シェア
ココンコココッコ、コンコンッ。 軽やかな明るいノックに乗って、彼の感情が伝わってくる。 …
金曜日の夜なのに、私の電話はうんともすんともいわない。明かりををつける気にもなれずに、薄…
暗いトンネルの中に、俺の息づかいと足音とそして奴の足音がすぐ後ろに聞こえてくる。 「須藤…
ふっと、魂で眠るように、その人は目をつむった。ほのかにお酒臭い吐息が、鼻にかかる。青白…
青年がひとり流れ着いた場所は無人島でした。 「ここはどこだ……」 目を覚ました青年は…
ーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーー あとがき 親愛なる読者の皆様へ 著者の天津…
夢の中で兄は小説家になった。自分の本業のお菓子屋の店舗の前において少しずつファンが付き、実際に書籍化までされたのである。 その売り方がすごかった。まず、お菓子を求めて買いに来るお客と、その小説を求めてやってくるお客は完璧に棲み分けされていた。お菓子を買いに来る人の手は、男女ともに細く、マニキュアを塗っている手など一つもなく、清潔感が染み付いたような白い白い手だった。逆に、小説を手に取るひとの手は浅黒かったり、大きな深い傷跡があったり、派手なネイルが指から3cm以上せりだして