見出し画像

納豆オタクも唸る納豆、ここマサチューセッツにあり!

 たいへん私ごとではございますが、この私、生まれも育ちも福島県いわき市。納豆の本場、水戸より少し北に位置する県境で育ちました。フクスマではあるけれど納豆の本場で育ち、納豆にはかなりの思い入れがあります。
 今でこそ健康食品として全国区、どころか世界でも名の知れる食材として有名な納豆ですが、私が夫と出会った1980年代、まだまだ夫が育った関西では馴染みの品ではありませんでした。そんな夫を納豆好きにさせてしまったぐらい、私の納豆愛は強かったのです。

 そんな私ですが、人生何があるかわかりません。なぜかアメリカで暮らすようになりました。今の時代はたいへんありがたく、殆どの日本食材がお金を出しさえすれば手に入ります。しかしながらこの納豆愛に染まる私を納得させてくれる納豆は、地元の食材店にはありませんでした。ここはアメリカ、仕方がありません。冷凍の、まあ「納豆」それが食べられるだけでもありがたいと思わなくてはと、自分を納得させておりました。
 それでも本物の香りを知るこの私。やはりどこか納得いかないのです。そこで始めるは、自家製生活。このブログにはまだまだあいかわらずまとめていないようですが、師のサイト

http://www.ajiwai.com/otoko/make/natt_fr.htm

 を参考に自家製しておりました。温度を一定に保つためにクーラーボックスにお湯を入れたり、オーブンの発酵機能を使ったり、試行錯誤は色々。それでもやはり納得の味にはたどり着きません。所詮は素人。そんな折に出会ったのかこの納豆だったのです。

 そう!これです!!! この味!!これこそ納豆!!!  私がどれほど嬉しかったか想像していただけますでしょうか? 懐かしい友にここボストンで再会できた! まさに、そんな気分でございました。

 ボストン暮らしももうすぐ20年。今までこのパックをどれほど消費したかわかりませんが、どんなところで作っているんだろう。いったいどんな人が作っているのだろう。なぜ作り始めたのだろう。これほど大好きなお店でありながら、私は何も知らないのです。なにせ、今時ホームページもないのですから。。。 
 

 っというわけで「取材」に出かけることにしました。この取材を通して、私はますますこの納豆が大好きになりました。これからも、たくさんの方に広めていきたい、そんなマサチューセッツの大切なお味です。

どこで作っているの?

 こちら住所は

Kendall Food Company
448 Huntington Road Worthington, MA 01098-9550 

うーん、Worthington とは何処。。。

  調べてみますと、ボストンからおよそ96マイル。やく150キロぐらい離れた山の中です。我が家からナビを見ると、およそ2時間15分ぐらいのドライブ。友人と一緒に遠足気分で出かけました。

 ファームのおじさんに電話をすると、毎日作っているわけではない。作ってる最中だったら相手もできないし、作ってない日の方がいいね。とにかく出かける日に電話してね。とのこと。朝電話をすると、ちょうどよかった。昨日作ったから今日は大丈夫。山道が凍ってるところもあるから、ゆっくりおいでね。と優しい言葉をかけてもらいました。さあ、出発!

 高速道路も問題なく、出口までは1時間30分ぐらい。おじさんが高速を降りてからが長いんだよねえ。。。といってたけど、まあそんなものかねえ。。。とのんびり構えて走り出したら、ほんとその通り。確かに長かった😀
 随分暖かになった日だったけど、まだまだ雪も残ってるし、道端にはこんなつららがいっぱい。

 やっぱり雪の日にこなくてよかった。。。などと、今更ながら思ったりして。。。そして山坂を登ったり降りたりしながらようやくたどり着きました。

                素敵な看板  

山を登りきったところで広がる景色がとても美しい丘の上にある、可愛い農場です

 ところが、誰もいない。。。

 ??? あれ?? 今日行くねって言ったんだけどなあ。。朝電話したし。 っとおもいながらも声をかけて。でも誰もいない。  でも、ドアは開いているのです。人が入れるような窓も開いてる。  ??? っと思っていたら、しばらくしておじさんが帰ってきました。

 ごめんね、郵便局に行ってたんだよ。って。 ドアも開いてるからどうしたのかと思ったというと、誰も泥棒なんか入りゃしないよって笑ってる。
そんなのどかな場所でした。

どうして納豆を作り始めたの?

 それは私の素朴な疑問でした。率直に聞くと、やっぱり奥様のアイデアだったとか。おじさんの奥様は日本人だったのです。

 1977年、ボストンで出会ったお二人は結婚します。そしてボストンで暮らし始めます。その時に納豆好きだった奥様が、いつもアジア系の食材屋さんで納豆を買っていたのだとか。でも、とても高い。それにそんなに美味しくない。それなら自分で。。っと、まるで私のようですが自家製生活を始めたそうです。

 試行錯誤しながら美味しい納豆を作れるようになって、そして家族で食べて。そんな暮らしが続いた中で、ある日ニューヨークに住むお友達が訪ねてきたときにご馳走したのだとか。そしたらそれを気に入ったお友達が、ぜひ売るべきだ!商売にするべきだとすすめてくれたそうです。

 でも、そんな販路があるわけでもない。。。っと思っていたら、そのお友だちが中心となってニューヨーク界隈で口コミでどんどん販路が広がっていったのだとか。それが1990年代の終わり頃だそうです。

 ちょうど私がボストンに暮らし始めた2000年ごろ、日本語学校でもこの納豆がとても人気でした。お店では売っていない。でも、美味しいということでいくつかのグループが共同購入をしていました。私もそんなグループの一つから買っていたのです。私がこの納豆に巡り会えたのも、そんな流れの一つだったのですね。

どうやって作っているの?

 このかわいい納屋のお隣がおじさんのおうちです。
作っている場所の写真を撮らせてもらえませんか? とおじさんにお願いしましたが、それは許可がおりませんでした。 でも、写真なんかなくてもいいかも。

 納屋のお隣がかわいい納豆作りの工場になっていました。
叔父さんのおうちのキッチンの離れのような感じです。
キッチンから続いた間が大きなへやになっていて、そこが納豆作りの工場になっているのです。

 大きな納豆専用のキッチンには大きな樽があって、その中にかわいい小粒の大豆がいっぱいありました。アーカンソー州の無農薬大豆を作ってる農場から取り寄せているのだとか、本当に小粒のかわいい大豆です。 私は味噌作りをするのでアメリカの色々な大豆を取り寄せてみましたが、こんなにかわいい小粒大豆を見たのはアメリカで初めてでした。それぐらいかわいいお豆でした。

 そして、工場の一角は何層にも分けて蒸せる大きな蒸し器。これで大豆を蒸して、その横にある撹拌器のようなところで納豆菌をまぶして、そして恒温器で培養する。そんな一連の作業が丁寧に少人数でできるような、そんなかわいい工場でした。

 恒温器も初期の頃の機械がまだ現役だけど、これではもう間に合わないだ。って。その10倍はある大きな物が使われていました。蓋を開けてもらうとかわいいパックが並んでいます。プーンとホント美味しい納豆の香りがしました。

 納豆菌は日本から買っているそうです。『Natto Moto』っておじさんはよんでいました。今はアメリカでも買えるようですね。

https://amzn.to/42OvpZw

  私が訪ねた時、ちょうどイギリスからの注文の品を作っているところだったので、冷凍して送るのですか? って聞いてみました。
 おじさんのこたえは、風味が変わってしまうということで冷凍は絶対しないのだとか。納豆『工場」のお隣の部屋には大きな冷凍室があったけど、置いてあった納豆はほんの一箱、40パック。作り置きをしないということも、おじさんのこだわりだそうです。

買いたい場合は。。。

Kendall Food Company  はホームページもありません。フェイスブックページもありません。全て、電話での注文のみ。
 でも、それにはおじさんなりの考えがあるのです。

 納豆という発酵食品ですが、発送する場合は
UPS  https://www.ups.com/us/en/global.page   日本でいう宅配便で送られます。その場合、日本のような再配送などのサービスはこの国にありませんので、玄関先に放置される事になってしまうのです。炎天下の中や、留守の場合は数日玄関先に放置される場合もあるのです。でもそれがどれほど発酵に影響するか、納豆という食品に慣れていない人には理解してもらうのが難しいのだとか。

 そこで直接必ず電話で話をして、宅配便が受け取れる日にちを確認したのちに、逆算して発送日を決めて出荷するそうです。こんなところにも、おじさんの納豆への思いが垣間見れますね。

電話番号は:(413) 238-5928 
 
こちらに電話をしたら、おじさんが注文をとってくれます。留守番電話の時もありますが、メッセージを残したら必ず返信してくれますよ。

 お値段はひとパック4ドル。少しお高く感じるかもしれませんが、このひとパックには、普通の3つ重ねぐらいで売っている納豆分ぐらい入っているのです。それでいて、この品質。私は自信を持ってお値打ち価格と言わせてもらいます。

 サンフランシスコに住む私の友人は、あんなに日本食材が揃う西海岸であっても、これに勝る納豆はないと一年に一度購入しているそうです。そんな彼女をおじさんも覚えていて、「あー君かい、一年に一度オーダーしてくれるカリフォルニアの人!」って話がはずむのだとか。

 以前はオーダーを受ける時間が決まっていたそうですが、今はいつでも受け付けてくれます。ぜひ電話してみてくださいね。


おばさん、ありがとう

 今回私がKendall Farm に出かけた話をしたら、何人もの友人たちから「おばさんは元気だった?」「最近おばさんと話してないな」と言われました。

 そう、おじさんに納豆の魅力を教えたのも、納豆作りを教えたのも「おばさん」だったのです。でも、残念なことに2年前に亡くなられたとか。おじさんも、おばさんのことを話すときは、ちょっと寂しそうでした。

 今回私が出かけたのは 3月の半ば、それでも川も凍って、こんな風に雪に覆われています。

 ボストンで出会ったおじさんとおばさん。自分たちの理想の生活を求めて、この村にたどり着いたのでしょうね。雪で覆われてはいましたが、玄関先には小さな可愛い池がありました。そして、石の灯篭も。
おばさんは、ここで家族のために美味しい納豆を作っていたのですね。

 そしてそのおばさんの納豆は、たくさんの日本の味を求める人々を幸せにしてくれました。

 先のサンフランシスコの友人も注文したとき、「カリフォルニアならいくらでも美味しいオーガニックの納豆があるでしょ」っておばさんに笑われたそうです。 でも、ボストンで暮らした彼女にとって、この国でこのおばさんの納豆に勝る納豆はないのだとか。

 以前はおばさんが週の間に時間を決めて、電話で注文をとっていました。それは日本語でオーダーが取れるから。おばさんが亡き後、おじさんが注文をとっているけれど、日本人のお客様は少し少なくなったそうです。お一人で作ってる今それぐらいがちょうど良い笑ってたけど、「自分が日本語ができないから」って、おじさんも少し寂しそうでした。
 日本語が話せるおばさんが亡くなってしまったので色々大変だったようです。新しい人には売ってくれなくなったという噂もあったとか。でも、それにはこんな理由があったのですね。大丈夫。新しく注文するかたも、もちろん買えますよ。ぜひおじさんに問い合わせてみてください。

 おばさんが丹精込めて味を追求した納豆は、こんな感じ。
おばさんがなくなられた後も、おじさんが一生懸命作っています。
キッチンも、大豆小屋もどこもチリ一つないほど綺麗。おじさんがこころを込めて作っている様子が伺えます。

 おばさん、美味しい納豆にこだわって作り始めてくれてありがとう。
おかげで、アメリカにいてもこんなに美味しい納豆が食べられますよ。

 ありがとう、ごちそうさまでした。
Kendall Natto は、おばさんがこの国に生きた証ですね。

https://www.legacy.com/obituaries/gazettenet/obituary.aspx?n=yoko-yokoyama-kendall&pid=186485039&fhid=15507

Kendall Food Company
住所:448 Huntington Road Worthington, MA 01098-9550
電話:(413) 238-5928

1992年からのアメリカ暮らし、ボストンはそろそろ四半世紀になりました。 「取材」と称していろいろ経験したり、観光ガイドも楽しんでいます。 https://locotabi.jp/loco/hyacinth 応援していただけたらとても励みに思います。