心理学から学ぶ “五月病”
“五月病”と聞くとなんとなく新人さんや新学期の学生さんが新生活に慣れてきて中だるみしてきてなるものというイメージがありませんか?
今回はただのやる気や気分の問題ではない危険な“五月病”についてお話していきます。
■五月病は悪化するとメンタル疾患になることも…
現在新型コロナの影響で、これまでのように休みを過ごせず不完全燃焼に終わっている方もおおいのではないでしょうか?
リフレッシュができないのに加え、環境の変化がストレスになりやすいこの時期、あなたも「五月病」になるかもしれません。
この五月病は程度が軽ければ問題ありませんが、放置しておくと「適応障害」や「うつ病」へと悪化する場合もあります。
環境の変化は多かれ少なかれ身体にストレスをもたらします。
特に4月中は緊張感やその場の我慢で何とか乗り越えることができたけれども、5月頃になると限界を迎えて体調不良を起こしてしまいます。
この状態がいわゆる「五月病」です。
「五月病」というのは正式な病名ではなく、程度が軽ければそのまま良くなっていくことも多いですが、悪化すれば「適応障害」や「うつ病」へと進行してしまう可能性がありそうなる前の対策が重要となります。
実際、日本のメンタル疾患者は420万人もいると言われていて、これは15年前から比べると約1.7倍だということがわかっています(平成29年のデータ)。
もちろんメンタルヘルスの概念が浸透してきてた結果、受診のハードルが下がり診断に至ったケースが増えた、ということもあると思います。
しかし、現在はそれに追加して、新型コロナウイルス感染症の流行があり、健康面の不安や緊急事態宣言の発令などで、例年以上のストレスを抱えている人もたくさんいるかと思います。
さらに怖いのがうつ病は再発率が非常に高いということです。
・うつ病になった回数別の再発率
1回患って回復した人のうち60%が再発
2回の方で70%
3回の方で90%
と、再発回数が増えるのに伴い再発率もどんどん上がってしまうのです。
これらの数字を見ても、初期対応の大切さがわかるかと思います。
■1度休職すると「復職」が難しい理由
企業側の目線から見ると病気を原因とする休職者の内訳は、メンタル疾患が一番多く40%、メンタル疾患で休職もしくは退職をした従業員のいる企業は全体の1割ほどになると言われています。
休職期間を見ると、メンタル疾患が原因の場合その期間は平均でも5か月を超えており、フィジカル疾患(ケガ)と比べて長期間を要することが多いです。
メンタル疾患での休職後、職場復帰できた方は5割ぐらいだと言われていおり、復職した方でも、5年以内にはその半分が再発・休職してしまいます。
このように一度メンタル疾患で休職してしまうとなかなか復職できない、という現実があります。
「たかが5月病」と思わずに悪化する前にしっかり気づき、防ぐ対策をとっていくことが非常に重要となります。
対策としては
1「休息をとる」
2「受診する」
です。
しかし、ストレスを抱え込みやすい人というのは得てして真面目で責任感が強いことが多く、どちらの対策も自分自身ではなかなか選ぶことができない場合がほとんどです。ですから、職場では周囲の人間がまず気づき、1、2の対策にうまく誘導してあげることが必要となってきます。
■知っておきたいメンタル不調の「気づき方」
まずメンタル不調の「気づき方」。
「あの人、気分が落ち込んでそうだなぁ」とか「憂鬱そうだなぁ」というふうに何となく感じるケースはよくあると思います。そんな時、その方には次の二つの質問をしてみてください。
(1)「よく眠れている?」
(2)「休みはどんなことをしていた?」
(1)の「よく眠れている?」について。メンタル不調者の90%は睡眠障害を伴っているというデータがあります。睡眠時間を十分に取れているのかももちろん大事ですし、日中の眠気がないか、朝起きた時にちゃんと疲れが取れてるかなども聞いてあげられるといいと思います。
睡眠の問題、不眠症の人は、3年後のうつ病の発症率が不眠症でない人の4倍であったというデータがあります。
実際うつ病の85%の方には睡眠障害があることがわかっていますので、「労働時間の管理≒睡眠時間の管理」というのは本当に重要であるということです。
■「休み」について質問する「真意」
次に(2)の「休みはどんなことをしていた?」についてです。
メンタルが弱っているとパワーが失われてしまい、以前好きだったことに対して興味を無くしてしまうことが多く見られます。
この「興味の喪失」はうつ病の診断基準のひとつであり、これに「憂鬱」が加わった場合、うつ病と診断される確率はかなり高くなります。
職場は仕事をする場所なので、「興味の増減」についてははっきり見えないことが多くわかりにくいことが多いです。
そこで(2)の質問をしてみて
「草野球行かなくなったんだよね」
「好きな番組見なくなった」
「見ても面白くなった」
等の回答があった場合には黄色信号に気づくことができると思います。
上記の2つは比較的日常会話の中で聞きやすいことでもあると思いますので、元気のなさそうな人を見かけた場合には是非実践してみてください。
もちろん軽率な素人判断は禁物ですので、黄色信号に気づいた場合、次の段階としてはいち早く医療機関や産業医へ誘導するということを心がけてください。
■さいごに
うつ病はとても治りにくい病です。本当にひどくなると自ら死を選んでしまうこともあります。
そうなってしまう前に「たかが5月病」と思わず、周囲の方の様子をしっかり見てあげてください。
あなたが初期に気付いてあげることで“うつ”という非常に厄介な病気から救ってあげることができるかもしれません。
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