マガジンのカバー画像

展覧会感想文

6
運営しているクリエイター

記事一覧

iittala展

iittala展

ガラスという素材に興味を持っているのは、カメラに携わっている人間として当然なことだと思う。
「photograph」の語源は光を描くと言うことであり、わたしたちは常にいい光を探し求めている。
ガラスの質感は光を集め、光を反射する特性があるから、カメラを持つとその光の移ろいを撮り納めたくなるのだ。

iittala展に行った。
元々私は北欧の暮らしに対して憧れがある。降雪量の多い北欧では、家で過ごす

もっとみる
芸術起業論を読んで

芸術起業論を読んで

私は美術の大学院に在籍しているのに美術に疎い。講義で出た現代アーティストのことはほとんど知らないし、美術手帖も読まない、アート偏差値35くらいの人間だ。
(例としてあげるのに美術手帖が出るくらい知識がない)

最近先生の勧めで芸術起業論を読んでいる。芸術について書かれてる本にしては難しい用語が少なくサクサク読める。
が、私は村上隆の強かさにどうも嫌悪感がある。お金に執着があり、性的なイメージをアー

もっとみる
制作する事、自己との対話

制作する事、自己との対話

今日は好きな先生が個展をしている会場から遠隔で作品紹介をする授業があった。

先生は細々とした猫やタコなど可愛らしいモチーフを散らばせたシルクスクリーンの作品を作っている。基本の作品は背景色と、黒線で描かれた猫などのモチーフと、ベタ面で表された道具などのモチーフの三版に分かれていて、それを意図せずに重ね合わせる方法をとっている。
その出来上がった画は、無意識に組み合わさったものだがなにか物語が作り

もっとみる
ライブペイントの可能性

ライブペイントの可能性

横尾忠則はライブペイントを事件という。私は大袈裟だなぁと白けながら展示室の中に入った。

神戸に横尾忠則現代美術館がある。私は失礼ながら横尾と岡本太郎をごっちゃにする癖がある。どちらも鮮やかな色彩を使うイメージがあって、激しく強い印象を持っている。私はあまりそういう直接的な表現に苦手意識を持っていた。

今回の展示では1980年代から始めたライブペイントで制作された作品が時系列順に並んでいる。ラ

もっとみる
「ジュラ紀に受け継ぐ」について

「ジュラ紀に受け継ぐ」について

京都文化博物館では新鋭選抜展という、京都の若手アーティスト達の展覧会が行われている。その中でも大きく取り上げられているのが藤浩志の作品だ。
フライヤーには彼の作品の写真だけが裏表に計4枚も配置され、個展と勘違いするほどだった。

彼の作品は「ジュラ紀から受け継ぐ」と名付けられ、大量のおもちゃをくっつけて何頭もの恐竜を作り出し、その周りにおもちゃを並べてカラフルな空間を作ると言うものだった。インパク

もっとみる
衝動は真っ黒

衝動は真っ黒

先輩の作品が真っ黒に塗りつぶされた。

展示が始まって2日目、白地のキャンバスの作品は何が描かれていたか分からないくらいに真っ黒になっていた。

黒は作品からはみ出し、白い壁にもべっとりついていた。

犯人は作品を作った先輩自身だった。

もう少しで夏休みが始まるというのになんて迷惑なことをしてくれたんだろうとみんなが腹を立てていた。いつも仲よさそうにしていた先輩の友達もあんなことするなんて...

もっとみる