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あなたがスカートをはける理由(NHK 『僕がスカートをはく理由』より)

Twitterを見ていたら、こんな記事が拡散されているのを見かけました。

先日、男子の制服と女子の制服を自由に選択できるようにする「ジェンダーレス制服」という「先進的」で「多様性」に配慮した取り組みをLINE NEWSで見かけました。その記事には、男子制服を着る男子、女子制服を着る女子、そして男子制服を着る女子が載っていました。

そんなものが流れてきたら反応しないわけにはいかないので、この記事をTwitterで拡散。


最後書かれてるけど、スカート履きたい男子はいつまで経ってもジェンダーレス制服/ファッションの議論の土壌には上がらないんやで
ただ、今の日本社会で「男子もスカート選べますよ!」って言ったところで、気持ちよくスカート履いて登校出来る男子(見た目が女子ではない)はまずいないんだけども
ちなみに、私服やジャージでの登校・ジェンダーレス服っていうのは、性別に囚われない男女にはウケても、現代の女性性の服装をしたい男子やMtF願望の男子には的外れな解決策だからね

そしたらまさかの男子でスカートを履く生徒を発見。この子は特段自身の性自認について語ってはいませんが、バックグラウンドは特段関係ないでしょう。

この子は高校生ながら「男らしさ」「女らしさ」の固定観念やLGBTQについて深く考えており、中々立派だなと思います。

またこの高校生が在籍する学校は山あいに位置する小規模の公立校ながら、学校のキーワードとして「多様性」を掲げ、実際に制服を「LGBTの視点を取り入れ」男女共にパンツ・スカート・ネクタイ・リボンを選べるようにしていたり、海外との交流を積極的に行っているなど、かなり革新的な学校です。LGBTの語法に若干の違和感はあるものの、学校が謳う「多様性」がいつも「グローバル化」・「国際交流」に終始してしまうことを考えると十分評価できるものと言って良いでしょう。


さて、ここから少し厳しい見方をしていきたいと思います。

この男子高校生がスカートを履くのは、もちろん彼の意思(意志)による所ですが、それは誰でも真似できることではありません。

当たり前ですが、制服を男女で分けている学校では、仮に男子生徒がスカートを履きたいと思っても、校則によって阻まれます。
ジェンダーレス制服を取り入れている学校だったとしても、大規模校であったり、生徒が性的マイノリティを馬鹿にする風潮であったり、その生徒にスカートが似合わないため批判されるという場合、実質的に制服を選ぶことができません。私服登校の場合も同様です。

ちなみに容姿と異性装についてはこちらの記事でも触れています。

ジェンダーレス制服や男女が自由に選べる制服を導入する場合でも、保護者や地域住人、学園の関係者の理解が取り付けられなければ難しいでしょう。あくまで憶測ですが。
(ところでジャージ登校ですが、例えばMtF志向の生徒の場合、「男らしさ」が演出されにくいことは歓迎できたとしても、「スカートを履きたい」「女子の制服に憧れる」という場合解決策にはなりません)

そして何より、この記事の男子高校生の母親は、息子がスカートを履いて登校するということを許容していることも、彼がスカートを履ける理由と言えます。多くの場合、男子が女装をすることを、家族は快く思わないものです。仮にこの高校で他にもスカートを履きたい男子生徒がいたとしても、家族の理解が得られなければ意味がないように思います。

私はこの『僕がスカートを履く理由』を手放しで喜んではいませんが、しかし彼を否定したいかと言われれば、決してそんなことはありません。

社会や集団の同調圧力を打ち破るためには、ロールモデルの存在が欠かせません。彼はスカートを履いて似合っている男性を見て自身でもスカートを履くようになったようですが、彼の行動もまた、どこか別の男子生徒や学校のロールモデルとなるかもしれません。彼の行動は絶対に他の誰かに勇気を与えているでしょう。

私は男性の女性装の困難な側面を強調し、環境や容姿に恵まれた者にのみ認められる「特権的な女装」という現実を無視したくないため、どうしても影の側面に注目しがちですが、既存の性別観に一矢報いる動きを歓迎しないわけにはいきません。

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