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カイロが冷めちゃう頃に。

彼に会うのは半年ぶり。
去年の冬は一緒に過ごしてたな。
そんなことを思い返す中、クリスマス。
彼の誕生日にメッセージを送った。

お誕生日おめでとう。
その一言だけだったけど、
彼に私の気持ちは充分伝わっていたと思う。

私たちが2年前に過ごした夏は青春だった。
2人で毎日お泊まりして、手持ち花火をして
夜は映画を見た。一緒にお風呂に入って、
好きな曲をプレイリストで交換しあった。
まだ高校生だったけど、2人でお酒を飲んで
慣れない酔いは居心地よかった。
大好きだった夏の思い出は、2年経ったとはいえ
まだ私の心の思い出箱の中。
いつもは決して開かない心の扉が
誕生日のメッセージのせいで少しだけ。

そこから年明けもちょくちょくメッセージを
取り合って、夜ご飯に行くことになった。

お互い他に相手もいるし、2人でというわけには
行かないから、幼馴染と友達と、大人数で
いつもの地元のもんじゃに行くことにした。

遠く離れた場所に住む私にとって、
帰省した時にだけ会える彼の存在は、
どうしても友達枠ではない
そのことだけは確かだった。

久しぶりあった彼の髪型は、ロン毛から短髪に変わっていた。二つ後ろに三つ編みしていて、なんとも変わっている髪型が、彼らしさと時の流れを教えてくれる。

みんなで何気のない会話をして盛り上がる。
決して私たちが過ごした夏のことは
誰も口にすることなく食事が進んだ。

ご飯が終わると寒い冬
外でみんながタバコを吸った。
私1人タバコなんて吸わないと思いながら、
冬の寒さに見えるタバコの煙は、切ない気持ちにさせた。彼がタバコを吸い始めて1年が経つ。

タバコを吸い終わると、コンビニに行った。
みんなでお菓子とカップ麺を買い、
寒い外での無駄話はなぜだが格別だった。
何気のない日常が当たり前じゃなくて、
もう少しだけ一緒にいたいと思った。

話の話題を振るのはいつも私で、質問なんて一つもしてこないし、返事もそっけない。
メッセージも夜中ばかり返ってくるし、基本的に会話は短い。そんなつまらない彼だけど、顔だけは私のどタイプだった。それが沼る最大の理由でもあるのかもしれない。

月日が経って、もう2回目になる冬。

大好きだった人を見ると、やっぱり思い出す

コンビニの前で配られるカイロをあける。
ポッケのなかに入れて、早く温まらないかと待ってみる。彼とのお別れの時間が迫ってきてることを知らせた。

2年だった今、好きだから、彼と一緒にいたいからそんなことは思わなくなった。もし、仮に一緒にいたとしても幸せにはなれないと思う。
そう思うようにした。会えなかった時間、
ずっと自分に言い聞かせてきたからかな。

ただ、彼との過ごした時間は特別だったし、
やっぱり楽しかったな。その言葉が一番しっくりくる。

彼には彼の人生があるし、楽しく生きてほしい、
その片隅に私のことを忘れないでほしいという願いを込めて。
彼と一緒にあけたカイロはまだ全然温かくならないけど、とりあえず握りしめてみる。カイロなんていつぶりに開けたんだろう。
あの冬握っていたかったのは、カイロなんかじゃないのにな。そんな想像が私を時々苦しめる。

お家に帰る頃、

もう愛される人になるって決めたけど、
それでも忘れられない人のぬくもりはまだ、

少しだけ、余韻に浸っている。

もう少しだけあったかくいてほしい。
凍った心の傷をカイロのように包み込んでよ。

カイロが冷たくなるころには、私の気持ちも冷め切ってしまうのかな。

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