見出し画像

30で大学生になる

青天の霹靂

横浜国立大学経済学部の3年次編入試験に合格し、今年の4月から大学生になりました。

29歳の大学3年生です。

現在2ヵ月弱通学し、授業や課題のサイクルなども掴めてきて、中間テストを目前に控えているところです。
夜間とか通信とかではなく、普通に毎日通っています。
授業によっては18歳と一緒に受けています。10歳以上年下の若者、流石に接し方がわかりません。(向こうが一番思っていると思うが)
先日の授業で先生が「2001年にアメリカ同時多発テロというのがありました。皆さんはまだ生まれていないと思いますが」と言っていて驚いたし、「この中に結婚している人はいますか?いないか!」と言われた時は苦笑いしました。

「大学に行く」と急に言い出したことで親族も友だちもビックリしていましたが、合格したことに関しては正直わたしが一番ビックリしています。
今でもたまに夢かな?と思うほど。

でも、わたしは昔から人生の必然性を信じていて何事もなるべくしてなると思っているので、この選択はきっと間違いではないはずなのです。

今回はアラサー大学受験の忘備録。

学歴コンプ?

短大卒で社会人になって9年、正直なところ学歴コンプレックスをあまり感じることなく人生を送ってきました。
卒業した高校は地元の普通の進学校で、90%が大学受験するのですが、わたしは一刻も早く親と田舎を離れたい気持ちと、ウェディングプランナーになりたいという気持ちしかなかったので『特待制度で学費が無料になる』という夢のような文言だけ見てどこにあるかも分からない短大を志望し、大学受験はそもそもしませんでした。
今となっては「何と愚かな!」とぶっちゃけ思いますが、とにかく閉鎖的でつまらない無刺激の田舎と、親族からの「公務員になれ」という圧、何よりヒステリックオカンに耐えられず明確に10歳で「18歳になったら1人で暮らす」と心に誓っていたので、「センター試験利用入試、任意の2科目で出願し200点満点換算で上位3%に入れば学費免除」というヤバい募集要項に心撃ち抜かれたのです。
親はお金を絶対に出してくれないので(出してくれないというか出す金がないので)学費免除は最強の魅力でした。
しかも受験科目「任意の2科目」て。さすがに片方は英語か数学って相場決まってますやんか、嘘つきなやあんたと何度も何度も何度も募集要項を読んで、やっぱり「任意の2科目」と書いてあったので勝利を確信しました。忘れもしない高2の夏です。

国語が我ながらとんでもなく出来る子どもだったので1科目は確定。あとは暗記でどうにかなりそうな現代社会を受けました。
詳しい結果は忘れましたが、当然余裕の合格、Gラン短大スペシャルサンキュー。今でも冗談抜きに心から感謝しています。
あの短大にあの制度がなければ、わたしは親元を離れることも関西に出ることも友だちに出会うことも夫に出会うことも今回大学に行くこともなかったのですから。

もちろん就活の時に学歴フィルターを目の当たりにした時は「先言うといてー!」と思いました。
ド田舎で高卒シングルマザー(フリーター)の元に育つと大学進学や就活へのリテラシーは初期装備されないため、学歴フィルターって都市伝説だと思っていたんです。可愛いですよね。(笑)
でも結局は希望の職に就けたこともあって、長らく学歴コンプとは無縁の人生でした。
学歴で判断するような人も周りにいなかったからかもしれません。ありがたいです。

終わりの見えない不妊治療

時は流れ28歳になり、結婚式を終えてから子どもを考え出し、持病もあって不妊治療をしていたのですがなかなか授かることができませんでした。
夫は協力的で検査の結果も問題なく、不妊の原因はわたしにありました。
不妊治療といっても「一般」「高度」と分かれており、わたしたちは一般不妊治療をしていました。
それでもわたしの排卵障害はなかなか厄介で、服薬はもちろん卵胞チェック(卵子の育ち具合のチェック)のために毎週決められた日に通院したり、場合によっては注射をしたりと卵巣ファーストの生活を強いられていました。

当時の仕事は基本的にお昼からだったので、通院は午前中を使って比較的問題なく出来ていましたが、「今周期はなかなか育たないね、3日後(排卵を促す)注射を打とうか」などと急に提案されることもあり、シフトによっては職場に遅刻や早退のお願いをすることもありました。
上司に「すみません、◯日の午前はお休みさせてほしいです」と言わねばならず、さすがにそれが何回も続くと「病院に行きたくて」と言わざるを得ず、そうすると結婚したばかりなので上司が「妊娠かな?」と声に出さないまでも確実に心で思っているのがわかります。
このストレスは地味に心に来るものがあります。なぜか申し訳なくなるんですよね。わたしの卵巣がご迷惑をお掛けします…。
そのような状態が1年くらい続き、そろそろ人工授精も視野に…と先生から提案されたタイミングで夫が「東京で仕事をしたい」と言って転職活動を始めました。

特に反対する理由もなく、わたしは東京に行ったら何をしようかな〜と漠然と考えていたのですが、不妊治療をしながらの転職って全く現実的じゃないんですよね。

「ここで働かせてください!でも不妊治療中なので週1回通院していて場合によっては急に注射打つために早退とか遅刻するかもしれません!あと上手くいったら妊娠するので育休取得します!!!」

そんな人間なかなか雇われませんよね。
外資系企業や、日系でも大企業だったら理解あるのかな?
でもわたしは何といってもGラン短大卒でこれといったキャリアがあるわけでもないので採用される可能性はほぼナシ。
仮に採用してくれる会社があったとしても、不妊治療中はお酒を控えたり夜更かしを避けたりする必要があって、なかなか社内で人間関係を築くコミュニケーションを取るのが難しいのです。
そんな中でふと「大学に行ってみるのはどうかな」とぼんやり思いつきました。昔、冗談半分に「大学に行ってみたいな〜」と言ったとき夫も「いいやん!」と言っていたし。

大学を卒業すれば当たり前ですが最終学歴:大卒になるので、職務経歴に空白ができてしまうにせよ就職の幅も短大卒の今より広がるだろう。
国公立大学は休学の費用がかからないため、もし在学中に妊娠しても休学の選択肢を迷わず取ることが出来る。
大学生なら勉強以外にもバイトをしたりフリーランスのような働き方もできる。
それにもし、このまま妊娠できずただ30代前半を過ごしていくよりは、学歴や人生における話のネタ、経験を得ることができた方が有意義ではないか。

考えれば考えるほど今のわたしにピッタリの選択に思えてきました。

座右の銘:思い立ったが吉日

すぐに関東圏で社会人編入枠がある国公立大学を調べ、その時点で出願に間に合うのが横浜国立大学の経済学部でした。
経済学部では例年3年次編入を15人募集しており、その中の若干名が「社会人編入枠」となっています。

募集要項にはこのように記載がありました。

社会の急激な変動の中で知的関心の変化や多様性が生じ、リカレント教育や生涯教育への需要が高まってきています。とくに近年では、国際経済社会の再編、日本経済の地位の変化、地球環境問題の激化など、新たな諸問題が生起しています。このような状況の中で、すでに一定の教育を受け、あるいは、社会的な活動を経てきた者に、改めて経済学等を学ぶための機会を提供することが、編入学の制度を設けた趣旨です。

横浜国立大学 R6経済学部3年次編入募集要項より抜粋

多分、社会人編入することって一般的じゃないしそもそも30過ぎて大学行って何になるのとか、「それで君はどうしたいの?(笑)」みたいな世間のノイズってあると思うんですが、この募集要項をじっくり読んで受けてみようと思いました。

実際わたしは18歳までは親と田舎を離れたい気持ちとウェディングプランナーになりたいという気持ちしかなかったし、その2つを叶えられた上でさらに不妊治療がうまくいかなくて、そこでようやく次のステップを考えることができるようになったわけです。
この知的関心の変化がリカレント教育や生涯教育への興味になるのはごく自然なことだと思えたし、大学側がそれを明文化して学ぶ機会を提供しようと門戸を開いてくれているのだから素直に受験してみるべきとさえ感じました。

余談ですが、横国の社会人編入は出願時に指定のテーマの論文を2つ提出することになっており、その論文を基にした口述試験で合否が決まります。
今年度の論文のテーマの1つは「少子化対策」でした。
自分自身がまさに出産適齢期の女性であるため、このテーマはかなり主体的に取り組めると感じ、そこも運命的に思えました。
編入試験の詳細についてはまた別で書きたいと思います。

「もし子どもができたら、休学したらいいよ」と夫は言ってくれていますが、せっかくなのでここは流れに身を任せて、在学中は不妊治療はしないつもりです。
っていうか夫、あなた何でも自由にさせてくれてほんと優しいわね。
わたしの人生は夫に出会えて変わったよ、スペシャルサンキュー。

大学合格のお祝いしてくれたラブリー夫

と、ここまでが4月中旬に書いた文章です。

続・青天の霹靂

その後GWに体調不良が続き、なんと妊娠が発覚しました。
現在9週で母子手帳も交付され、予定日は12月25日。
「不妊治療を諦めるとできる」という有名なジンクスがありますが、希望を持ったまま意図的に諦めることなんてできるわけないので、その真偽の程は神のみぞ知る。
でもまさか本当に?驚きました。
万年遅寝遅起、運動不足だったわたしが週5で朝早く起きて通学のために太陽の光を浴びながら片道1.6キロ歩いたのが良かったのか?
まだ安定期でもないため、どうなることかわかりません。
妊娠初期にこういったことを書くのは憚られるという気持ちも少しありますが、わたしの人生なのでわたしが決めることにしました。

個別の報告はまだ夫以外誰にもしていません。
なぜならもしものとき気まずくさせたくないからです。
安定期に入ったら伝えたい人に連絡するね。

幸いつわりもそこまで酷くないため、大学には普通に通っています。
秋学期はコマ数を絞って無理のない範囲で通学する予定です。

妊娠した今、やはり経済学部に入って良かったと感じています。
今の日本は、「少子高齢化です!産んでください!働いてください!納税してください!」と求めながら、「社会保険料負担増!児童手当は所得制限!年少扶養控除は廃止!」と現役世代・子育て世帯をがんじがらめにしています。
この流れは子どもが欲しくても諦めたり産み控えたり、また、子どもを持たない選択をした現役世代にとっては子育て世帯が恨めしく感じられるような社会構造を生み出してしまいます。これは本来、すごく悲しいことだと思っています。
わたしは、受験の課題論文にも書いたのですが、「少子化対策といえど、誰しもが結婚や出産を強制されることなく、自分の人生に希望を持ちながら前向きな選択の一つとしてそれらがあることが望ましい」と考えています。
そういった考えから、所属ゼミは財政政策を選びました。
自分が現役世代、出産適齢期の女性として考えていることを大学の勉強で生かしていきたいと強く思っています。
他の3年生と違って就活があるわけではないですし、編入生は最大4年通う権利があるので、ライフワークバランスを保ちながら2〜3年での卒業を目指したいと思っています。
まずは来月の中間テストと7月の期末テストをパスして、春学期に24単位修得するのが目標です。

そのあとは大学生の醍醐味である長〜い夏休み。
アラサーなので特に予定はありません。


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?