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スピルバーグ解読

 スピルバーグは一貫して“迫害”を描いてきた。「激突!」に始まり、「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」「宇宙戦争」など、登場人物が巨大な暴力を一方的に受けるという理不尽なストーリーが多い。
 これは、やはり監督の出自と関係があるように思えてならない。「シンドラーのリスト」がまさにユダヤ人迫害をテーマとしているが、それだけでなく「激突!」の主人公は'David Mann'というユダヤ性を帯びた名前を持っている。それはダヴィデとゴリアテの対決を暗示するものであり、映画のクライマックスでは崖を転がる石が意味ありげに映し出される。石はダヴィデが巨人を倒した武器だからだ。
 スピルバーグの描く暴力は、執拗で過剰である。「ジュラシックパーク」では、捕食という目的を超えるような執拗さで恐竜たちが迫ってくる。そして過剰という意味で注目すべきは、ティラノサウルスの声だ。あれは人間の鼓膜の都合など一切省みない、過剰な暴力装置と言える。
 これだけ暴力を描いていながら、子どもに夢を与える監督といったイメージが強いのも凄いことだ。やはり「E.T.」のおかげだろうか。E.T.も大人たちに迫害されてはいるのだが。

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