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大地康雄・主演ドラマ『深川通り魔殺人事件』(1983)

この作品は、1981年に起きた実際の事件を題材にした2時間ドラマ(テレビ朝日)である。

犯人役の大地の演技は非常に鬼気迫るものがあり、事件前から周囲との溝が深まっていたことがよく伝わってくる。

しかしながら、実際の殺人事件のドラマ化は、近年だんだんと難しくなっているだろう。被害者や遺族の立場への配慮が重んじられるようになってきたからだ。


犯人の奇妙なところは、「電波」云々もさることながら、寿司職人という職業への固執だ。おそらく父親が漁師だったことと関係があると思われる。

また、犯行当日まで就職活動を行っていたのも、無差別殺人犯としては珍しいのではないか。

無差別殺人犯の多くは、しばらくニート状態を経て凶行に至っている。だが本件の犯人は、すぐクビになって職場を転々とするものの、職に就く意思は犯行直前まであったようだ。


あと、ドラマでは全面に出ていなかったが、異性関係の欲求不満も犯人の性格・行動と関連しそうだ。

是非、ラカン派の精神科医・片田珠美氏に分析していただきたい。

以前、氏の『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)を読み、秋葉原の通り魔事件やヴァージニア工科大の事件など、あまり性愛の要素が注目されないケースでも、そうした側面があると知り興味深かった。

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