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HR豆知識⑨オンボーディング(設計編)

ブログを読んでくださり有り難うございます。前回のブログでは、「オンボーディングってなに?」というテーマでその必要性や知っておきたい理論を書いていきました。今回はどんなステップでプログラムを設計していくべきかを書いてまいります。

1.オンボーディングを成功させる4つのC

アメリカの研究機関であるSHRMが発行しているOnboarding New Employees: Maximizing Successでは、4つのCを充足させていく事が重要だと述べています。

① Compliance(コンプライアンス)

コンプライアンスとは、従業員に基本的な法的およびポリシー関連の規則や規制を教えることが含まれます。最低限知っておかないといけないこと、例えばハラスメントに関わることや就業などに関するルールの事を指します。

② Clarification(明確化)

明確化とは、仕事そのものに対する説明と期待している成果、組織内での役割などを指し、「会社から何を求められているのか」を理解してもらう事を指します。

③ Culture(文化)

文化とは、従業員に組織的規範(公式および非公式の両方)を提供することを含む幅広いテーマですが、会社の理念やコアバリューなどのMVS(ミッション・ビジョン・ストラテジー)に加えて、「うちの会社だったら●●することが当たり前、●●しないことは当たり前」というような暗黙知を理解してもらう事も含まれます。

④ Connection(つながり)

つながりは、組織内のメンバーとのつながりを示します。まずは上司、チームメンバーとのつながりが最も重要となりますが、CEO含めた経営陣とのつながりや部署を超えた社員とのつながりも重要となってきます。

私が個人的に36名の友人(日本人)に回答してもらった「会社に入って戸惑ったこと」は以下のようになりました。

コメント 2020-05-27 164549

日本の場合は、「まず慣れてね」と言いながら、曖昧にして全体像や期待値の説明を避ける傾向があるのかもしれません。そもそもJDが明確でないことも要因の一つかも。発生ベースでの説明は、やはり受け手からすると辛いものです。

2.オンボーディングの設計ステップ

① オンボーディングの期間を定める

一般的には入社後90日(3カ月)、または180日(6か月)までを、オンボーディングプログラムとして意図的に行う企業が多いようですが前回言及したCulture Adjustment Curveからすると12ヶ月が適合という観点では適切です。

② サーベイの項目と頻度を決める

上記の4つのCに基づいて、以下の4つの質問をしていきましょう。入社後1カ月、3カ月、6か月などのタイミングで定期的にサーベイを取りその変化を見ていく事が重要です。

・会社の中でのルールや規則を理解する機会は十分ですか?
・あなた自身の仕事内容や期待値を理解する機会は十分ですか?
・会社の文化(公式・非公式含め)を理解する機会は十分ですか?
・上司やチームメンバー、または部門を超えた社員とのつながりを作る機会は十分ですか?

③ プログラムを設計する

入社受入のタイミングから1カ月までをまずプログラムしていきましょう。ペーパーワークからオンライン学習・オフライン学習などそれぞれを組み合わせていくものですが、以下のプログラムを参考にしながら自社にとって現実的なプログラムを設計してください。

オンボーディング

④ 関係者に依頼する

上記のプログラムをとっても、HRだけで完結する事は非常に難しいように思います。経営陣、配属先上司、同僚、様々なメンバーへ共有し依頼していきましょう。

⑤ 実行し、入社者からFB(フィードバック)をもらう

②で作成したサーベイを基にしながら、プログラムに改善点はないかをヒアリングし改善していきましょう。

3.日本だからこそ気に掛ける若年層(社会人1年目~3年目)

リアリティショック

若年就業者の組織適応, 尾形真実哉,2020で整理されている上記の課題は非常に参考になるものです。

例えば、新入社員は「見られているというモニター・ストレス」や「あの人みたいになりなさいというロールモデル・ストレス」がかかり、組織や集団に適合を難しくします。2、3年目になると「え、これっておかしくないという事に気づく2年目の憂鬱」や「このままでいいんだろうかという危機感」に遭遇します。

そんなもん誰もが経験しているから」という事だけでは日本の労働市場はより強くなりません。じゃあどうしたらいいの?というポジティブな発想が重要です。

また、「組織適応」は、以下の5つに影響を及ぼしていると研究結果で発表されており、オンボーディングを考える際にも非常に有益な情報だと言えます。

・職業的的社会化(スキル・技術の適応)
・文化的的社会化(関係性、影響力への適応)
・情緒的コミットメント(会社への愛着的適応)
・離職意思
・仕事のやりがい

尾形教授は結論として以下のようにモデルをまとめていますが、今まで多くの変数があり曖昧にされていたものが一つの結論として整理されており、HRの人たちが知るべき情報となっています。

リアリティショック整理

4.で、結局必要なもの

尾形教授が結論として提言しているものは以下の表のとおりです。組織だけでなく、個人も動く必要があるという事が重要な点ですが、HRはその個人の動きを支援してあげるという事が求められます。

リアリティショック施策

5.そのほか勉強になる理論

以下に勉強になる理論を載せておきますので、興味のある方は是非ご覧ください。

  ・日本型組織社会化モデルと欧米型組織社会化モデルの比較
  ・リアリティショック(1年目・2年目・3年目+Hall1976, Schein1978, Dean 1983+Dean, Ferris&Konstans1988)
  ・組織的アプローチと個人的アプローチ
  ・「Cultural Adjustment Theory(組織適合)」
  ・「Social Learning Theory Process」
  ・「Job Longevity」(Katz1980)
  ・「行動-適応サイクルモデル」(Rosse&Miller1984)
  ・「適応プロセス4つのタスク」(Ashford&Taylor1990)
  ・「Getting Newcomers On Board」(Saks&Gruman2012)
  ・「Getting Newcomers On Board - Chapter6:Organizational Socialization OUtcomes」(Bauer&Erdogan20212)


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