だった①

「歌われざるものを歌う場所」 「悪魔を追い払う呪文」 「鬱憤をはらす労働歌」... 私の中のこもりうたの世界が、ぽつぽつと本音をこぼし始めてきました。 この「本音」は、大変価値のあるものです。 こもりうたは、もっと見直されるべき。そして、今の時代に必要な「何か」になる。その確信について数回に分けてお話したいと思います。 今回の記事では、こもりうたの深みを知って得た気づきについて。 それどころじゃない、と思っていた産後独身時代からこもりうたに疑いをかけていた私(笑)。 と

#7 こもりうたは労働歌だった?②

前回は、こもりうたの起源が労働歌であったお話をご紹介しました。特に日本では、子守奉公に雇われた少女が、労働としての子守で歌ってきた背景があったから、辛い歌詞もたくさん出てくるんですね… 今回は具体例をいくつかご紹介します。 嘆きのこもりうた五木のこもりうた 世界的に有名な「五木のこもりうた」は、その代表格です。 伝承者により歌詞が複数ありますが、例えば、このような歌詞があります。 自分は貧しく、あの人たちは良い装いをしているといった趣旨の歌詞です。 子どもに聞かせると

#6 こもりうたは労働歌だった?①

こもりうたの英語である"Lullaby"の語源には「あやし、そばにいる」というハートフルなものから、「子どもを奪う悪魔リリスから護るお守り」といった、子どもへの愛情を感じる様々な説が見受けられました。 しかし、親になった今、正直に思うのは「綺麗事すぎやしないか?」ということ(笑) 初回では「こもりうたは辛い寝かしつけの捌け口であった」見解をご紹介しましたが、その通り、世界のこもりうたには実は寝かしつけの過酷さ、つらい気持ちの吐露が存分に見て取れるのです。 今回は、中でも日

#5 魔除けの呪文だった? Lullaby -ララバイ- の語源の話②-2

前回のお話では、Lullabyの語源のちょっと怖い説をご紹介。 今回は、これまでお話してきた2つの語源説を踏まえて感じたことをお話します。 こもりうたは「おまもり」2つの語源説で感じたこと 1つ目の説は「なだめ、そばにいる」、 2つ目の説は「リリスよ、去れ」。 どちらも仮説であり、正しさを争うものではありませんが、今回調査をして気づいたことが一つ。 生きる時代も宗教も違う私の親心が、何度も何度もうずき「うん、うん」と頷きながら調べ進めていたこと。 「そばにいるからね

#4 魔除けの呪文だった? Lullaby -ララバイ- の語源の話②-1

前回までは、こもりうたの英語"Lullaby"の由来Lulla(なだめる)+by(そばにいる)である説についてご紹介しました。「ラララ」と歌う音から来ているのかも?という、ほのぼのしたお話でした。 今回は、一変して悪霊が登場する、別の説をご紹介します。 悪霊リリスから子どもを守るあくまで民間語源(ある語の由来について、言語学的な根拠がないもの)という前提ではありますが、さまざまな文献でこのような由来が支持されています。 リリスはアダム最初の妻とされ、アダムとリリスの交わり

#3 世界は「ララ」であやしてきた? 語源の話①-3

前回は、ララバイの「ララ」が多くの言語で「なだめる」という意味であることが、歌うときの「ラララ」と関係してるのでは…という持論を述べました。(うちの息子はララでは寝なかったことも…笑) 今回はララバイの「バイ」に募る疑念、そして語源の別の説の話を少しだけ… 都合のよすぎる"by"以前ご紹介した通り、"by"は「そばにいる」「〜によって」等の意味をもつあの"by"が語源とのこと。 なだめる+そばにいる、本当に綺麗な語源ですよね。 そう、まるで当て字のような….ここで少し疑い

#2 世界は「ララ」であやしてきた? 語源の話①-2

前回、子守歌の英語である"Lullaby"「ララバイ」の語源についてご紹介しました。「ララ」はなだめる、「バイ」は傍にいる。そんな素敵な語源でした。 さて、「ララ」についてもう少し深堀りしてみると、更に面白いことが分かってきました。 あの言語もこの言語も「ララ」は似た意味なかなか他で出会う機会がないlullですが、英語以外にも、近い発音が「なだめる」「寝るために歌う」という意味になっています。 フィンランド語には歌うことを意味する"laulaa<ラウラ>"、ヒリガイノン語で

#1 世界は「ララ」であやしてきた? 語源の話①-1

こもりうたは、英語で"Lullaby"や"Cradle Song"と言います。 後者は直訳すると「ゆりかごの歌」。では、Lullabyはどこからきたのでしょう。その世界を知るには、まずは言葉から。 まずは諸説あるうちの一説についてお話しします。 なだめ、そばにいる第一有力説は中世英語 Lullen + by 比較的新しい辞書によると、Lullabyの語源はこのように説明されています。 中世英語のlullen(ラレン)。英語のlull(ラル)という単語の語源で、「なだめる