マガジンのカバー画像

パン屋日記

60
寝る前の読みものを探している方に。パン屋で働く「わたし」のノンフィクションエッセイをお届けします。やさしくてあたたかい変な人たちがたくさん出てきます。
運営しているクリエイター

#パン屋日記

#55 今となってはおとぎ話のように

閉業前の、ラスト・ラン。 ほとんど2ヶ月ぶりに 厨房からあたたかな音が聞こえ、 古い陶製…

icca
1年前
34

パン屋日記 #54 大きくなったら

6月初旬 広島で、「とうかさん」という お祭りがあったはずの頃 レストランの閉業が、 正式…

icca
1年前
27

パン屋日記 #53 木村さんがいない

そのことに気づいたのは5月の中旬 みんなのタイムカードを 整理していた時のことでした。 …

icca
1年前
33

パン屋日記 #47 立派なコックさんと熱帯魚のぶくぶく

パン屋に併設のレストランに、 「シェフ」こと 立派なコックさんが入りました。 年配の人な…

icca
1年前
27

パン屋日記 #46 よくできた話

パン屋日記は、縁をつないでくれます。 パン屋日記を読んでくださっている 岡山のパン屋さん…

icca
1年前
37

パン屋日記 #44 やさしさの形

仕事中、休憩室の奥の倉庫から 補充用のドリンクを積み出していると 「iccaちゃん。これ持っ…

icca
1年前
43

パン屋日記 #43 福山雅治

本当のパン屋日記は、 起・承・転・結ではありません。 起・承・転・転・転 転に次ぐ転です。 その「転に次ぐ転」の中で 怒ったり、笑ったり 人にやさしく されたりしているのです。 鬼ヶ島店から電話がかかってきたのは、 火曜日の朝のことでした。 「女子社員が1人失踪しました。  人が足りないので、誰か来てください」 いってらっしゃい、さようなら。 お昼前にして、早くも坂下先生とお別れです。 「鬼ヶ島店は、どうなってるんでしょうか。 (軍曹)さんといいその女子社員と

パン屋日記 #42 鬼ヶ島店

本当のパン屋日記は、 修羅場に次ぐ修羅場です。 ほっこりする暇なんて、一つもありません。 …

icca
1年前
28

#40 ネコ・スペクタクル・ワンダーランド事件

そのネコは、レストランの窓辺に現れました。 子どもよりは大きく、 大人よりは小さい真っ黒…

icca
1年前
33

パン屋日記#39 大きゅうなりました

片手で抱っこするには大きすぎる男の子を 片手で抱っこしたお父さんが入店しました。 わたし…

icca
1年前
33

#38 日本人にパンを、フランス人にごはんを

パン屋のレストランに、 4人組のお客さまがいらっしゃいました。 初老の日本人夫婦と、初老…

icca
1年前
49

パン屋日記 #37 ガラス越しの世界

パン屋の向かいにある 「おおもり精肉店」のおとうさんが、 横断歩道を渡っています。 おとう…

icca
1年前
52

パン屋日記 #36 遠足、ばっくれようぜ

「めいちゃん、明日お休みなんだね」 「はい。明日は、保育園の遠足なので……」 なので、の…

icca
1年前
43

パン屋日記 #35「 iccaさん、かわいい?」

26歳のめいちゃんは、 普段、わざと自分から 「おばちゃん感」や「母ちゃん感」を出して 明るく元気に働いていますが 本当は、まだまだあどけなさの残る 若い女の子です。 「めいちゃん、今日もかわいいね。  前髪がお人形さんみたいだ」 などと声をかけると、 いつもはあまり 褒め言葉を受け取ってくれない彼女も、 うれしそうに照れて笑いました。 ある日めいちゃんが、 半分に切った食パンをずらっと並べて こちらを振り返り 「iccaさん、かわいい?」 と、尋ねました。