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「純(百年文庫96)」感想

3つの短編

普段は、本を読み終わったら、twitterに感想をつぶやいている。

ひさたか@読書垢(@hisataka0)さん / X (twitter.com)

けれど、今回は絶版してる本なので、わざわざ不特定多数の人の目に留まるTwitterで書くのもどうかと思い、noteに書くことにした。

載っている短編は、武者小路実篤「馬鹿一」、高村光太郎「山の雪」、宇野千代「八重山の雪」の3つ。

「馬鹿一」は最近になって別の本で出版されている。
「山の雪」は版権が切れていて青空文庫でタダで読める。
残念ながら、「八重山の雪」は古本などで読むしかないかもしれない。

武者小路実篤「馬鹿一」

自分が「百年文庫 純」を買ったときには、この文庫本は売っていなかった(2023/6/13に出版されている)。

売られるのが知っていたらこちらを買っていたので、「馬鹿一」が目的だった自分としては無駄な買い物になってしまったのだが、まあ、良しとしておく。

もし買わなかったら、収録されていた他2作品に出会えなかったかもしれない。

内容は、馬鹿一という絵や詩を書く人間の話で、この人物と同姓同名の人物が同著者の「真理先生」にも登場する。

確か、「真理先生」では画家で、詩は書かなかったはず(詳しくは覚えてない)なので、いちおう別人ではあるのかもしれない。

「真理先生」に肉付けする前に書かれた短編バージョンなのかと思って調べてみたら、どうやら違うらしい。

新潮文庫に載っている年譜で調べたところ、昭和24年(1949年)の64歳に「真理先生」を発表し、それから昭和28年(1953年)の68歳に「馬鹿一」を出版しているようだ。

なんで出がらしみたいな作品をわざわざ書いたのか理解に苦しむが、68歳で年を取っていたからと言われたら、そうなんだろうなという感じはする。

むしろよく64歳で、「真理先生」を書いてくれたと称賛するべきなのだろう。

正直言って、「真理先生」のほうがクオリティが高いので、よほど好きでないのなら特に重複して読む必要はない内容かもしれない(自分は好きだから読んだし、文庫の方も買う予定)。

興味がない人も、「真理先生」はぜひとも読んでみてほしい。
自分は「真理先生」を、Twitterでつぶやいている「名刺代わりの小説10選」に選んでいるほど好きな作品なので。

高村光太郎「山の雪」

この短編集、唯一の随筆。
正直、読み始める前は勝手に小説だと思っていたので面を食らった。

内容はかなり短く、kindleだと8ページの表記になっている。
ちなみに、百年文庫の本のバージョンだと、11ページ分。

クオリティとしては結構高めで、収録作品の3作中、一番面白いと思った。おそらくまた読み返す。

内容は、山の動物や雪の様子などの、雪国で暮らす際にふれる自然について細かく書かれている。

つまりは、「春はあけぼの……」で始まる「枕草子」みたいな感じ、と言えばけっこう正確に伝えられていると思う。

青空文庫で調べてみると、「山の春」と「山の秋」もある(夏はない)。

統一感から考えて、「なんで雪? 冬じゃないんだ」という感じもするが、あんまり細かいことを気にしても仕方がない。

軽く読んでみると、この二つも随筆で、分量も短め。
雪が面白かったので、どちらも読んでみる予定。

宇野千代「八重山の雪」

この短編は古本でしか読めないみたいで、あんまり気軽に読める環境にないので軽く触れるだけにしておきたい。

内容としては、嫁ぎ先の家になじむために半年ほど住みに来ていた日本人の女主人公に、ジョージという英国の海兵隊員が日本に来て、出会い、恋をしてしまう話。

一言で言うなら、「外国人との禁断の恋」みたいなのが主題なんだと思う。
いちおう、実話を基にしているらしい。

3篇入っている中、半分ほどはこの話なので、ボリュームはちょっと多め。

つまらなくはないが、「冷静に考えたら結婚相手を捨ててまで、外国人とくっついた主人公がクズなんじゃね?」という感じがしないでもない話。

まあ、こういう身勝手なことは現実では中々できないから、物語としての需要はあるのかもしれない。

男でも全然読めるが、女だったらもうちょっと純粋に楽しめる内容な気もする。

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