我が家の夏の風物詩〜田舎暮らし40年①〜
平成19年の夏、多治見と熊谷の両市で40.9度を記録し、たちまち世間の人をあっと言わせました。
この日、仕事の行き帰りに熊谷の神社の境内を通ったところ、数えられぬほどの蝉の骸(むくろ)が落ちていました。
これを見て、私は思わず「40度蝉の骸の数知れず」と川柳を詠んだことを覚えています。
以来、熊谷は日本で一番暑い市として全国に知られるようになりました。
私は、熊谷の隣接市である深谷に住んでいるので、熊谷の高温は、自分の市の問題として受け止めました。
熊谷の40度を経験して、夏の高温を柔げるために私がまず考えたのは、庭の緑化です。
緑化といっても樹を植えることではなく、棚を作り糸瓜を這わせることを思いつきました。
その頃から、周辺は「緑のカーテン」と称して苦瓜を這わせることが主流でしたが、私は苦瓜ではなく糸瓜を選んだのです。
糸瓜は葉が大きく、棚の上には数えきれないほどの黄金色の花を咲かせ、棚の下に涼しげな緑陰を作ってくれます。夜が明けると、花蜜を求めて大きな熊ん蜂が飛んできます。
やがて糸瓜は大きくて長い実ができますが、糸瓜の実の、風に揺れる姿は見ていても風情があります。
私の古里沖縄では、糸瓜のことを「ナーベラー」と呼んでおり、これを食用にしております。
糸瓜を食べるというと、知人・友人はびっくりするのですが、沖縄では、糸瓜は苦瓜とともに家庭料理の食材として広く多くの人に食されております。
私は棚の糸瓜を収穫して女房に糸瓜料理を作ってもらい、夏の間中、これに舌鼓を打っております。
また、糸瓜はお役目が終わりに近づくと、根元の蔓を切って糸瓜水を取ることができます。
糸瓜水は、江戸時代大奥でも愛用されていたとのことであり、又民間療法では咳・痰・利尿の目的でも利用されていたようです。正岡子規も「痰切り」として常用していたことが俳句でも詠われています。
このように、糸瓜は緑のカーテンにも適していますし、実(み)は食用にもできて美味しいのです。何よりも糸瓜はその大きな葉で二酸化炭素を吸収し、酸素を供給して温室効果作用を薄めてくれています。その上、糸瓜水は女性の化粧用や民間療法と、糸瓜は一石四鳥といった働きをしてくれるのです。
糸瓜の多様な効用に思いを馳せながら、私はこれからも地球温暖化への小さな取り組みとして、夏毎に庭の棚に糸瓜を這わせ続けていきたいと思っております。
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