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2023年5月の記事一覧

魔剣騒動 10

 「ん……?」
 すっかり気の抜けた雰囲気の流れる中で、レイア・ウルトゥスがその違和感に気が付けたのは、やはり彼女が一流の冒険者で、尚且つ一流の遺物調査官だったからなのだろう。
 本当に小さな、ごく些細な違和感。
 検体していたゴーレムの装甲下を流れる幾流の魔力の流れの中に極細い流れが存在していた。
 レイアは無言のまま、一瞬考えを巡らせる。
 装甲下の魔力の流れはそれぞれ役割を持っている。
 そ

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魔剣騒動 9

 盛大な音を立てて三人の行く手を阻んだゴーレムが地面に崩れた。
 完全停止を視認してから、レイアは構えたままだった魔導銃を腰のホルスターに戻した。
 それから小さく息を吐いた。
 「いやぁ、お疲れ」
 レイアの背後から呑気な声が掛かる。
 「……まったく、お前たちがもっと早く処理してくれれば楽だったのだが」
 今度は盛大にため息を吐いてやりながら振り向けば、アベルとアレンがレイアの方へ寄ってきてい

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魔剣騒動 8

 「アレン」
 ゴーレムの転倒を見届けることもなくアベルは短く仲間の名前を呼んだ。
 「俺、今後ろの連中を片付けたばっかりなんだが……?」
 呆れ交じりに抗議の声を漏らし、モンスターを片付けたアレンが通路からアベル達の居る部屋の中央へ走り寄る。
 アベルの横を通り過ぎ、レイアの横に着くと足を止め、それからパンという音を鳴らして両手を合わせた。
 「というか、俺とアベルの役目は逆の方が良かっただろ、

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魔剣騒動 7

 ゴーレムは遺跡探索を日常的に行うアベル達『爆発の勇者パーティ』には比較的見慣れた敵だ。
 その素材、動力は様々で古代遺物として未だに動き続けているモノもあれば、朽ちる寸前に瘴気によってモンスター化したモノもある。
 今回のこの遺跡に出現した目の前のゴーレムは、と言えば半遺物半モンスターと言った具合であった。
 そして、アベルにとってはこれが一番厄介なタイプのゴーレムでもあった。
 まず前提として

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魔剣騒動 6

 相変わらず周囲は暗く、水晶の剣を発光させていなければ一メートル先も見えないだろう。
 空也としてもここまでの広さがある未踏の前期遺跡は殆ど潜った経験がないので断定は出来ないが、一般的に人魔大戦前期の遺跡内部は永久発光体が設置されていることが多く、ここまで灯りがないことは珍しい。
 経年変化によって自然に灯りが無くなってしまったのか(本来的には消えない永久発行体も様々な外部要因によっては消えること

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