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望まれた手紙 #手書きnoteを書こう
だいすーけさんの企画 #手書きnoteを書こう 参加作品です。
五分程度で読める短編です。
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陽子より、と署名した文字が滲んでいる。
こんな手紙に、何の意味があるというのだろう。
俺はため息を吐いて、書斎の机に手紙を投げ出した。ついでに背もたれに体重を預け、足も投げ出してみる。気持ちは一つも晴れなかった。
妻が家を出てから、もう二年が経つ。
一人娘の志津子は三年前に嫁ぎ、一泊の旅行でで会いに行くのには難しいような遠くで暮らしている。
俺が父親の役目を終えて一息ついた頃、妻は母親ではなく妻としての役目を終えたと感じたらしく、すぐに離婚を切り出された。
これまでの結婚生活でそうしていたように、俺は妻の言葉に耳を貸さなかった。他人に打ち明けることではないが、俺は人並み以上の稼ぎがある。将来の心配は何もなかった。
それが俺の驕りだった。
妻は俺の態度が精神的に苦痛で仕方がなく、貴方が応じずとも自分は離婚した心積もりでいると言った。
その言葉を最後に、妻は忽然と姿を消した。いや、正しくは少しずつ減っていく妻の荷物を、俺が見ないふりしていただけだけれど。
少し前に訪れた白馬では、妻と文通をしていた松永の奥さんにきつく叱られた。なぜこうなるまで気が付かなかったのか、自業自得だと責め立てられているのを、松永が執りなしてくれた。
俺は奥さんの言葉を胸に突き刺しながら、ただ聞いていることしかできない。彼女もまた、妻とは一切の連絡が取れなくなったらしい。どこをどう探しても、手掛かりすら見つからなかった。
妻はよく手紙を書く人だった。
お祝い事や悲報への返事、知人への近況報告など、何かにつけては手紙を書きたがった。もちろん俺にも、結婚記念日には欠かさず白い便箋を寄越した。
それに返事をしたことはないし、人生の中で手紙を書いたのもたったの一度だ。そのくらい筆不精な俺をよく怒らなかったものだと思うけれど、単に愛想を尽かされていただけだと、今なら分かる。
せめて一度でも結婚記念日に、又はなんでもない日常の中に手紙を持ち込めたなら、違う結果が待っていただろうか。
そんな女々しいことを考えるほど、俺は弱っている。
しかし妻は出て行った。それだけが俺に残された結果だ。
いつも妻が片付けてくれていた書斎から、彼女のお気に入りの便箋を見つけた。懐かしく眺めたところで、妻からの言葉は浮かび上がってこない。
あぁ、こんなことをして何になる。
彼女がもう一度チャンスをくれたら、それが無理ならせめてもう一度手紙をくれたら。
自分の望む手紙を自分の手で書いたところで、そこには馬鹿な男の都合の良い夢が羅列されるばかりだ。
いい加減諦めなくてはならない。机に投げ出された手紙を一枚摘み、くしゃくしゃに丸める。
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いかがだったでしょうか?
手書きが活きる作品を…!と思って書いたのですが、趣向を凝らすというのは難しいですね。
手書きの文字にも、あまり自信ありません。ボールペン字講座とか習ってみたい。あと習字とか。
そういえば昔の友人に、何も習ったことないけど完璧な楷書を書く天才少女がいました。羨ましい、私も「走り書きでごめーん」とか言いながら綺麗な字を書いてみたい。
手書きの文字って、自分が書く分には色々バレてしまったちょっと恥ずかしいけど、人の手書きの文字を見るのは楽しいし面白い。みんなこんな気持ちなのかしら。
改めて企画をしてくださっただいすーけさんに感謝を✳︎
作品を閲覧していただき、ありがとうございました! サポートしていただいた分は活動費、もしくはチョコレート買います。