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 日本 vs 英国のお医者さん状況:日本のお医者さんの働きすぎ問題。

私は日本で>10年、中国で4年、英国で>5年の間、病院で医師として働いているので、それぞれの医療システムについても思うところはありますが、特に日本のお医者さんが働きすぎな問題についてガッツリと書いておきたいと思います。


*1週間の勤務時間は日本は英国の2倍


勤務する科によっても、病院によっても、個人個人にスケジュールによっても違うので一括りには言えませんが、私が自分自身で体験した(している)典型的な1週間の勤務状態で比べてみました。

日本のお医者さんの勤務時間は、単純に比較して英国の2倍! 

私も英国で働くまでは勤務時間の計算の仕方を知りませんでしたが、日本以外では多分グローバルに似たようなものと思われ、Out of hoursの夜遅くの勤務時間はx 1.33で計算します。PAというのはProgrammed activitiesと言って、スケジュールのことですが、4時間を1PAとして午前1PA、午後1PAで普通の日は2PAみたいな感じと考えてください。(数字は時間)

日本にいたときには週1−2回夜勤があり、夜勤と言っても翌日休みというわけではありません。月曜日午前→午後→after 5→夜中→翌日火曜日ぶっ続け→午前→午後→溜まっている仕事を片すともう夜8時ぐらい、みたいな感じです。しかも週6勤務は当たり前でした。この感じだと(1ヶ月に1回はある土日週末勤務は入れないでも)週90時間

対して私の現在の職場は遅くても夜9時には終了し、もしそれよりも多く働いた場合にはどこかで相殺してもらうか、残業代をもらう形です。もちろん普段は週5で、週末働くときにはその週は前日の木曜日や週明けの月曜日はしっかりお休みをもらえるので ゼロデイ Zero Dayと呼ばれています。

日本のお医者さんは英国のお医者さんの2倍以上勤務時間が長い
→驚きの週90時間!?

*お医者さんも勉強する時間は定期的に必要と考えてくれるのは英国


英国では最低1週間に1回4時間 ( 1PA) の勉強時間(SPA= Supporting professional activities) をもらえます。この時間は溜まっている書類を片付けたり、読みたい資料を読んだり、興味のある症例数を集めたり、図書館に行ったり、など自由行動になっています。

英国のお医者さんは1週間に最低4時間、勉強する自由時間がもらえる


*同僚が休んでいる時のカバーは日本にはない

職場で同僚が休みをとったときには、彼・彼女の分の仕事は残っているものたちの肩にかかってくるのが日本ですが、英国では全員が休みをとることを前提に最初からスケジュールが組まれています。

つまり6人分の仕事量があったとしましょう。
 日本の場合 5人が6人分の仕事をしているオーバーキャパ

日本ではAさん〜Fさんと6人の同僚が働いていて順番に休みをとった場合、
休みの分は他の人がカバーしている
常にオーバーキャパの問題 (ただし日本の場合休みが少ないですね)

英国の場合、

A~Fの6人分の仕事量に対して、休みをカバーするための7人目がいる(Gさん)、オーバーキャパにならず通常運転

英国のお医者さんは同僚が休みのときにそれをカバーする必要がない

*休暇の長さ 2週間(日本)vs 8~10週間(英国)

英国では年間40日間のお休み(土日含まず)と10日間の学会勉強会参加(Study leave) がもらえるので、年間で8〜10週間は働かなくていいことになります。上に休みのカバーについて書きましたが、つまり、6人いたら48〜60週、つまりいつも誰かは休みという状況が続いていることになります。それを残りの人で回していくとなると、常にオーバーキャパで働くことになるからです。日本では休みをとってごめんなさいという気持ちになる。英国ではカバーの人がいるというのはこの休暇の長さにも関係していることになります。

英国では休みがしっかりもらえるし、休んでごめんなさいという気苦労も全くない。(ちなみにお休みから職場に復帰したときにもお土産はいらない!)

*日本の方がお医者さんの数は少ない


今ちょっとググってみるとお医者さんの数は人口1000人あたり、イギリスが2.8人、日本は2.4人と同等〜少ないということも知り、驚いています。

想像では日本の方がお医者さんの数が多いと思っていました。https://clius.jp/mag/2021/07/07/doctors-population-about/

お医者さんの数は日本の方が少ない イギリス2.8人/1000人、日本2.4人/1000人

*医療サービスは日本>>>英国

ご存じの方も多いと思いますが、医療サービス的には日本>>>英国です。日本ではいつでもどこでも好きなときに、好きなお医者さんにみてもらうことが実質可能ですが、英国では現在、手術によっては7年待ち(人工関節など)とコロナ以降医療崩壊と言われています。

このおじいさんは人工股関節の手術を6年待っている。

https://www.itv.com/news/wales/2023-02-23/man-still-waiting-for-urgent-hip-replacement-six-years-on

医療サービスの質 日本>>>英国

*まとめ

そうなんです。3分外来診療だったとか、医者がそっけないとか、医者は儲すぎ(この勤務時間を見れば普通の人の2倍もらってても納得!)、など色々な思いもあるかと思いますが . . . 日本のお医者さんは良質な医療をいつでもどこでも早く、正確に、ベストに提供できるように、働きすぎになっていることがお分かりいただけたと思います。最近では日本でも女医さんの数も増えてきました(英国ではすでに女医の数>>男医です)。結婚して家庭のある場合、女医さんは特に状況が複雑です。

お医者さんの待遇改善が必要です。どこかで職場環境の見直しをしないと、日本の医療の未来は危ないと個人的には考えています、ていうか、日本人、みなさん働きすぎ問題なのかもしれませんが!


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