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#38 日本人にパンを、フランス人にごはんを

パン屋のレストランに、
4人組のお客さまがいらっしゃいました。

初老の日本人夫婦と、初老の外国人夫婦。
4人は、フランス語で話をしています。

外国人ご夫婦の方は、
ボルドーから来たのだそうです。

「ボルドーから来ました」って、
なんかいいなあと思いました。



当店のランチでは、
お好きな主食をお選びいただけます。

「パンとライスどちらになさいますか」
とわたしが尋ねると、

フランス人夫婦は揃って
「ライス」と言ったようでした。

「えっ、ライス? ほんとにライス?
 パンじゃなくて?」

と日本人夫婦が食い下がるのですが、

「日本にいる間は、お米がたべたい」と

ボルドーのお父さんが、
フランス語で言いました。

お父さんはくるりとこちらを向き

「日本人にはパンを、
フランス人にはごはんをお願いします」と
きれいな英語で言いました。

わたしが「うける」みたいな顔をすると

フランス人のお父さんは、
うれしそうにふふふと笑いました。



わたしにこの面白さを伝えるために

わざわざ英語で話してくれたのも
うれしかったのですが、

ジョークを言う心の準備をした
お父さんの耳とほっぺが

いざ口に出す一瞬前に、
ポッと赤くなったのを見て

コミュニケーションには、
いろいろな方法があるなあと
思ったのでした。

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