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片想いのmusic(第4話)


24 祭りの跡

長い一夜が明け、四人が再び会ったのは、翌日の14時過ぎ。
文化祭翌日は、全日片付け日となっている。生徒は10時に登校してくる。
クラスの片づけを終え、軽音楽部の面々が部室に集合したのがその時間だった。
その1時間前。1年2組の一角。

「お疲れ。」

一通りの片づけを終え、一人窓際に立って空を見ていた健吾に、美沙子が声をかける。

「おう。」

窓の外から美沙子の方へ体を回転させる。

「昨日はあれからどうしたの?」

上目使いでイヤらしく健吾の顔をのぞく。

「タコ。それは俺のセリフじゃねぇのか?」
「あたしが先に聞いたんだから、あんたが先に答えなさいよ。」
「俺が何を答えるってんだ。」

再び空を見る健吾。

「どーせ熱くなっちゃったりしたんでしょ?昔みたいに…」
「もういっぺん言ったらキレるぞ、って前に言わなかったか?」

目線は空のまま、目付きだけ鋭くなる。

「…はいはい。すいませんね。」

窓に背をつけ、体重をあずける美沙子。

「まぁ…俺らは何も変わっちゃいねぇよ。」

空から目線を下に落とす。
前庭には片付けた後の大きなゴミの山が置かれていた。
その近くで仕分けをしているのは実行委員だろうか。

「また何も言わないのね。人の事は聞くくせに。」
「るせぇな。おまえはどうだったんだよ。」

ゴミの山から美女へ視線を移す。

「あたし?あたしは別に…」

美沙子の視線が自分の足元へ落ちる。

「そうか。それじゃあ中村に直接聞くからいいや。」

顔が急回転し、大きく開かれた目で健吾を見る。

「え?!ちょっと、何言ってんのよ!何もなかったんだから!」

健吾の制服の袖を荒く引く。

「それなら聞いたって良いだろ?」
「え…うーん…」
「ホント単純だよな、おまえ。」

美沙子の手首を握り、自分の制服から手を離させる。

「でも…ホントに何もなかったんだから。」
「どこ行ったんだよ。」
「中村君…ち。」
「は?あいつんちまで行ったのか?そりゃあ決まりじゃねぇか。」
「え、別にそういう意味で行ったんじゃないの!」
「どーせ家に誰もいなくて、部屋に案内されてぇ…」
「違うもん。妹さんがいたんだもん。」
「あいつ妹いたのか。」
「うん。スゴク可愛かった。あんまり似てなかったけど。」
「ふーん。で?」
「え…えっと…家行って、ご飯食べて…帰ったよ。」
「いや、今ご飯と帰るのの間に何かあったな。」
「何もないわよ。」
「んー…部屋行って?で、おまえの事だから、何かぶちかましたな?」
「ちょっと!何言ってんのよ!」

美沙子の平手が走る。が、華麗にかわす健吾。

「図星か。そぉか、妹がいる中で…」
「違う!何もしてない!何も…」
「…言ったんだろ?」
「…言ったよ。わるい?」
「それで?」
「それで…って…別に…」


「ほぉ…なかなか大胆な事するなぁ。」
窓辺に座る健吾。下を向いて自分の制服をイジっている美沙子。
「仕方ないじゃない。どうしたい、って聞かれたら…キスしか思いつかなかったんだもん。でも…」
「拒否られた…か。」
「拒否って言うか…」

 

「待て。」

目を閉じて顔を近づける美沙子の肩をつかむ中村。

「えっ…」

思わず目を開ける。

「俺は他人と口つけたくらいでどうにかなる人間じゃない。そんな事するくらいなら言葉で言え。」
「言葉で…?」
「勝手に俺の答えを決めるなよ。」
「どういう事?」
「これでおまえの事止めなかったら俺の答えは必要なくなるんだろ?」
「…そうだね。…ごめん。」

美沙子の体が引く。そのまま元の位置に座る。

「別に俺はおまえの事嫌いじゃない。だが、いきなり言われたって好きになれるか。」

美沙子は何も言わずに下を見ている。

「俺はおまえにどうしたいんだ、と聞いた。そしたらおまえはキスをせまった。」
「せまった、って…」

顔を上げる美沙子。

「違うか?」
「…ううん。」

再び下を向いてしまう。

「俺が聞いたのはそんな事じゃない。おまえはこの場で俺の唇触れりゃそれで満足か?それなら別に構わんがな。」

美沙子の胸が一つ鳴った。

「私は…中村君と一緒にいたい。二人の時間たくさん欲しい。一緒にどこか行きたい。一緒にご飯食べたい。二人で…」
「最初からそう言え。」
「え…」
「嫌いではないと言ったろ。どっか行くくらいは構わん。飯食うくらい構わん。と言ってるんだ。」
「本当に?」
「別に好きになったわけじゃない。」
「そっか…うん。でもいいよ。そのうち中村君を私の虜にしてあげるわ。」

満面の笑みで中村を見る。
中村の表情は何も変わっていない。

「おまえの虜になる気はないな。」
「じゃあ、私があなたの虜になる。」
「奴隷を持つ気はない。」
「一人くらいいても荷物にはならないよ。」
「考えておこう。」

 

「相変わらずわかんねぇ野郎だな。あいつも。」
笑い声をあげる健吾。
「笑い事じゃない!」
ほほを膨らませる美沙子。
「ま、いいんじゃねぇか?一つ進展があったんだろ?」
「進展って言うのかな?」
「だってこれで堂々と二人で手つないで帰れるわけだろ。」
「そんな!そんな事したら中村君何て言うか…」
「いいじゃねぇかよ。おまえは今あいつを虜にしなきゃらなねぇんだろ?」
「そうだけど…逆になったら嫌じゃん。」
「馬鹿。男なんてな、単純なもんなんだよ。ちょっと甘い事言って、ちょっと体貸してやりゃ一発…」

美沙子の左手が動く。
健吾の右頬がいい音を奏でる。

「ってぇな!」
「あんたはそーゆー発想しかできないの?」
「あー、悪かったね、陳腐な脳みそで。」
「ったく、こんな奴のどこがいいんだか…」
「あ?」
「別に。」

美沙子は窓を手で押し、その反動と共に教室の真ん中でかたまって話している女子集団の所へ歩いて行った。
健吾は、近くを歩いた男子生徒を捕まえ、1週間ほど前にTVで観たプロレスの技をかける。

25 聖夜に向けて

10月の文化祭が終わると、中間テストの期間がすぐにやってくる。
それと共に、制服の厚さが日増しに厚くなっていく。
少し前までは日差しをさえぎっていた校庭の木々の葉もすっかり落ち、家の電気代が上がる季節がやってきた。
北海道では雪が1メートルを越えてつもっているとか。
毎年のように雪を待つ子供達。
風が肌を凍らせる。それでも、女子高生の足が隠れる事はない。

「おまえらの根性も大したもんだよな。」
先月教室に設置されたストーブに背を当て、美沙子の足を眺める健吾。
「そうよ。男とは気合いが違うのよ。」

恋人達を近づける季節。そんな歌の一節があった。
吐く息は白く、人の温もりが恋しくなる。
それと同時にやってくるのは、聖夜という名のイベント。
この季節になると、カップルの数が増えるらしい。
形はいろいろあれど、一度二人で聖なる夜を過ごしてしまうと、もう一人で過ごすのが辛くなってしまうのだとか。
この城浜第一高等学校にも、そんな波が訪れているようだ。

「しかしもうクリスマスとか言う時期なんだなぁ。」
「その前に期末試験という、ビックイベントがあるけどな。」
「あぁ…それを言うな…」
「俺は今回完璧だからよ。」
「マジかよぉ…俺全然ダメ。何も手ぇつかない。」
「ま、お互い生きてクリスマスを迎えようじゃねぇか。」
「そうだな。」 

ありがとう今年、ようこそ来年、試験お疲れクリスマスライブ。

軽音楽部内では恒例になっている長い題名のライブが、毎年12月24日に行われる。
今年は終業式と同じ日のため、多くの生徒が参加すると思われる。
昨年は日曜だったにも関わらずクリスマスを一人で過ごすくらいなら、と参加生徒は多かった。
このライブの後に少数人数でどこかへ行く、というのも恒例行事となっているようだ。
ちなみに、学校の体育館ではなく、近くにある市民センターを使って行われるため、近くの住民も多く参加する。
文化祭のライブ並に力を入れているのは言うまでもないであろう。
いや、音響、照明設備はこちらの方が格段に良いため、盛り上がりも並ではない。

市民センター大ホール。
収容人数は1000人を超える大きなスペースである。
ある程度大きな劇団や、クラシックのコンサートなども使う事がある。
公共施設という事で、使用料が安いというのが人気の理由でもある。
クリスマスライブはボランティア活動という事で、使用料も、入場料も無料になっている。
そのため、参加するバンドの数も少なくはない。
城浜高校の軽音楽部から、地域のコーラスグループ、プロのダンスグループやクラシック演奏もある。
ただ、参加するお客さんの年齢層が、圧倒的に若い人が多いため、それに合わせたタイムテーブルになっている。

軽音楽部は、一番長い時間枠をもらっている。
その時間に合わせて会場に来る若者も毎年多い。

しかし…

「おまえ、本気で言ってんのかよ?」
「当たり前じゃないの。」

軽音楽部室の一角。
楽譜をたたんで自分のカバンに入れている美沙子の横に、肩から銀色のエレキギターをかけた健吾が立っている。

「なんで彼氏持ちの私が、寂しい人達のために貴重な夜を潰さなきゃならないの?」
「ちょっと待てよ。おまえがいなきゃどうやってバンドやるんだよ。」
「だから、他の人と組めば良いじゃない。」
「あと1週間だぞ?今からどうやって合わせ…待てよ?」
「え?」
「まさか中村も出さない気じゃねぇだろうな?」
「なに当たり前の事聞いてんのよ。私一人でどこ行けっての?」
「冗談きついな。」
「別に冗談じゃないわよ。だってあれはあくまでボランティア活動でしょ?なら別にいいじゃない。」
「待てって。もう参加登録しちまったんだぞ?今さら…」
「だから、他の人入れてやれば良いじゃない!私に押し付けないでよ!」

勢いよくカバンを閉じて、立ちあがる美沙子。
眉毛のつり上がった表情で健吾を見る。

「わかったわかった。おまえは音楽よりてめぇの幸せなんだな。」
「ちょっと待ってよ。それが普通じゃないの?」
「そうですよ。それが普通ですよ。じゃあな。てめぇはてめぇで勝手に熱い夜でも過ごせや。」

体を回転させ、香澄のところへ歩いて行く健吾。

何よ…いいじゃない。一日くらい…

「やはり怒られたか。」
「ヒドくない?私だってそりゃバンドやりたいけどさ、一日くらい…ねぇ。」
「まぁ、坂本が怒るのも無理はないだろう。」

小雨が降りしきる中、中村の傘に二人で入って歩く。
雨のせいにして、いつもよりも二人の間の距離を短くしてみる。
傘を持つ中村の右腕にすがる美沙子。

「止せ。歩きにくい。」
「いいじゃない。雨の日くらい。あのさぁ…」

いつものように、美沙子から話し始める。中村は所々口を挟むだけ。
でも、もうそれも慣れた。
聞いてくれてないわけじゃないんだし。

「ねぇ、クリスマスどうしようか?」
「任せる。」
「いつもそれじゃん。こういうイベントの日くらい男らしく何かないの?」
「だから、俺はイベ…」
「イベントには興味はない、でしょ。」
「わかってるなら聞くな。」
「だって…」

美沙子の頭が中村の右腕に触れる。

「カバン濡れてないか?」

美沙子の右腕にかかる学生カバンの色がいくぶん変色していた。

「これくらいは大丈夫よ。」
「楽譜入ってるんだろ?」
「もう。中村君まで音楽?」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫。ちゃんと袋に入ってるから。」
「そうか。」
「まったく。どうしてあたしの周りには音楽バカしかいないのかしら。」
「悪かったな。」
「あ、ううん。まぁ、私もその一人なんだけどさ。」

 

「どうする?」
「どうしよっか。」

部室の一角で話す健吾と香澄。

「でもあの二人が出れないんじゃどうしようもないね。」
「そうだけどよ…」
「いいんじゃない?二人でも。」
「そうもいかねぇだろ。」
「…あ。」
手元でいじっていたピックを見て何か思いついた香澄。
「ん?」
「私の友達連れてこようか?」
「友達?」
「うん。ほら、あたしが中学ん時に組んでたバンドのメンバー。」
「ああ、ああ。って、いくらなんでもそこまで巻き込むわけいかねぇだろ。」
「大丈夫よ。彼ら音楽大好き人間だから。」
「しかしなぁ…」
「とりあえず今日頼んでみるね。」
「あ、ああ。」
ピックを握りしめて立ちあがる香澄。
その足で自分のカバンを掴み、健吾に軽く手を振り、部室を出る。

「…ったくよ…」

26 臨時メンバー

『ありがとうございました。それではいよいよ、城浜高等学校の軽音楽部による演奏です。城浜高等学校軽音楽部の皆さん。よろしくお願いします。』

会場中から拍手が起こる。

『こんばんは!』

ステージの右袖から半分黒くなった茶色の髪の美男子が出てくる。
会場の一部から黄色い声援が飛ぶ。

『今日はクリスマスだというのにこれだけの人が集まるなんて、寂しいもんですね。』

会場が笑いに包まれる。

『まぁ、いろんな想いでここへ来た人がいると思いますが、しばらくの間。僕達の音楽を楽しんでください。』

健吾がお辞儀をすると、会場に音楽が流れ出す。
一曲目の演奏が終わると、会場のテンションは最高潮へ昇った。

『それじゃあ今回皆さんに演奏させていただくバンドのメンバーを紹介します。』

拍手がいったんおさまる。

『ギター、香澄!』
香澄が手を挙げ、お辞儀をすると、会場のテンションが再び上がった。
『ベース、愛!』
健吾の右隣でギターを持つ黒いショートヘアの女の子が手を挙げお辞儀をする。
『ドラム、純子!』
ドラムの音が会場に響き、音が止まると赤毛のロングヘアーの女の子がスティックを持って姿を見せた。
『そしてボーカルは健吾!』
学校の体育館とは比べ物にならいほどのテンションに包まれる。

『それじゃあもう一曲いくぜ!』

午後7時に始まった軽音ライブは、11時まで続いた。
11時からは一転して、しんみりとクリスマスソングを流す。
その雰囲気に酔いしれる人がほとんどで、席を立つ人はいない。

その頃の楽屋。

「いやー、助かったよ。ありがとう。」
汗だくになった健吾が二人の女の子と握手をする。
「そんな事ないよ。私達もすごい楽しかったし。ね。」
黒いショートヘアの女の子が赤毛の娘に視線を送る。
「うん。できればうちのバンドに入ってほしいくらいだわ。」
赤毛のロングヘアの娘は足を組んで椅子に座っている。
「でもビックリした。マジ上手いんだな。」
飲み物を片手に香澄に聞く健吾。
「だから言ったじゃない。全然信じてくれないんだもん。」
「なになに?」
二人の間に割って入る黒髪の女の子。
「あたしがね、愛と純を紹介した後さ、あの二人大丈夫なの?って聞いてきたのよ?」
「おいおい、大丈夫なの?なんて言ってねぇだろ!ただ、どれくらいやってる人なのか聞いただけじゃねぇか!」
「あらまぁ。で、納得していただけたかしら?」
純と呼ばれた赤髪の娘が身を乗り出す。
「十分ですよ。恐れ入りました。」
「よかったぁ。」
愛と呼ばれた黒髪の娘が椅子に座る。
「でも驚いた。まさか女の子だなんてな。」
「あたし言わなかったっけ?」
「言ってねぇよ。いきなりこんな綺麗な娘連れて来られて驚いたよ。」
「綺麗な娘」に反応したらしく、愛と純が立ちあがる。
「そんな、綺麗だなんて…」
「私もまさかこんなカッコイイボーカルのために弾けるなんて思ってもみなかったわ…」
「あんまりそういう事言わない方がいいわよ。この人調子に乗るから。」
立ちあがった二人に代わって香澄が椅子に座る。
「なんか三人揃うとどれが香澄だかわかんなくなるな。」
「あら、どういう意味?」
三人とも反応する。
「あ、いや、みんな活発だし、綺麗だし、良い娘だから…」
「だまされてるわ。」
香澄が立ちあがる。
「この二人はね、普段はもっと…」
「あら、それを言うなら香澄だってそうじゃない。」
「そうよ。坂本君が来てからみょーに態度が変わってないかしら?」
「はぁ?ちょっと…」
「ねぇ、絶対変わってる。」
「なに言ってんの!それ言うなら愛だってさっきと態度全然違うじゃないの!」
「私は普段からこうだもん。」
「何言ってるのよ。昨日なんか…」
「あー!それは言わない約束でしょ!」

しばらく美女三人の口論が続いた。

「ほら、こうやって文字だけだとどれが誰だか全然わからなくなる。」
いつのまにか座っていた健吾がツッコミを入れる。
「それもそうね。」

「ねえ、坂本君。」

愛が健吾に声をかける。
「あ、健吾で良いよ。俺も愛と純で呼ぶから。」
「じゃあ、健吾?」
「何?」
「真面目な話さぁ、私達と一緒にやらない?」
「え?」
「そうだよ。やろうよ。」
純も参戦してくる。
「何?なんで突然?」
「私達さ、元々五人でやってたんだけど、二人も抜けちゃって。今はこの三人だけなの。」
「そうなんだ。」
「でもね、私達はやりたいの。まだバンドやってたいのよ。だから、坂本…健吾が入ってくれれば、またバンドできるのよ。」
「そうか。香澄が突然部活やりだしたのはこっちのバンドできなくなったからなのか。」
「実はその通り。」
香澄がバツの悪そうな笑顔を見せる。
「まぁ、俺も学校の方でバンドあるから、そっちと掛け持ちで良けれ…」
「いいじゃん、学校のバンドなんて。」
「へ?」

赤毛の純が少し怒りを含んだ表情を見せる。

「だってさ、こんな大きいところでせっかくできる機会があるのにやらない奴らなんて放っておいていいって。」
「そうだよ。その程度の人達とやってるなんてもったいないよ、健吾。」

愛も同調する。
香澄も口では何も言わないが、否定の表情はしてない。

「い、いや、そんな事言われても…」
「いいじゃん。一緒にやろうよ。絶対損はないからさ。」
「健吾、本気で音楽やりたいんでしょ?」
「え、ああ、まぁ…」
「だったら決まりじゃない。」
「ちょ、ちょっと待って…」
「なんで?迷う事ないよ。」

黒髪ショートの愛が健吾の手を握る。

「香澄も何か言いなよ。」

赤髪ロングの純が香澄の肩を叩く。

「健吾。」
「あ?」

香澄が健吾の目を見つめる。

「私達は音楽大好きなんだよ。すごく大切なモノなの。だからさ、ずっと音楽やってたいの。健吾は…違うの?」

三人の女性の視線が健吾に注がれる。
しばらくの沈黙の後、ようやく口を開いた健吾。

「時間…もらえるか?」

大ホールから、「きよしこの夜」の大合唱が聞こえてくる。
気付けば25日まであと25分。誰からともなく立ちあがり、楽屋を出て、合唱に加わった。

「俺の…大切なモノ…」

聖なる夜は、静かに光をおびていく。

27 大晦日

12月31日。 

「今年も今日で終わりか。」

21時30分。

「今年はずいぶん早かった気がする。」

毎年決まってこの神社へ来る。

「なに、それ惚気?」
いつもの三人に加えて、中村が参加し、四人で年越しを待つ。
「あら、バレた?」
境内に設置されたベンチに座る美沙子、香澄、中村。
「ったく。こんな日にまで止めて欲しいものね。」
健吾は一人、動かないブランコに座っている。
「いいじゃない。こういう寒い日にこそ温度上げてあげないと。」
笑い声が冬の夜空に響く。
周りには数人の人。
電車で少し行くと、もっと大きな神社があるのだが、家から近いという理由で、毎年ここで新年を迎えている。

「ねぇ?健吾?」
「あ?」

ぼーっとしていた健吾が、美沙子の突然のフリに体を動かす。

「なに、聞いてなかったの?」
「あ、ああ。悪い。」
「何かあったの?元気ないけど。」
「別に。てめぇには関係ねぇよ。」
「なにその言い草。人がせっかく心配してやってんのに。」
「まぁまぁ。」

香澄が横から口を出す。

「あんた達が二人で惚気てるから怒ってるのよ。」
「あ、なるほど。」

美沙子の表情が一転して明るくなる。

「ここは熱くてかなわないわ。」
香澄が立ちあがる。
「あら、失礼。」
美沙子が中村の肩に頭を乗せる。
中村のリアクションは一切なし。

香澄が健吾の隣のブランコに座る。

「ずいぶん苦しんでるみたいね。」
「誰のせいだよ。」
「別に悪い話じゃないじゃないの。」
「そうだけどな…」
「何が不満なの?」
「いや、別に不満とかじゃねぇんだけど…」
「じゃあなんでそんな悩むの?」
「さぁ…な。」
「ま、いい答えを期待してるわ。」
「期待すんなよ。」

健吾がブランコをこぎだす。

「ねぇ。」
加速がついて目の前を一瞬で通り過ぎる健吾に声をかける香澄。
「あ?」
「ライブしない?」
「は?」
「ここで。」
「今?!」
「そう。」
「なんだよ、いきなり。」

健吾がブランコを急停止させる。

「いきなり歌いたくなっちゃった。」
「第一ギターねぇぞ。」
「私取ってくるよ。」
「はぁ?」
「行ってくるね。」

香澄がブランコから飛び降りて走り出す。

「香澄?!」
ベンチに座る美沙子が驚いて声をかける。
聞こえたのか聞こえてないのか、軽く手を上げて走り去る。
「あんた、香澄に何したのよ!」
思わずベンチから立ちあがって健吾の方へ歩き出す美沙子。
「ばか。何もしてねぇよ。なんか歌いたくなったんだとさ。」
「は?」
「ギター取ってくるってさ。」

 

『今夜はクリスマス
 そしてもうすぐ今年が終わる
 あなたと雪の中を
 こうして手をつないで歩くのは何回目だろう

 去年はどこへ行ったっけ
 来年はどこへ行こうか
 毎年する話は同じ
 毎年言う言葉は

  愛してる』

小さな拍手が境内に響く。
いつのまにか二人の前には20人ほどの人が座っていた。
ベンチに座って、アコスティックギターを奏でる香澄。
その横に立ち、石井和雅の「クリスマス」を歌う健吾。
美沙子と中村はお客として、二人の前に座っている。

「ありがとうございます。」

小さな拍手に、健吾が頭を下げる。

「あと1時間で今年も終わりです。皆さん、今年は良い年だったでしょうか?俺は毎年良い気分でこの日を迎えてます。もちろん、今年も。来年も皆さん良い年が来ると思います。僕が保証します。では聞いてください。石井和雅で、「明日も」。」

香澄のギターが美しい和音を奏でる。

『おやすみなさい
 いい夢見よう
 明日も良い日になるように
 枕に願いを込めて
 眠りにつく
 そんな時見る夢は決まっていつも
 君の夢だった

 君の顔を見て
 目覚める朝は
 決まっていつも青空だよ
 白い太陽見て
 目を細めては
 君の事を想って手を広げて
 おはよう言うんだ』

午前零時が近づく頃には、二人の前に座る人は50人ほどになっていた。
後ろの方には立って聞いている人もいる。
そのままの態勢のまま、除夜の鐘を聞き、お参りをしては二人に一言声をかけて帰って行く人達。

「あけましておめでとう。」

美沙子と中村は二人で手をつないでお参りをしている。
その群集を後ろから見ながら、香澄が健吾につぶやく。
「ああ。おめでとう。」
「どう?今の気持ちは?」
「最高だよ。」
「音楽って…いいよね。」
「そうだな。」
「人達の心を暖かくして、柔らかくして。笑顔運んでくれる。」
「ああ。俺も改めて思ったよ。」
「やろうよ。一緒に。」
「なんかやり方が汚ねぇな。」

健吾が苦笑いで香澄を見る。

「間違ってはいないと思うわ。」
「そうだな。」

健吾が右手を差し出す。

「よろしく。」

香澄がその手をとる。

「ちょっと貸してくれねぇか?」
「え?」
健吾が香澄のギターを奪い取る。

それをかかえたまま境内へ走る。皆が賽銭を投げる先で立ち、おもむろにギターを引き出す。

曲は「新しい朝」。

28 JAKK

「羨ましい限りだよ。」
「ばーか。疲れるだけだよ。」

新学期も始まり、いつものように授業も始まった頃。
七回目を数える席替えでまたも隣になった坂本健吾とムラこと田村。
授業が終了チャイムの10分前に終わり、大きな声を出さずに騒ぐ教室。

「おまえ高校入ってから何人目の女だよ。」
「さぁな。」
先ほどの授業の教科書を机の中にしまう健吾。
「ほーら、数えられねぇくらい付き合ってんじゃねーか。そのたびに別れて、俺に自慢して…」
「自慢じゃねぇよ。」
「うるせっ!おまえにとって自慢じゃなくてもな、俺にとっては十分自慢になるんだよ。」
もうすぐ一年終わるというのに、田村のノートは高校入学時に買ったまま。
そのノートをつかみ、健吾の頭を軽く叩く。
「それは悪かったな。」
「あ、今の言い方ムカつく。俺は知ってるんだぞ?おまえJAKK(ジャック)でも可愛い女とつるんでんだろ?」
「は?なんだつるんでるって。てかなんでおまえがその名前知ってんだよ。」
机の上が片付いて、寝そべるようにして机にへばりつく健吾。
「この前香澄が教えてくれたよ。なんでも?可愛い女の娘を集めた?本格的な?ストリートバンドだとか?」
健吾のセットされた髪をいじる田村。
「チャカすんじゃねぇよ。」
その腕を振り解く健吾。
「少しくらいいいだろ。俺には何もいい事ねぇんだから。」
ようやく授業の道具をしまう田村。
「俺だって辛いんだよ。」
「何が。」
「好きに…なれねぇんだ。」
「は?」
「誰と付き合っても相手の事好きになれねぇんだよ。」
「あー、そうかい。好きじゃない相手と付き合えるなんて羨ましい事…」
「真面目に聞いてくれるか?」
「あ、悪りぃ。真面目な話だったのか。」
「なんでだろうな。相手の娘はすごく良くしてくれんのに。」
「そりゃあな、人の感情なんてそう簡単に扱えるもんじゃねぇしな。」
「でもな、悪いじゃねぇか。せっかく俺の事好きだって言ってくれてんのに。」
「そうだな。俺だったらそんな女いたら全て捧げてもいいけどな。」
「俺もそうしたいんだけどよ。」
「ま、そんな考え詰めちゃできるもんもできねぇからな。気楽にいけや。とりあえずおまえは相手に困る事はないだろうからよ。」
「チャカすなよ。」

立ちあがって教室を出る健吾。
いつのまにかチャイムが鳴っていたようだ。
廊下にも歩く生徒が目立つ。

「チャカしてねぇよ。」
机に顔を伏せる田村。 

「ねぇ。」
いそいそとトイレから帰ってきた健吾を、教室の入り口で呼びとめる美沙子。
「あんだよ。」
最近大活躍のストーブの前で止まる健吾。
「今日も部活来ないの?」
「ああ。今日水曜だろ?水曜は出れねぇんだよ。」
肩をすくませ、制服のポケットに手を入れる健吾。
「卒業ライブどうすんのよ。」
横に立ち、健吾をにらむ美沙子。
「別に練習サボってるわけじゃねぇんだからウダウダ言うなよ。」
ポケットから携帯電話を取り出し、ボタンをイジりだす健吾。
「練習ったって他のバンドでしょ?」
「練習にはかわりねぇだろ?」
「ギターとドラムだけで何の練習しろって言うのよ。」
「別に週に1回くらい出なくたっていいだろ。」
「最近週1じゃおさまってないじゃないの。今週だって、昨日も来なかったし…」
「部活出たところでロクな練習できねぇじゃねぇか。音はバラバラだし、すぐ休むし。」
「そんな…あんた先週の金曜来なくて、土日は休みで、月曜の1発目から合うわけないじゃない。」
「あいにくJAKKは1週間空いても合うんだよ。」
携帯から目線を美沙子に移し、軽く笑う健吾。

その目をしばらく見て、ストーブに目線を落とす美沙子。

「…クリスマスの事まだ怒ってるの?」
「別に。俺がそんなウジウジ野郎に見えるか?」
「一日くらいいいじゃない。」
「だから別に怒っちゃいねぇ…」
「私だって楽しい生活したいもん。せっかく手に入れたんだもん。いいじゃない。私だって…」

どんどん顔が下に下がっていき、美沙子の長く伸びた黒髪が顔を隠す。

「おいおい…」
「私だって音楽好きだもん。でも一人じゃできないんだから、こうして頼んでるのに、あんたはどうしてそうやって…」

美しい黒髪から、震える声が聞こえる。

「わあったよ、うるせぇな。なるべく部活出るようにするよ。だけど、今日は勘弁してくれ。」
「なんでよ。」
「いきなり向こう休むわけいかねぇだろ。」
「あっそ…」

顔を上げ、顔を二、三度制服で拭った後、髪を整え、自分の席に戻る美沙子。
ずっと同じ態勢で立っていたため、制服の半面が熱くなっていた。
熱くなった面を軽く叩きながら、自分の席に戻る健吾。

その日、あれだけ学校を騒がせた一年生バンドは、一人も部室に顔を見せなかった。
美沙子の笑顔は人ごみの中にあり、健吾の歌声は違う音の元で響いた。

29 興味無い

桜の木も、自分の腕一杯に桃色の花をつけ、新入生を歓迎している。
風が吹く度に空気をピンクに染めるそれは、まさに春を彩るものだ。
この二年五組にも、全開にした窓から心地よい風が流れ込んできた。

「で、なんでおまえがそこに座ってるんだ?」

新たに染め直した薄い茶色の髪を後ろに流した美男子が後ろを向いている。

「だから、それはこっちのセリフでしょ?」

肩を少し越えたところまで伸びた黒いつややかな髪が風になびく美女がにらむ。

「どこまで一緒なんだろうな。」
「地獄までには離れたいわね。」
「それはそうだ。」

二年に進級した坂本二人。
が、またも同じクラスに。
軽音楽部では、改めて誰が部長を務めるかという事でもめた。
坂本健吾、美沙子は仕事を嫌い、香澄は部長が引退してから務めた部長業が気に食わなかったのか、「仕事するために部活やってるんじゃない」との事。
中村は部員の名前すら覚えてない状態なので、結局一番仕事のできるおとなしい男に決まった。

学年が変わった事により、部活内のバンドは全て解体。
6月の体育館ライブに向けて、新たにバンドが組まれる。
坂本健吾、美沙子、緒方香澄、中村貴志の四人は、実力の違いという理由で、誰も組もうとはしなく、必然的にまた四人で組む事になった。
しかし、四人の熱は、明らかに昨年よりも低い。
五月に入り、気温もどんどん上がってきているある日、美沙子に一人の女が話しかけてきた。

「ねぇねぇ、美沙子。」
「ん?」

先ほどの授業の片付けを終えた美沙子がその女の方へ顔を向ける。
周りをしきりに気にしているその娘の様子からして、他人には聞かれたくない内容なのだろう。

「軽音って今度出張ライブやるってホント?」
「シュッチョウライブ?」
「あれ?」
「なにそれ?」
「あ、なんだ。やっぱただの噂だったのか。」
「え、え、ちょっと待って、どういう事?」
「なんかね、和子が言ってたんだけど、今度うちの軽音が、水野女子で飛び入りライブやるって言ってたのよ。」
「はぁ?」
「やっぱそうだよねぇ。いきなり女子高でライブなんかできないもんね。」

突然美沙子が立ちあがる。驚く女の子。
複雑な表情のまま歩き出す美沙子。
行く先にいるのは、笑って男友達と話す坂本健吾。

「ちょっと。」
「あ?なんだよ。」
「後で話あるから。」
「はぁ?」

周りにいた男子生徒が「お?とうとうプロポーズか?」「いよっ!美男美女!」などとはやし立てる。

「うるせぇ!…話って何だよ。」
「後で話す。」

そのまま後ろを向いて歩きだす美沙子。

「ああ、その話か。」
放課後の軽音楽部部室。
授業を終えてからトイレに行き部室に入ってきた健吾の前に、鋭い目付きの美沙子が立っている。
「本当なの?」
「あんま言うんじゃねぇぞ。飛び入りでやるんだから。」
「ちょっと待ってよ。私達そんな話聞いてないわよ?」
「は?」
「練習だってしなきゃいけないじゃない。」
「待て待て。誰がこのバンドで飛び入るって言った?」
「…え?」

美沙子の心臓がまた一つ、嫌な音を鳴らす。

「JAKKでやるんだよ。」
「そう…なの。」

美沙子の目線が下に落ちる。

「当たり前だろ。なんでこのメンバーでいきなり女子高乱入できるんだよ。おまえ知り合いでもいるのか?」
「いつの話?」
「六月の初めだよ。俺と香澄以外の女二人が水女(みずじょ)でな。文化祭でバンドやらないか、って。」
「それでOKしたんだ。」
「まぁな。女子高の文化祭なんてめったに行けるもんじゃないしな。ましてやあんな天下の水野第一女子高校なんか。」
「もしかして今まで休んでたのってそれの練習?」
「いや。文化祭乱入はホント飛び入りでやるつもりだから練習とかしてねぇよ。」
「…そ。」

下を向いたまま、顔を横に向ける。

「なんだよ、そのテンションの下がり方。」
「別に。私の知らないところで随分楽しんでるんだな、と思って。」
「おいおい、それは俺のセリフじゃねぇか?」
「そうね。」

健吾が来る前に用意してた自分のギターを手に取る。

「なんだ、おまえもしかして一緒にやりたいのか?」
「そんなわけないじゃない。」
「…んな冷たい否定されるとリアクションとりづれぇな。」
「6月のライブには出れるんでしょうね?」
「ああ、まぁな。前にも言ったけど俺は別に練習サボってるわけじゃねぇし。」
「どうして学校の方てきとーになってんの?」
「別にてきとーにやってるつもりはねぇけどな。」
「あっそ。」
「やりがいの差ってやつかな。」
「やりがい?」
「俺な、今外で歌ってんだよ。」
「外?」
「ああ。ギター持って、新宿とか渋谷とか行ってな。その辺で歌うんだよ。とりあえず知ってる曲をかたっぱしからな。」
「野外ライブやってるんだ。」
「ライブなんて上等なモンじゃねぇよ。一人でやってんだから。」
「…は?」
「一人でやっててもな、けっこうファンとかいるんだぜ。」
「JAKKの練習してるんじゃないの?」
「ああ、それは週一回だけだよ。他はずっと外で歌ってんだ。」
「なんだ…あたしはてっきり…」
「この前なんか金もらっちゃってよ。一人くれると後から後から。結局5万くらいもらっちまたからな。金の問題じゃないけど、なんかすっげぇ嬉しくてさ。ついついまた行きたくなっちまうんだよな。」
「そんな話聞いた事もなかった。」
「だってなんか照れくせぇじゃねぇか。この前たまたま工藤に見つかっちまってよ。」
「へぇ…」
「もうちっと楽しそうに聞けねぇか?」
「いいね。楽しそうで。」
「まぁ…な。おまえ何かあったのかよ。」
「何もないよ。私は何もない。何もしてない。」
「中村とよろしくやってんじゃねぇのか?」
「そうね。まぁ、適当にやってるわ。」
「ならいいじゃねぇか。俺のは悲しい自己満なんだからよ。」
「さて、じゃあ練習するとしますかね。」

ギターを抱えて部室の中の方へ歩いて行く美沙子。
今日は中村は休み。なんでも英検を受けるから勉強するのだそうだ。

「なんか半端だな。」

桃色の花びらを回せた桜の木も緑に染まり始め、学校内の熱気も高まってくる。
そんな熱気に乗り遅れているような表情をする美沙子。
その悲しい目線の先には、中村がいるのだろうか。
先月の日曜は映画に行こうと思ってたのに。
この前の土曜は一緒に服買いに行きたかったのに。
昨日の帰りは一緒に帰りたかったのに。
まだ一度も彼の口から「好き」という言葉を聞いた事がない気がする。
キスだって、私から求めなきゃしてくれない。そう言えば前にしたのはいつだったかな。
まだ私頑張り足りない?
健吾の奴に自慢してやりたいのに、心のどこかで健吾を羨ましがってる。
今日も一緒に帰れない。
英検取ろうとしてたなんて、今日知ったよ。
私の知らない事ばっかり。

どうして?

私の事期待してくれた健吾を裏切ってまでクリスマス一緒に過ごしたのに、一緒にご飯食べて、公園歩いて、キスしただけ。

そっか。あの日からキスしてないんだ。
先に「帰ろう」って言うのはいつも彼。
たまにはしつこく愛を表現してくる彼を振り払って帰ってみたい。
一度くらい私が嫌になるくらい愛されたい。
でも、あの日の彼の言葉が頭から離れないの。

「俺はおまえには興味はない。」

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第3話

第4話

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