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グローバルトレンド③完全版:Skill Based Organization(スキルベース・オーガニゼーション)&アジァイル・オーガニゼーション

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なぜ書くか

世界経済はVUCAと呼ばれ、安定性を欠き、テクノロジーは進化を続け、グローバル化は進み、労働者世代は移り変わっている中、日本にも多くの変化が求められている時代になりました。つまり、世界的な動向を知ることが私たちの日常にさらに重要になってきてる時代です。

一方で、英語圏の最新情報には、言語的な壁・背景理解の不足など、日本語でのトレンド習得には多くの障壁があると思います。

引用:国際通貨基金

そこで、Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からHRに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。

スキルベース・オーガニゼーションとは何か?

Deloitte社の調査「The skills-based organization: A new operating model for work and the workforce」によると、このコンセプトは、「組織そのものを(役職の集合体ではなく)スキルの集合体として捉えるもの」と定義づけられる。

従来の社長・副社長・管理職・スタッフという集合体から、クリティカル・シンキングやEQなどのソフトスキルとコーディングやデータ分析、ファイナンスなどのテクニカルスキル、それらのスキル集合体として捉える考え方である。

では、スキルベース・オーガニゼーションとは何か?なぜスキルベース・オーガニゼーションが注目されているのか。その内容に入る前に、組織のコンセプト種類についてヒストリカルに、かつ概要を整理していく。

従来型の組織(Job型)

従来の組織は、仕事単位でポジションが明確化されており(Job Description)、その仕事に必要な要件定義(Job Specification)が一般的であった。

従来のJob型組織(キャリアラダー)

そこから、変化の激しい事業環境に対応する為、短期・中期・長期と仕事が多様化し、「プロジェクト単位」で動く事が求められてきた。そこで適用された考え方が、「アジァイル・トランスフォーメーション」であり、「アジャイル・オーガニゼーション」と表現することもある。

この「アジァイル・オーガニゼーション」とは何なのか?BCG, 202012, アジァイル変革を成功させる5つのカギによると、以下の様に定義づけている。

アジャイルは、元々はソフトウェア開発のコンセプトであり、スピーディーに、短いループを繰り返すことを特徴とする手法である。従来のソフトウェア開発は、「ウォーターフォール型」と呼ばれる手法で滝が落ちるように上から下に、段階的にフェーズを切って進めるのが慣例である。要件定義、構築、テスト、運用、保守の各工程に別のチームが存在する構造となる。この開発方法ではチーム間の連携が非常に難しく、スケジュールが遅延する事が問題であった。(中略)
ソフトウェアユーザーのニーズは常に変化し、予測も不可能に近い。それゆえ、アジァイルでは、多様な視点を取り入れる事、開発側と事業部門の幹部の対話を促すことに焦点が置かれている。

引用:BCG, 202012, アジァイル変革を成功させる5つのカギ

従って、組織構造を従来までの縦割り組織ではなく、「反復」「経験」「クロスファンクショナル(全社的・部門横断的・)」「フォーカス」「継続的な改善」を本質的な思想として持っている「アジァイル」に移行させるコンセプトとなる。前述のレポートでは、その具体例としてSpotifyなどが紹介されている。

出所:BCG, 202012, アジァイル変革を成功させる5つのカギ


出所:BCG, 202012, アジァイル変革を成功させる5つのカギ

https://web-assets.bcg.com/20/a3/32b529524ff7a9d1baee5aba802b/five-secrets-to-scaling-up-agile-jp.pdf


プロジェクト型の組織(Job型)


さて、本題のスキルベース・オーガニゼーションとはいったい何なのか?プロジェクト型での仕事が増えると、機能単位(セールス、開発、等)ではなく、プロダクト/プロジェクト別にチームが構成されることとなる。

プロジェクト型での組織

但し、このポジションを埋める活動(採用・教育)は従来の通り、仕事単位であった。仕事単位での採用・教育とは、過去の職務経験・実績並びに学歴を重視した採用・教育となる。マネジメントポジションに行く為にはMBAが必須である、などは典型的な例であろう。

このコンセプトの問題点は①時間がかかる、②マッチングの精度もばらつきがある、という点だ。たとえば、A社のフィールドセールスとB社のフィールドセールスでは同じ職種でも求められる行動が異なり必要な能力が異なる。

スキルベース・オーガニゼーション

このアンマッチングな状況に対するソリューション、その新しいコンセプトとして、スキルベース・オーガニゼーションというコンセプトが出てきた。その定義は「組織そのものをスキルの集合体として捉えるもの」と前述の通りだが、概念的に捉えると以下の様なイメージだ。これまでのJob単位での集合体の捉え方をスキルに細分化した集合体として捉えているコンセプトである。

スキルベース・オーガニゼーションのイメージ

スキルとは何か?

スキルとジョブは何が違うのか?スキルとは何か?についてもう少し解像度を上げてご理解頂けるように説明する。

構造イメージ①

日々、私たちが組織構造を描くときにまずカテゴライズするのは、部門や職種だったりする。これはバリューチェーン的な考え方だ。

その次に、営業部門として、マネジメント機能を持たせたり、専門職を置いたりと、役割を分解していく。これはヒエラルキー型やティールなど様々なタイプがある。ここで組織の形は一旦完成する。

その役割を能力要素で分解し、リーダーシップやコミュニケーションなど少々概念的な能力に落とし込んでいくとコンピテンシーディクショナリーのようなものが設計され、役割定義が明確化される。

更にそれを細分化し、各コンピテンシーのレベル定義を行ったり、また因数分解することによって細分化していく。そうすると、スキルインベントリーというものが完成していく(構造イメージ①)

このスキルベースオーガニゼーションでは、幅広くソフトスキル・ハードスキルなどの分類や、KSA(知識・スキル・能力)・興味関心を総合的にとらえたものを対象とするという事が現在のプロダクトでは多い。従って、これらの図(構造イメージ①・②)では「能力+スキル」をスキルとして定義づけているイメージとなる。

構造イメージ②

従って、このコンセプトは、採用であり、育成であり、評価であり、報酬とHRMのすべての機能に影響を及ぼす。例えば、これまで営業本部長を採用するときに皆さんはどのようにソーシングをかけるだろうか?「営業本部長経験者」で検索をするのではないだろうか?これがスキルベースでの採用となれば、リーダーシップ、マネジメント、ビジネス分析、などといったスキル要件での検索となる。


スキルオーガニゼーションで必要とされるもの

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