石川紀行~一人旅後編~
富山駅から金沢駅までの移動時間は「あいの風とやま鉄道」を使って小一時間。外の景色を見ながら「旅屋おかえり」を読もうと思っていたのに、連日の寝不足と疲れから意識が飛んだように寝てしまい、気づいたら金沢駅に着く頃だった。乗ってすぐ、眠りに落ちるまでにみたあの光景。いまでもキラキラと輝いている光景。意識を飛ばしてしまったことがいまでも悔やまれる。
友人のインスタグラムでしか見たことのなかった金沢駅。駅を出て、何度も振り返りながらじっくり眺める。初めて実際に見た。文字通り立派で、壮大なつくりだが光景に違和感なく馴染んでいる。このすぐ近くにバスロータリーがあり、7番乗り場から金沢21世紀美術館へと向かった。
見事に逆光。
旅先でなんと、まさかの面倒くささが発動してしまって美術館の周りを散策するを諦めてしまった。次は怠らないようにしたい。
コレクション展1と、特別展・日常のあわいを鑑賞。写真は載せられないけれど、ミニチュアの展示や、文字の展示など視覚的に面白い展示をたくさんみることが出来て、目も頭も心も満たされた。
とても印象に残っている、東日本大震災・友達・住まいにまつわるエッセイの展示ブース。人々の生の声が聴こえてくる。生きている限り、もっともっと言葉をのこしていかなければ、文章を紡いでいかなければ、と思った。これは特有の頭脳と読み書きの能力、言葉を話し、聞き、それを理解する能力が供えられた人間という生き物の義務ともいえるのかもしれないと感じた。一瞬いっしゅん、その刹那の感情を、誰のためでもなく、言葉にしていかなければと何かに駆り立てられる展示だった。忘れられない。
レアンドロ・エルリッヒ『スイミング・プール』。これもインスタグラムでよく目にしていた。いわゆる "インスタ映え" スポット。やっぱり想定通り、カップルで溢れていたけれど、どうせ来たのだから、とひとりでしっかりみてきた。こういう、空間的な上からと下から、どちらの目線でも違った目線で楽しむことができる建築方式が面白い。
これもよく見ますよね。ウサギみたいな椅子。コロナの感染対策から置かれている椅子の数は減っていたけれど、ちょこんと佇むウサギたちが可愛かった。ちょうど差し込む陽の光と影とのコントラストができあがっていたのでパシャリ。
最後に、ひがし茶屋街を目指して歩き始める。バスがあればバスで行こうと思ったのだけれど、ちょうどいいバス停が見当たらない(はずはない。正確に言うとバス停はあったのだけれどどのバス停からのバスに乗れば茶屋街にいけるのかがイマイチ分からなかった)のと、このとおりの天気、ちょっと遠いけど歩くことにした。
帰宅途中の歩いている中学生や、自転車で私を追い越していく高校生を見ては、ここが生活の拠点で、ここで暮らしている人々がいる、と、今回の旅ではそんなことばかり考えながら歩いていた。
茶屋街へ向かう途中、信号待ちにて。建物と建物の間にふと顔をみせた雲。夏の始まりと、どことなく懐かしさのようなものをふわっと感じた。アニメのワンシーンにでも出てきそう。
渡りきれば茶屋街の入り口、という橋の上にて。遠くに制服を着たふたりが、川のほとりで戯れている。すごく良いところだと思った。ここでもアニメか映画のワンシーンを感じた。
ミラーレス一眼で茶屋街の入り口を。実際はもっともっと奥行があって、先にみえる山がもっとこんもりとしていて迫ってくるような勢いを感じたのだけれど、カメラでは完全に切り取れない。その勢いとかがこの写真だとぜんぜん伝わってこなくて悲しく思う。けれどそのもどかしさを、少し心地よくも感じるのは、写真でみるより目でみるのがいちばんだと知っているからだと思う。
茶屋街が近づいてくる。
どーん。
人がいない。コロナの影響でほぼすべてのお店が閉まっていた。残念、またいつか。
奥へ突き当り、振り返ってパシャリ。本当に天気に恵まれた。前日までチェックしていたYahoo!天気のアプリの予報はずっと雨のはずだった。茶屋街で甘味を口にすることは叶わなかったけれど、この天気で半分はどうでもよくなった。
金沢駅までバスで向かうため、バス停へと向かう。バス停が何個もあるので今回は歩いて探し回る。さっきの橋にて、反対方向をパシャリ。本当に素敵な天気。大好物の「水面のキラキラ」の捕獲に成功。橋の上からぼんやりと、しばらく見つめた。こう、キラキラするものにいつまでも惹かれていたい。
金沢駅に着いた。すぐ近くのスタバでSUPER BEAVERの生配信ライブをみた。彼らのライブに行きたい。
いよいよ夜行バス出発の2時間前。夜ご飯を食べてすぐバスに乗ろうと思っていたので、その前に夜の金沢駅もパシャリ。また来ようと思いながら見上げる景色、良い旅の締めくくり。
今回の旅でいちばん考えたこと。
それは、自分にとっては非日常である旅先という場所で、生活を営む人々がいるということ。会ったことも存在も知らないけれど、そこで生まれ、そこで育ち、そこで学び、そこで働き、そこで恋をしたりして、そこで生きている人々がいるということ。当たり前かもしれないけれど、不思議な気分。そしてちょっと切ないような気持ちになりながら、街ゆく人々とすれ違った。
そして、やっぱり誰かと出会って、親しくなるのは奇跡のようなことだと改めて思う。数え切れないほどの人がいて、そんな場所で誰かと繋がる、それだけで実はものすごい確率の奇跡だったりする。出会っただけですごいのに、親しくなるのはもっとすごい。出会いって奇跡だなあ、とにかくものすごいことだなあって。
大事にしたいと思う人たちのことを、ちゃんと、もっと、大事にしよう、そんなことを思う一人旅だった。
こんなご時世だけど、私は私なりに後悔しないようにしたい。
次はどこへ行こうか。
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