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あをによし奈良の都の昼下がり

安倍元総理銃撃される


 コロナが猖獗(しょうけつ)を極める中で、平凡な生活が見直されています。「今日もまたかくてありけり」「明日もまたかくてありなん」(千曲川抒情歌)と藤村もうたったように変わり映えのしない日々が過ぎていくのです。

 そんな中で政治の世界では時折、突発的な事件が出来することがあります。政治の世界は「一寸先は闇」と言われていますが、なるほどとうなづけるのです。

 奈良県で去る78日、参院選の応援演説中だった安倍晋三元総理が銃撃されるという痛ましい事件が発生しました。

 安倍元総理は、8年余の間総理の職にあり、総理を辞めた後も自民党の最大派閥の長でキングメーカーとして辣腕をふるっていた御仁であるから、安倍元総理を悼む声は国の内外で蜿蜿(えんえん)と続いているのです。

 安倍元総理を銃撃したのは、元自衛官で無職の山上徹也容疑者で、即日逮捕され、連日取調べを受けています。
 マスコミの報道によると、山上容疑者は取調べに対し、母親による宗教団体である旧統一教会への多額の献金で生活が破綻し、同教会に恨みがあったと述べ、安倍元総理と同教会のつながりを疑い銃撃をしたと見られます。

 参院選で自公の両党で過半数を上回る議席を得たことで気を良くしたのか、岸田文雄首相は安倍元総理をこの秋国葬をもって送ると言明しています。
 安倍元総理ほど、国民の支持・不支持や好き嫌いがはっきり分かれる政治家は珍しいのです。
 追悼は故人の縁者や追慕する者が中心に取り行うのが最も望ましいのです。
 国民に弔意を強制するような国葬を、国会の審議を経ずに多額の税金を投入して強行することは、憲法の保障する内心に踏み込むことになり、追悼・非追悼で国民を分断することになり、行く末が心配です。

国葬の是非

 岸田文雄首相が安倍元総理の葬儀を国葬で9月に行うという政府方針を発表しました。亡くなった安倍元総理を偲び、国民一人一人が哀悼の意を表明することには何の異議もありませんが、国葬にするということには疑問があります。

 国葬令(※国葬を行う根拠として、戦前には「国葬令」があり、皇族がその対象であり、皇族のほか、日露戦争を指揮した東郷平八郎元帥や太平洋戦争で戦死した連合艦隊長官山本五十六らが対象になりました。)は戦後、日本国憲法の制定の際に失効しており、根拠法もないまま公費が使われる国葬は許されないと思います。

 岸田首相は国葬の理由を「卓越したリーダーシップと実行力」「東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を残された。」としており、安倍元総理の功績を絶賛しています。

 しかしながら、これはあまりにも一面的な評価です。安倍元総理は憲法9条改悪の旗を振り、歴代政府の憲法解釈を覆して集団的自衛権の行使容認の閣議決定をして安保法制を強行するなど、戦争をする国づくりを進めてきました。

 また安倍元総理は、森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題で嘘の答弁を118回も繰り返しております。

 国葬はそんな安倍元総理の生前の政治姿勢に向き合わず蓋をしてしまうことになってしまうのではないでしょうか。

 岸田首相に強く申し上げたいのです。
 安倍元総理は自民党の元総裁でもあったわけですし、安倍元総理の追悼は自民党葬でやってもらいたいのです。
 自民党葬で安倍元総理を偲び、追悼したい方々に自由に参列して貰えば、国葬でなくとも故人に相応しい葬儀が挙行されるのではないでしょうか。
 ぜひ岸田首相の英断をもって、国葬は止めていただき、自民党葬をもって挙行していただきたいのです。

那須 乃木神社


追悼と神社

 日本国内には、約12万余の神社があります。
 神社には、お稲荷様、八幡様、天神様など様々の神様がおりますが、その中で私の目を引くのが軍神です。

 明治時代、国家神道のもとで神社が政治的役割を担わされるようになり、政府にとって都合の良い国民の手本とすべき人物を選び出し、その人物を神として祀るようになりました。

 軍神として祀られた最初の人物が、日露戦争の時、旅順攻めの決死隊で指揮を執り、敵弾に倒れた広瀬武夫中佐でした。
 軍神に昇格した故広瀬中佐は、大分県竹田市に広瀬神社が建立されました。

 次に、同じく日露戦争の日本海海戦で、ロシア海軍を破った東郷平八郎、旅順要塞を落とした乃木希典の二人が軍神とされ、東郷神社、乃木神社がそれぞれ建立されています。
  終戦による軍部の解体により、戦後、軍神を祀る神社は見られなくなりました。

 このように、戦前の日本は、英雄的な働きをした軍人を軍神として、その軍人の名前を冠した神社が建立されてきました。

 幸にして、戦後政治家が神として祀られることは聞きませんが、復古調の色あいが強い今日、アベノミクスで一世を風靡した安倍元総理を慕って安倍神社が作られたりはしないか、と心配しております。
 安倍神社の建立などは全くの杞憂に終わってほしいのです。

那須 乃木神社

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