機能する文章を書くには? ―『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー, 2001)
ここのところ、山田ズーニーさんの『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』を再読している。
今月、講師を担当する広報関連のレクチャーで「ことば」をテーマにするからだ。改めて読んでみて、この本はやっぱり凄いなあと思う。つい興奮してあちこちに線を引き直してしまう。
本書が一般的な文章術の本と異なるのは、「美しく正しい文章を書く力」ではなく、「目的を達するために機能する文章を書く力」に焦点をあてているところだ。
他者を動かす文章術
相手に自分の考えを伝え、理解してもらい、どう行動してほしいかオーダーする。――それは人間社会におけるコミュニケーションの最小単位だ。仕事も、生活も、そのやりとりなしには進まない。
かといって、一方的に自分の思っていることを叫ぶだけでは他者は動かない。やってほしいことを押し付けるだけでも駄目だ。なぜ、どうして、それが必要で、どんな理由で相手と自分が協力するべきなのか。きちんと説明し、共感を得ること。気持ちよく対話をすること。
そのための思考の順序が、書くというコミュニケーション方法に特化して、まとめられているのが本書だ。
“今日も、そうした教科書に載らない名文が、どこかで書かれている。おかげで、電車は走り、ビルは建ち、宅急便が届き、世の中が回っていく。”
“機能文”は広報職の必須スキル
広報コミュニケーション職は、情報を発信して、対象に何らかのリアクションを求めるための職業である(プレスリリースを発信してメディアに取材してもらう、コンテンツを公開して周囲にシェアしてもらう、事業トラブルで謝罪文を出して顧客に理解を求めるなどもそう)。そのやりとりの手触りや質を、戦略的に設計できてはじめて「仕事をしてる」と言える。
だから「機能文を書く」は、広報コミュニケーションの最低限のスキルであると思う(とっても難しいし、わたしも修行中だけども……)。
本の中ではシーン別の様々なケーススタディがでてくるので、関心のある方はぜひ。機能文を書くためにあらかじめ設定しておくべき「7つの要件」は、大切なことばかり!
文章の7つの要件:1意見 2望む結果 3論点 4読み手 5自分の立場6論拠 7根本思想
書くことは、考えること
ちなみに、この本を教えてださったのは、以前仕事でご一緒した、東京大学総合文化研究科教授・共生のための国際哲学研究センター所長の梶谷真司先生だ。哲学の専門家として、多様な人が対話することを大切にされている先生が、「ことばで伝えることの基本がここにある!」と、猛烈にお薦めされていて、すっかり感化され、何度も読み返している(梶谷先生といえば、数年前にすごく話題になったこの記事もとても面白い!)。
そして、本書を読むと、「書くこと」大切さと同時に、「考える」ことの大切さに気づく。
ことばとは、伝える道具であり、考える道具であり、感じる道具である。……というのは、今読んでいる別の本の一節なのだけども、まさに。