マリー・アントワネットの手紙
フランス最後の王妃マリー・アントワネットが人生最後に書いた手紙には、涙の跡が数か所あるという。
自身の処刑を前にした状況で、妹宛に書かれたものだ。
CiNiiで公開されている論文では、手紙のコピーや訳文を見ることができる(高瀬英彦「マリー・アントワネットの遺言書」2008)。
後世の人々の同情を引くために、わざと涙を付けたのではないかと疑う向きもあろう(私の友人のように)。
しかし手紙の内容を読めば、巷間に流布されている浅薄なイメージとは違う、真摯で実直な姿勢が窺える。
そもそもオーストリア出身の彼女が、フランス語で裁判を受けたことだけでも称賛に値する。
しかも「革命裁判所」という名の人民裁判あるいは異端審問めいた、結論ありきの恣意的な法廷において。
さらに、革命政府がでっち上げた、実子・ルイ17世への虐待疑惑を問われた際のマリーの毅然とした態度はフランス史に燦然と輝くものである。
母親と引き離されたルイ17世の処遇も実に痛ましい。
とくに、彼の後見人となった男の粗暴ぶりを知ると、革命派の市民に対して良いイメージを持ちづらくなる。
教科書的な知識だけでなく、歴史の裏面をもっと学ばねばならない。
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